高校生が新たな化学現象を発見、専門誌に論文掲載 89
ストーリー by hylom
「リケジョ」ってなんだよ 部門より
「リケジョ」ってなんだよ 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、
茨城県立水戸第二高校の数理科学同好会所属の女子部員ら5人が、新たな化学現象を発見、The Journal of Physical Chemistry A誌に論文が掲載されることになった(読売新聞)。
現象を発見したのは2008年2月のことで、BZ反応と呼ばれる化学反応の実験を行ったあとで発見されたという。この現象は反応により溶液の色が変化する、というものだが、学生らは金曜日に反応が終了したとされている赤色状態で試薬を放置、月曜日にそれを見たところ試薬が別の色に変わっていたことを発見。これはいままで知られていなかった現象で、条件が整えば再現できることが分かったという。
SSH (スコア:5, 参考になる)
関連ストーリーに理系を強化したスーパーサイエンスハイスクール [srad.jp]も入れておいたらよいのでは.
これに限らずSSHの高校生って結構学会に出て発表していますね.
受け答えもしっかりしているし,将来こういう学生が日本の科学を引っ張っていってほしいです.
Re:SSH (スコア:1)
この研究は頭がさがる (スコア:5, 興味深い)
BZ反応は、演示実験としてやるのは面白いのですが、物理化学的な測定をするのはかなり困難な系ですね。
というのも、理由はいくつかあって、
1.系の均一性を担保するのが困難
実験をしたことのある人だと納得してくれるとおもいますが、
反応中にスターラーを止めると、みるみるうちに溶液が不均化し、まだら模様から空間秩序(カオス!)を形成します。
鉄フェナントロリン錯体の色が変わる瞬間は、溶液の成分の濃度変化が非常に急で、
濃度が数桁変動します。(参考:Scholarpedia内のOregonator解説記事にあるリミットサイクルの図 [scholarpedia.org])
均一な系を維持するためには高速な攪拌が要求されるので、マグネティックスターラーが必須になりますが、
1日以上安定して回転させることのできる、溶液容量と容器と攪拌子の組み合わせを確定するのはちょっと大変です。
そして、状態の測定には、溶液に分光器なり酸化還元電極なりを入れないといけないのですが、
攪拌子とぶつからないように設置する必要があり、
結局、一回の反応で溶液は数十ml~200ml程度必要になってきます。
2. 廃液処理が面倒
実験が終わると、重金属(Ce)と臭化物イオンと臭素酸イオンと有機臭素化合物と芳香族を含む廃液がでます。
臭素入りの廃液は特別扱いが必要ですし、
有機化合物と無機塩を両方含む溶液は、いったん燃焼させないといけないので、
まとまった量の廃液が出ると、結構処理が面倒です。
ということで、濃度と再点火現象の関係をみるのに何十回も長時間の反応をさせないといけない事を鑑みると、
周囲のサポートも相当大変だったのではと推察されます。
。。。。。。
余談ですが、BZ反応の主要部分の一番簡単なモデルがOregonatorなのですが、
これが非常に硬い常微分方程式系で、
しかも条件によっては、リミットサイクルがストレンジアトラクタ(カオス!)になることが知られています。
計算しようとすると古典的なルンゲ・クッタ法では歯がたたず、
高い安定性を持ち、ステップ毎の振動が発生しにくい手法をとる必要があります。
おそらく、陰的オイラー公式で泣く泣く我慢するか、
陰的ルンゲ・クッタ法という超兵器(一から実装するのは辛い意味で)を持ち出すしかないでしょう。
しかも、今回の現象をシミュレーションで再現するには、
マロン酸の減少や、鉄フェナントロリン錯体の分解まで考慮する必要があり、
FKNモデルを拡張した系によるシミュレーションが必要だろうと推測されます。
はたして、振動が再発火するメカニズムは解明できるでしょうか?
