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Newsweekの「よくわからないけど頑張って書いてみました」的な記事もあれだが,このタレコミはあまりにも酷い.
そもそものこの論文(JACS, in press, DOI:10.1021/ja3012897)の研究は,「なぜ地球上の生物は片方の鏡像異性体からなっているのか?」という長年の疑問に何とか答えを見つけようというあまたの研究の一つ.
著者が注目したのは(というか,多くの研究者が注目はしてるのだけど),ちょこちょこ見つかっている「光学活性な単純なアミノ酸を含む隕石がある」という事実.これらの光学活性な分子は,例えば宇宙空間で超新星爆発や中性子星などからの強烈
逆に、地上でそこまでいろいろと複雑な化学反応が起こりうるのに、なぜ、最初の起源だけ宇宙からでないといけないのか、という気がする。光学異性体の片方だけ、というのを説明するために、というけど、それだけのために?
>光学異性体の片方だけ、というのを説明するために、というけど、それだけのために?
まあ,それだけのためにですね.もっと地球全体を対象にした同じようなメカニズム(地球全体が超新星か何かの超強烈な円偏光で照らされた)もあるんですが,宇宙起源だと最低で1個の隕石がほどほどの強さの円偏光に照らされればよいので.もう一つは,既知の隕石からそこそこ複雑な分子だとか,光学活性な分子が見つかってるんで,「これからスタート出来れば話は簡単だよね」というものがあります.
宇宙を漂っている隕石表面では,低温でありながらも光・宇宙線等により結構複雑な分子が出来ていることもわかっているので,生命の起源そのものをこういった隕石等に求める説も根強くあり,そういうのの影響も受けてますね.
まあ他にも,起源を宇宙に求めない説もいろいろあるのですが,そちらは光学活性を出すのがそれなりに難しかったりもします.ただもちろん無理ではありませんし,宇宙起源の話だって無理に無理を重ねているので,どれが正解かはわかりませんが.何せあまりにも証拠(当時の何か)が残っていないので,どれも決定打に欠けるという.
>もっと地球全体を対象にした同じようなメカニズム(地球全体が超新星>か何かの超強烈な円偏光で照らされた)もあるんですが,宇宙起源だと>最低で1個の隕石がほどほどの強さの円偏光に照らされればよいので.
そこから光学異性体比の偏りが増幅?していけばよいのですが、本当にそんなにうまくいくのでしょうか、長い時間かかればラセミ化も起きるし。
そう考えると、あるいは、生命誕生の前段階は意外に短かったのかもしれませんね。
鏡の国の生命 [geocities.jp]D体アミノ酸を資化・同化する微生物の探索に関する研究という文章を見つけました。
この中の非対称は非対称を生む [geocities.jp]に、
不斉自己触媒は、一般的な不斉触媒とは異なり、反応生成物自身が触媒となる。よって一度生成すると、原理的には無限に自己の不斉が増幅される。わずか0.6%eeの5-ピリミジルアルカノール(S)-6cを不斉自己触媒として用い、4回の不斉自己増殖反応で、>99.5%eeの5-ピリミジルアルカノール(S)-6cを得た例もある(Soai and Sato, 2002)。
とありました。これには驚き。ふ~む、光学異性体比の偏りは簡単に増幅することもあるんですね。
生命の誕生なんて、わからないことだらけなのに、そのなかでD体とL体の問題だけを解決できる説なんてちょっとどうかと思うんです。問題を1つ解決して問題の数が1つ減るならまだともかく、問題を1つ解決する代わりに新たな問題を多数増やしてるだけのような気もするし。
これが、もう世の中のことは全て分かって、あとは黒体輻射の問題さえ解決できれば物理学は完成だ!みたいな状況なら、その問題の解決を試みることで新たな展開が生じたりするのかも知れないけど。
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コンピュータは旧約聖書の神に似ている、規則は多く、慈悲は無い -- Joseph Campbell
いろいろ酷い (スコア:5, 参考になる)
Newsweekの「よくわからないけど頑張って書いてみました」的な記事もあれだが,このタレコミはあまりにも酷い.
そもそものこの論文(JACS, in press, DOI:10.1021/ja3012897)の研究は,「なぜ地球上の生物は片方の鏡像異性体からなっているのか?」という長年の疑問に何とか答えを見つけようというあまたの研究の一つ.
著者が注目したのは(というか,多くの研究者が注目はしてるのだけど),ちょこちょこ見つかっている「光学活性な単純なアミノ酸を含む隕石がある」という事実.
これらの光学活性な分子は,例えば宇宙空間で超新星爆発や中性子星などからの強烈
Re: (スコア:0)
逆に、地上でそこまでいろいろと複雑な化学反応が起こりうるのに、
なぜ、最初の起源だけ宇宙からでないといけないのか、という気がする。
光学異性体の片方だけ、というのを説明するために、というけど、
それだけのために?
Re:いろいろ酷い (スコア:1)
>光学異性体の片方だけ、というのを説明するために、というけど、それだけのために?
まあ,それだけのためにですね.
もっと地球全体を対象にした同じようなメカニズム(地球全体が超新星か何かの超強烈な円偏光で照らされた)もあるんですが,宇宙起源だと最低で1個の隕石がほどほどの強さの円偏光に照らされればよいので.
もう一つは,既知の隕石からそこそこ複雑な分子だとか,光学活性な分子が見つかってるんで,「これからスタート出来れば話は簡単だよね」というものがあります.
宇宙を漂っている隕石表面では,低温でありながらも光・宇宙線等により結構複雑な分子が出来ていることもわかっているので,生命の起源そのものをこういった隕石等に求める説も根強くあり,そういうのの影響も受けてますね.
まあ他にも,起源を宇宙に求めない説もいろいろあるのですが,そちらは光学活性を出すのがそれなりに難しかったりもします.ただもちろん無理ではありませんし,宇宙起源の話だって無理に無理を重ねているので,どれが正解かはわかりませんが.
何せあまりにも証拠(当時の何か)が残っていないので,どれも決定打に欠けるという.
ラセミ化との戦い (スコア:1)
>もっと地球全体を対象にした同じようなメカニズム(地球全体が超新星
>か何かの超強烈な円偏光で照らされた)もあるんですが,宇宙起源だと
>最低で1個の隕石がほどほどの強さの円偏光に照らされればよいので.
そこから光学異性体比の偏りが増幅?していけばよいのですが、本当にそんなにうまくいくのでしょうか、長い時間かかればラセミ化も起きるし。
そう考えると、あるいは、生命誕生の前段階は意外に短かったのかもしれませんね。
Re:ラセミ化との戦い (スコア:1)
鏡の国の生命 [geocities.jp]
D体アミノ酸を資化・同化する微生物の探索に関する研究
という文章を見つけました。
この中の非対称は非対称を生む [geocities.jp]に、
とありました。これには驚き。ふ~む、光学異性体比の偏りは簡単に増幅することもあるんですね。
Re: (スコア:0)
生命の誕生なんて、わからないことだらけなのに、そのなかでD体とL体の問題だけを解決できる説なんてちょっとどうかと思うんです。
問題を1つ解決して問題の数が1つ減るならまだともかく、問題を1つ解決する代わりに新たな問題を多数増やしてるだけのような気もするし。
これが、もう世の中のことは全て分かって、あとは黒体輻射の問題さえ解決できれば物理学は完成だ!みたいな状況なら、
その問題の解決を試みることで新たな展開が生じたりするのかも知れないけど。