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>この隕石は45億年前に形成され、宇宙空間の高エネルギーの衝撃という、地球の深部と似たような高温、高圧環境に耐えてきたものと見られる。
衝突で出来たものです.
このペロブスカイト構造を持つMgSiO3,理論的な研究も多いですし,高温・高圧下の実験でも作られていました.しかし,鉱物として名前を付けるには天然の物質中から見つからないといけない.#物質名は付けられるが,鉱物名にはならない.
こうなると,「天然物として存在するこのペロブスカイト構造のMgSiO3」を指す語が無くてなかなか面倒くさい.検索とかちょっと面倒になりますし.というわけで(いや,他にも理由はありますが)天然環境中からペロブスカイト構造のMgSiO3を見つけようという試みはさんざんされているのですが,これがなかなか難しい.というのもこのペロブスカイト型MgSiO3,ちょっとの熱などですぐ分解してガラス化してしまうからです(論文では310 K=40 ℃弱ぐらいより上でガラス化するようなことが書いてあります).一応室温以下ぐらいでは準安定なので,どこかに存在している可能性はある.しかし,こいつが安定に存在できる高温・高圧条件からゆっくり温度が下がると,途中で「この鉱物が不安定で,しかも分解するのに十分な熱エネルギーを持つ」という領域を通ってしまい分解してしまいます.
というわけで,こいつを見つける可能性があるとしたら,「高温高圧になっていて,そこからものすごく早く急冷された岩石」を探す必要がある.その有力候補が,衝突による高温・高圧を経験した隕石です.宇宙空間などでの衝突ではその衝撃により高温・高圧の領域が生じその後一気に冷やされるわけで,大規模な噴火などによる生成物(小規模な噴火では,MgSiO3が安定に存在できる深い部分の岩石が上がってこない)よりも冷却が非常に速く,MgSiO3のペロブスカイト構造が凍結されて残っている可能性が高くなります.
ここまではまあ世界中の人に予想されていたわけで,そういった岩石の中からペロブスカイト構造のMgSiO3を探そうという研究は非常にたくさん行われていました.MgSiO3ペロブスカイトに限らず,非常に多くの鉱物がこの手の衝撃溶融隕石から見つかっています.今回使用されているTenham隕石もそういった衝撃溶融を経験した隕石と言うことで隕石マニアやら鉱物の研究者には有名で,これまでにもいくつもの特殊な相が見つかっています.#例えばAkimotoite,(Fe,Mg)SiO3という組成を持つ鉱物(ペロブスカイト構造だった不安定相が転移したもの),というものが見つかったりしています.
で,今回の人たちが見事当たりを引き当てたよ,と.おかげで名前が付けられて,今後の研究では固有名詞が使えて良かったね,となります.成功の一つの鍵は構造の分析に電顕を使っていないことだそうで.電顕で構造を見ようとすると狭い領域に電子線のエネルギーが集中しちゃうんで,弱い構造は壊れてしまうんですよね.そんなわけで,今回はX線(吸収が少ないので,相対的にダメージは少ない)での研究です.でもまあ,これまでにも同じ隕石(の別の欠片)をX線で調べていた人は幾人も居るわけで,運が良かった(or 粘り強く続けた)という感じでしょうか.
というわけで,こいつを見つける可能性があるとしたら, 「高温高圧になっていて,そこからものすごく早く急冷された岩石」 を探す必要がある.
ということは、月のクレータを掘れば幾らでも見つかるのかも
月にあるとしても、極を探さないと。なにせ昼が地球時間で14日も続く環境だし。
一応自転はしてる(自転と公転周期が同じ)んだから、極ぐらいあるでしょ。温度じゃわからないけど、外から観測すれば。
月極なら地球にたくさんありますよ!
というのはさておき。
「極を探さないと」ってのは、「月の極がどこだか分からないよ」って意味じゃなくて、「(この鉱物を見つけようと思ったら”どこのクレーターでもいい”のではなく、)極を(掘ってこの鉱物を)探さないと」という意味だよ……。
ウルトニウム、みたいなもん?アイスラッガーで首ちょんぱされたら、これが中から出てくる出てくる(マテ
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あと、僕は馬鹿なことをするのは嫌いですよ (わざとやるとき以外は)。-- Larry Wall
一つ前の太陽系にあった惑星のマントル? (スコア:0)
>この隕石は45億年前に形成され、宇宙空間の高エネルギーの衝撃という、地球の深部と似たような高温、高圧環境に耐えてきたものと見られる。
Re:一つ前の太陽系にあった惑星のマントル? (スコア:5, 参考になる)
衝突で出来たものです.