論文化に当たって先生はどれだけ手を貸したのか (スコア:2)
Re:論文化に当たって先生はどれだけ手を貸したのか (スコア:1)
まず、この研究が素晴らしいと私が思うところは、生徒達の「セレンディピティ」です。セレンディピティとは、偶然のチャンスをものにする能力のことです。運がどれだけあっても、セレンディピティがなければそのチャンスをものにすることはできません。「結局運だよね」などというのは、セレンディピティをあまりに軽視しすぎていると思います。
さて、この論文の掲載までにどれだけ生徒が貢献したのか、によってこの事実から読み取れる生徒のセレンディピティには大きな開きが生じます。この論文が掲載されるまでをいくつかにステップに分けるとすると、以下のようになるでしょう。
1. 現象の発見
2. 追試の計画立案
3. 追試計画の実行
4. 結果の考察と場合によっては2に戻る
5. 論文の原稿を執筆
5a1. 日本語で原稿を執筆, 5a2. 原稿を英語に翻訳
5b. 英語で原稿を執筆
6. 投稿
7. レフリーコメントに対応し改訂
8. 受理、または却下され5へ戻る
このうち4までやっていればセレンディピティをかなり高く評価できます。5a1まででやっていれば素晴らしいです。そこから先は些末なことです。もちろんそこまでやっていればなお良いです。#2052319で紹介いただいたPDFからすると、かなり貢献しているようですから、いやはや大したもんだということになります。
ただ、もし5以降を全くやっていないとなると、論文の著者順はこれでいいのか、という疑問が出てきます。もちろん、著者順は最終的にはcorresponding authorが決めるものだと思いますから、corresponding authorがこれで正しいと言えばそれまでですが、過去に順序や名前を入れるか入れないかで正当な評価を得られなかった研究者(αβγ論文のαとか)は沢山いますので、話題作りで著者や順番決めているとしたら良くないなーということになります。ただしこれは何の根拠もないただの妄想です。
Re:論文化に当たって先生はどれだけ手を貸したのか (スコア:1)
うーん、5以降はあくまで科学論文のルールにのっとるかどうかで、事実の確認という意味では4くらいまでじゃない?
# 第3者がチェックすることが大切という意味で論文投稿とかレフェリーでの審議が大切なのは分るけど。
セレンディピティじゃなくて論文投稿者としての評価をしたいようにしか見えないんだけど
# どっちでもニュースバリューになっちゃうだろうことは予想できるかな
M-FalconSky (暑いか寒い)
Re:論文化に当たって先生はどれだけ手を貸したのか (スコア:1)
Re:論文化に当たって先生はどれだけ手を貸したのか (スコア:1)
ページ数単位とワード単位のところがあるよ。
二段組み五枚なら、4~8万くらいだろうか。
科学技術論文専門の英文校正会社があるので、
少し高いかもしれないけれど、こちらの方がおすすめ。
想像以上に直されるよ。
(俺の英語力が無いからってのもあるけど)
Re:論文化に当たって先生はどれだけ手を貸したのか (スコア:1)
なんだかんだ言っても、世の中、運だよね。
Re:論文化に当たって先生はどれだけ手を貸したのか (スコア:1)
来年の夏休み映画 (スコア:2)
金・・・ (スコア:2)
儲かったりはしないんですかね
Re:金・・・ (スコア:1)
儲かったりはしないんですかね
日本の衰退の理由を垣間見た気がした
Re:金・・・ (スコア:2)
なによ
Re:金・・・ (スコア:1)
この技術を利用して女子高生が金儲けできないかって話ですか?
テレビに出たり本を書いたり映画化されたりすればギャラが出るんじゃないですか?
