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ではなぜ初段に液体燃料が採用されなかったのでしょうか?
固体燃料ロケットってのは、推力(≒単位時間あたりに出せる力)が大きいので、初速を与えたり、ロケットを一気に地上から、ある程度の高度まで持ち上げるのには向いてます。 ただし、ロケットの速度が、ある程度以上になったら、効率が落ちてくる。
それと、ほぼ逆の特性を持ってるのが、アレス1の2段目に使われてる液酸液水ロケットで、推力が小さくて、低速度の時は効率が悪いけど、すでに、ある程度の速度を持ってるロケットを、さらに加速するのには向いてる訳です。
なので、1段目が個体ロケット(で、2段目が液酸液水ロケット)と言うのは、振動の問題は出てきたけど、そう言う構成にする理由も、それなりに有る訳で。
参考 その1 [air-nifty.com] その2 [air-nifty.com] その3 [air-nifty.com]
ソレまではそもそも、「有人に(ブースターとしてでも)固形ロケットは使うな」と言うのが主流だった筈。
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一つのことを行い、またそれをうまくやるプログラムを書け -- Malcolm Douglas McIlroy
そもそも初段にSRBを流用したのが間違い (スコア:5, 参考になる)
原理的な問題があるため、衝撃波や音波への根本的な対処は不可能です。
今回の場合は耐加重150キロの自転車に100キロの人間が乗ってるようなものなので
このような小手先の対処で何とかなるのですが、普通のロケットは耐加重が例えば105キロしかない自転車に100キロの人間を乗せてるようなものなので
できるのはせいぜいフェアリングの内側に吸音材を貼るくらいですね。
この音波や衝撃波問題はもちろん液体燃料にもありまして、燃焼室を大きく、比推力を稼ぐために高温にしてしまうと、ノズルや配管中の低温な液体燃料の中に泡が発生しては潰れ、その衝撃(キャビテーション)が増幅してポンプを破壊するという深刻な問題があります。いわゆる「ポゴ効果」という奴です。
サターンV1段目のF-1エンジンはこれを克服できましたが、N-1はそれができなかったので30数個のクラスタエンジンにせざるを得ませんでした。
後のRD-180は何とかできたようですが、R-2直系のソユーズロケットは
今でも信頼性を優先してひとつのエンジンに4つの燃焼室を設けて
これを回避するようになっています。
ちなみにわが国の誇るLE-7Aは自動車ブレーキのヴェイパーロック現象を
逆手にとって配管の途中に一種のショックアブソーバを形成し、
回避しています。
その他の振動はフェアリングの空力設計や構造設計シミュレーションでで何とかなりますが、
エンジンの振動はジンバルがあったり出力調整があったりと複雑なので
今のところ液体燃料じゃないと困難です。
Re:そもそも初段にSRBを流用したのが間違い (スコア:1)
重量の増える動吸振器は場当たり的・対処療法だという意見が散見されますが、
厳しい制約のもとでは見ようによってはとてもエンジニアリングな解決策のように思えます。
ちなみに、多数の質点(自由度)を持つ動吸振器は幅広いモードに対処可能で、
その設計はそれほど簡単な話ではないです。
Re:そもそも初段にSRBを流用したのが間違い (スコア:4, 参考になる)
まず訂正。R-2>R-7です。あと、ロシアでヒドラジン系のロケットが発展したのは
広い国土とエンジン設計者のグルシュコの趣味です。
グルシュコはフッ素単体の採用を検討した位なので異常
OKB-1のコロリョフが液体水素大好きなツィオルコフスキーの
信者だったので意趣返し、というのもありますが
低温がからむロケットエンジンは設計が難しいので嫌った、というのもあります。ICBMのエンジンで手一杯なのにそんな無理難題をやってる暇があるか、ということで。
当時はICBMで大量のMIRVをばら撒いて飽和攻撃、というのがソ連の核戦略でしたが、
ICBMはサイロ固定のためバンカーバスターのような新兵器に弱くなってしまい、現在では衛星に探知されにくいSLBMが中心です。