このペロブスカイト構造を持つMgSiO3,理論的な研究も多いですし,高温・高圧下の実験でも作られていました.しかし,鉱物として名前を付けるには天然の物質中から見つからないといけない.
#物質名は付けられるが,鉱物名にはならない.
こうなると,「天然物として存在するこのペロブスカイト構造のMgSiO3」を指す語が無くてなかなか面倒くさい.検索とかちょっと面倒になりますし.
というわけで(いや,他にも理由はありますが)天然環境中からペロブスカイト構造のMgSiO3を見つけようという試みはさんざんされているのですが,これがなかなか難しい.というのもこのペロブスカイト型MgSiO3,ちょっとの熱などですぐ分解してガラス化してしまうからです(論文では310 K=40 ℃弱ぐらいより上でガラス化するようなことが書いてあります).
一応室温以下ぐらいでは準安定なので,どこかに存在している可能性はある.しかし,こいつが安定に存在できる高温・高圧条件からゆっくり温度が下がると,途中で「この鉱物が不安定で,しかも分解するのに十分な熱エネルギーを持つ」という領域を通ってしまい分解してしまいます.
というわけで,こいつを見つける可能性があるとしたら,
「高温高圧になっていて,そこからものすごく早く急冷された岩石」
を探す必要がある.その有力候補が,衝突による高温・高圧を経験した隕石です.宇宙空間などでの衝突ではその衝撃により高温・高圧の領域が生じその後一気に冷やされるわけで,大規模な噴火などによる生成物(小規模な噴火では,MgSiO3が安定に存在できる深い部分の岩石が上がってこない)よりも冷却が非常に速く,MgSiO3のペロブスカイト構造が凍結されて残っている可能性が高くなります.
ここまではまあ世界中の人に予想されていたわけで,そういった岩石の中からペロブスカイト構造のMgSiO3を探そうという研究は非常にたくさん行われていました.
MgSiO3ペロブスカイトに限らず,非常に多くの鉱物がこの手の衝撃溶融隕石から見つかっています.今回使用されているTenham隕石もそういった衝撃溶融を経験した隕石と言うことで隕石マニアやら鉱物の研究者には有名で,これまでにもいくつもの特殊な相が見つかっています.
#例えばAkimotoite,(Fe,Mg)SiO3という組成を持つ鉱物(ペロブスカイト構造だった不安定相が転移したもの),というものが見つかったりしています.
で,今回の人たちが見事当たりを引き当てたよ,と.おかげで名前が付けられて,今後の研究では固有名詞が使えて良かったね,となります.
成功の一つの鍵は構造の分析に電顕を使っていないことだそうで.電顕で構造を見ようとすると狭い領域に電子線のエネルギーが集中しちゃうんで,弱い構造は壊れてしまうんですよね.そんなわけで,今回はX線(吸収が少ないので,相対的にダメージは少ない)での研究です.
でもまあ,これまでにも同じ隕石(の別の欠片)をX線で調べていた人は幾人も居るわけで,運が良かった(or 粘り強く続けた)という感じでしょうか.
Re:一つ前の太陽系にあった惑星のマントル? (スコア:2)
Re: (スコア:0)
というわけで,こいつを見つける可能性があるとしたら, 「高温高圧になっていて,そこからものすごく早く急冷された岩石」 を探す必要がある.
ということは、月のクレータを掘れば幾らでも見つかるのかも
Re: (スコア:0)
月にあるとしても、極を探さないと。なにせ昼が地球時間で14日も続く環境だし。
Re: (スコア:0)
一応自転はしてる(自転と公転周期が同じ)んだから、極ぐらいあるでしょ。
温度じゃわからないけど、外から観測すれば。
Re:一つ前の太陽系にあった惑星のマントル? (スコア:2)
月極なら地球にたくさんありますよ!
というのはさておき。
「極を探さないと」ってのは、
「月の極がどこだか分からないよ」って意味じゃなくて、
「(この鉱物を見つけようと思ったら”どこのクレーターでもいい”のではなく、)極を(掘ってこの鉱物を)探さないと」という意味だよ……。
Re: (スコア:0)
ウルトニウム、みたいなもん?
アイスラッガーで首ちょんぱされたら、これが中から出てくる出てくる(マテ