……というのはさておき。
真面目な方向で答えるなら、何らかの産業的利用価値を示すところまでやらない限り、すぐ金儲けに繋がったりはしませんね。
明細書書いて仮に特許化できたとしても、誰も利用しないか、ギリギリ触れない程度に回避されちゃうし。
この反応が必須な工業製品、あるいはこの反応を利用することで生産効率や精度や純度が向上する工業技術、を誰かが思いついてくれないと。
>条件が整えば再現できることが分かったという (スコア:1)
金曜日に実験
↓
月曜日に現象を確認
つまり、必要な条件かつ重要なのは、
「土曜日の実験室っ!」
Re:>条件が整えば再現できることが分かったという (スコア:1)
ラベンダーの香りかもしれない
時をかける学園 ねらわれた少女 (スコア:1)
水戸は大徳印の納豆の香り
らじゃったのだ
Re: (スコア:0)
世代がバレますな。
Re:>条件が整えば再現できることが分かったという (スコア:2)
リメイク版がありますので大丈夫です。
Re: (スコア:0)
> 「土曜日の実験室っ!」
んなもの、どこの大学にもあるだろうが。
重要なのは女子高生、甘酸っぱい香りの女子高生。これだね。
だけどくんかくんかするとおまわりさんにマークされる諸刃の剣、素人には(r
まあお前らド素人は、三十路を過ぎたオーバードクターの女性研究員で我慢しなさいってことさ。
相当マニアックな悪寒 (スコア:1)
リンク先の J. Phys. Chem. A にのってるメールアドレスで検索かけてみたら、
(あんまりお行儀の良い行為じゃないな…)こんなのが引っかかった。
http://academy.fureai.or.jp/showcase/07/pdf/P-98_showcase2008.pdf [fureai.or.jp]
さすがに高校に SEM の設備があるとは思えないし、筑波の何かにも元々結構
お世話になってるんでしょうかね。それにしても SEM とかフラクタル次元とか
ボロノイ図とかマニアックにもほどがあるな。
# ある意味出るべくして出たくらいなのかも。
Re:相当マニアックな悪寒 (スコア:1)
SSCやってるから、周辺の大学なりの協力はもらいやすいと思う。
まあ、熱心にやってるところじゃないとそもそもSSCに入らないから、出るべくして出たってのはその通りだけど。
あとSEMは、卓上SEMで安いやつだと3-400万円ぐらいでもあるんで、個人でも買えないことはなかったりする。中古だと100万ぐらいで出てたりもします。ヤフオクとかにもかなり古いのが出てみたり。
某先生のように、退職した後に私費で買って、自家用車の後ろに積んで小中高校回って理科教育のボランティアやってる方とかも。
過去に何度もスルーされてそうだな (スコア:1)
発見された状況を何となく想像してみましたけど、
「あれ、色戻ってね?」と誰かが気付いても
「まあそういう事もあんだろ。それよか実験器具ほったらかしてたの先生にバレたら面倒だからさっさと片付けちまおうぜ」みたいなケースが過去無数に存在してたんじゃないかと想像しちゃいました(笑)。
Re:過去に何度もスルーされてそうだな (スコア:1)
まぁ沢山あったんだろうとは思うのですが、そこで
「なんで色が変わっているんだろう?」
という純粋な疑問をもつ人も沢山いたと思うのです、でもそれを検証するという行為に至ったことがあらゆる発見の第一歩につながるのではないかとも感じました。
好奇心や疑問ってのはとても大事だなぁと。
Re:過去に何度もスルーされてそうだな (スコア:1)
科学の進歩なんかよりも卒業のほうがよっぽど大切ですからね
#もう研究したくないAC
問題の立ち位置 (スコア:1)
面白かったのは、「現象自体についてはよく書かれているのに、今回発見された事実については詳しく書かれたことはなかった」ってところでした。私なら「書かれてないのはあたりまえすぎてじゃないだろうか?」と悩むところです。現実にはそっちの可能性も高いんですけどね。
「茨城の女子高生が快挙!」 - 化学者のつぶやき
http://www.chem-station.com/blog/2011/11/post-314.html [chem-station.com]
>BZ反応は見た目の面白さから化学実験の題材として人気があります。
>この化学振動が「どのようにして起こるのか」はよく文献に書かれていますが、
>「どのようにして止まるのか」は詳しい記述が無く、この問題について探求した実験です。
Re:問題の立ち位置 (スコア:3)
>[1] Portman, N.; Hurley, I.; Woodward, J. J. Chem. Edu. 1998, 75, 1270. doi:10.1021/ed075p1270 (*名前が間違っております)
こちらもビックリです
ジャボチンスキーさん (スコア:1)
このニュースを読んだときに、「そういえば、ジャボチンスキーってジャボチンスキー反応以外の変なところで目にした覚えがあるなあ」と思っていたら、さっきわかりました。愛國戰隊大日本のジャボチンスキー将軍でした。目にしたんじゃなくて耳にしたんだったか。(明らかにオフトピ)
Re:ジャボチンスキーさん (スコア:1)
『音盤ビックリハウス』 [hatena.ne.jp]にも名前が登場するオリンピックソ連代表重量挙げ選手 [yahoo.co.jp]のファミリーネームが真っ先に思いつくなあ。
後に・・・ (スコア:0)
BZ-Karaoke反応と呼ばれることとなる。
実は (スコア:0)
正しくは (スコア:3)
先例を踏襲していたのでは新しい発見、発明は生まれないわけです。
Re:正しくは (スコア:1)
ピュア島の仲間たち?