当初はSLBMにもヒドラジンを使ってましたが、その有毒性のため
早々に固体に移行してしまいました。
#なんせガス漏れで原潜沈めちゃったしな
今は核攻撃に対するTEL(移動装置)や潜水艦の残存能力の方が評価されているので
さしものロシアもIRBMやSLBMには固体を使っています。
アンガラがプロトン以上の信頼性を得ない限り、ヒドラジンロケットは
なくならないでしょう。
閑話休題
LR-87やRS-56は製造が中止されており、設計した人も初期に製造した人も
既にこの世にはいません。もちろんノウハウの塊のF-1もです。
ミサイルの即応性のため早々に固体やヒドラジンに移行し、
宇宙機打ち上げもLOX/LH2+固体ブースターに移行して(それもスペースシャトルで一度途切れたわけですが)
アメリカ純国産のケロシンエンジンが発展することはありませんでした。
現在アメリカが使ってるケロシンエンジンはエネルギアのブースターだった
RD-170を半分にしたRD-180を
ロシアから輸入して使っています。
ソ連崩壊のどさくさで当時のロケットダインが設計文書へのアクセスまで許可されているし、
ロケットダインを買収したP&Wは製造もしてますが、やはり外国技術なので
足かせが付く可能性があります。
RS-56だと8-10基のクラスターにする必要がありますが、これは有人打ち上げとしては駄目筋です。かといって新規にケロシンエンジンを開発する理由はありません。時間も金も。
そして何よりもコスト削減が至上命題でして、何らかの形でアレスVとの共通化を
やらないといけない、ということになっています。
このため、単純なサターンの復活ではなく、わざわざ軌道ランデブー方式で
行くことになったのです。しかもアポロ以上の成果を挙げるために
月に持っていくペイロードを増やさねばなりません。
5セグメントSRBはアレスVにも使われますし、シャトルで充分枯れた技術になったので
これを使うのがほぼ自動的に決まったようなものでした。
#今でもアトラス使えよ、という意見が議会から出てますが、前述のように
#エンジンは露助の設計なので横槍が入る可能性があります
そして最大の問題は、巨大固体ロケット製造能力の維持です。(人間も含め)
ATKチオコールに対する救済という面もあります。公共事業ですねぇ
もっともATKチオコールは自動車エアバッグのシェア70%という別の顔もあるので
倒産はしないでしょうが、営利企業である以上は無駄な人員を置く訳にもいかず。
能力を持った国産ケロシンエンジンがないとはいえ、やはり固体で人間を
打ち上げる、というのは、インドのミサイル無理矢理流用PLDSロケット以上に無理筋だよな、とおもいますですよ。
どうしても固体流用は外せない、ということになってますから、この場合の
動吸振器の採用はやり方としては正しいと思います。
#そこでわが国のH2Bにお鉢が回ってくるかもね
Re:そもそも初段にSRBを流用したのが間違い (スコア:3, 参考になる)
固体燃料ロケットってのは、推力(≒単位時間あたりに出せる力)が大きいので、初速を与えたり、ロケットを一気に地上から、ある程度の高度まで持ち上げるのには向いてます。
ただし、ロケットの速度が、ある程度以上になったら、効率が落ちてくる。
それと、ほぼ逆の特性を持ってるのが、アレス1の2段目に使われてる液酸液水ロケットで、推力が小さくて、低速度の時は効率が悪いけど、すでに、ある程度の速度を持ってるロケットを、さらに加速するのには向いてる訳です。
なので、1段目が個体ロケット(で、2段目が液酸液水ロケット)と言うのは、振動の問題は出てきたけど、そう言う構成にする理由も、それなりに有る訳で。
参考
その1 [air-nifty.com]
その2 [air-nifty.com]
その3 [air-nifty.com]
Re: (スコア:0)
固体燃料ロケットはスロットリング(加速度の制御)や異常燃焼に対する対処が難しいらしいけど
Re:そもそも初段にSRBを流用したのが間違い (スコア:2, 興味深い)
ソレまではそもそも、「有人に(ブースターとしてでも)固形ロケットは使うな」と言うのが主流だった筈。