らじゃったのだ
Re:実は (スコア:2)
赤←→青 交互に変わる実験だったみたい?なので、反応が終わった後もしばらく放置したらどうなるかって思っても不思議じゃない気も。
Re:実は (スコア:1)
ただのずぼらなら色が変わってることに気づかないし、再現性を調べないし、条件も見つけられないでしょう。
Re:実は (スコア:1)
ずぼらでないと産まれないもの(発酵食品とか)も多いわけですから、これでバランスが良いのですよ。たぶん。
Re:実は (スコア:1)
冗談はさておき、実際どんなもんなんでしょうね。
本当に思いも寄らない反応だった、というレベルから、 「新発見」の化学式を専門家に見せたら「ああ、そりゃそう反応するよ」ぐらいの話だけど、 見た目がカッコイイありふれた定番の実験に続きがあった点に関しては、その発想は無かった、みたいなレベルまで色々想像できますが。
Re: (スコア:0)
・片付け面倒なので放っておいたら何か起きた
・再利用しようと実験動物生かしてたら何か起きた
・うっかりどうでも良いはずのことしたら何か起きた
Re:実は (スコア:3)
>.*たら何か起きた
歴史的発見では稀に良くあることですね。
Re:実は (スコア:1)
たしかカルピスは一晩放置していたら美味かったとか、
バブルジェットプリンタも、ハンダごてをうっかり注射針に当てたら液が飛び出たとか
TomOne
Re:実は (スコア:1)
二強レベルのメジャーな人工甘味料2つが「なんかできたので舐めてみたら甘かった」とかもあるな。
「濃度を間違って作ったがせっかくだから使ってみた」ってのは導電樹脂だし。
このあとは「なぜ振動が再開するのか」あたりがテーマか。
#「見てわからないほど微妙な振動が続いてる」あたりのような気がするが。
Re: (スコア:0)
「メンバーは器具を片付けないままカラオケへ。」って書いてあるよ。
Re: (スコア:0)
ペニシリンだってズボラじゃなかったら発見されなかったのでは?
Re:実は (スコア:3, すばらしい洞察)
だけど、ずぼらなだけだったら発見されなかった
ふわふわの泉? (スコア:0)
(T/O) [amazon.co.jp]
Re:条件とは? (スコア:2)
女子高生が実験することだったら化学界に革命が起こるのだが
Re:条件とは? (スコア:1)
女子「校」生でいいなら、そういうサービスは結構あると思いますけど。
Re:条件とは? (スコア:2)
基本的に2種類の化学種から出発して反応させるんだけど,その濃度.
abstractにも図が出ているけれども,この2種の濃度がある狭い範囲(abstの左の図,黒い丸で示されている領域)に入っている場合のみ振動が再度起きる(abstの右の図の真ん中).
#残りの青と赤の領域は,既知の2種類の反応様式(同じく右の図の上と下).
Re:教員にもフォーカスを (スコア:1)
http://ac.iit.tsukuba.ac.jp/pdf/ACreportH23/H23ACkagaku.pdf [tsukuba.ac.jp]