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昨夜NHKを見ていたらハッブル宇宙望遠鏡の番組をやっていた。なんでも131億光年離れた銀河が見つかったらしい。これを見ていて、ふと思った。131億光年先にあった銀河は、131億年後のいま、さらに131億光年先に遠ざかっている。だからいまは262億光年先にある。宇宙の等方性が正しいとしたら、反対側にも262億光年宇宙が広がっている。だから現在の宇宙は少なくても524億光年の直径を持つ。
これだけ広いんだったら、どっかに宇宙人がいるはず!
#なんか違う気がする。教えてエロい人。
このあたり,いろいろ混乱されている人もいますので結構やっかいなのですが,その原因として距離の定義がいくつかあることが挙げられます.なんでそんなことになっているのかというと,対象物までがあまりに遠方であるため測定法に依存した値になってしまうことと,宇宙論的距離では宇宙の膨張の効果(これは膨張の時間変化がどうだったのかという影響も含む)等が効いてくるため,どのようなモデルを考えるかでいろいろ変わってくることに由来します.
例えば距離の測定で行くと,近場:年周視差などで直接測定.数百光年ぐらいまで.ご近所:主系列星の絶対光度やセファイドの絶
>ですから,話題にされている「131億光年離れた銀河」は,その光が出たときには「131億光年よりも近い位置のあった銀河」で,現在は「131億光年よりももっと遠い位置にいる銀河」です.また,膨張速度は光速ではなく,どの程度離れたかはハッブル定数(とその時間変化)に依存します.
現在の観測では、131億光年先の銀河は、ほぼ光速に近い速度で遠ざかっているとなっているので、131億年前にすでに、光速に近い膨張速度になっていたのでは? むしろ、現在の膨張率のほうが、観測できないのでは?
なんかねー、最近は、定常宇宙論のほうが現実的な感じがしてきた。赤方偏移は、光子が長い距離を移動する間にエネルギーを失った結果、だとかね。
>131億年前にすでに、光速に近い膨張速度になっていたのでは?
空間の膨張による相対速度は,距離が増えれば増えるほど大きくなります.例えば毎秒距離が二倍になる膨張をしているとしましょう.自分の位置から1mの所に存在する物体は秒速1m(実際には1秒の間に1mの位置から遠ざかる効果もあるからもうちょっと大きいけど)で遠ざかりますが,自分の位置から1kmの位置にある物体は秒速1kmで遠ざかります.つまり,空間膨張によって離れれば離れるほど,相対速度は加速していきます.ですので,131億年過去に戻ってもっと近かったときは,(宇宙の膨張速度が今と「それほど」変わらないならば……これは131億年過去程度の所までは,ほぼ成り立っていると観測より示唆されています)もっと相対速度は遅いと言うことになります.ただし,ずっと過去に戻ってインフレーションの頃とかになってくるとまた色々違う部分も出るかも知れません.
>むしろ、現在の膨張率のほうが、観測できないのでは?
現在の,その銀河のいる場所の膨張速度,という意味ならYesです.ただ,宇宙の等方性を正しいと考えるなら,我々の近傍の観測における宇宙の膨張速度とまあ同じようなもんだろ,と考えて値を出すことは可能です.
>定常宇宙論のほうが現実的な感じがしてきた。
ただし,その場合は宇宙を定常状態に保つために未知の力(と未知物理機構)がいくつか必要になります.なにぶん定常状態というのは(少なくとも現在我々の知っている重力等からは)不安定であるため,維持するためには何らかの機構で補正を効かせ続ける必要があります.また,非定常的な歴史を示唆する観測結果を,定常な宇宙から発生させるための何らかの機構も必要です.必ずしも物理的に頭から否定されるものではありませんが,その新理論と無矛盾に摺り合わせる必要のある実験事実の量を考えるとなかなか大変そうです.例えば簡単なところでも,オルバースのパラドックスを何とか解決しないといけません.
>赤方偏移は、光子が長い距離を移動する間にエネルギーを失った結果、だとかね。
ハッブルの発見の当初から,そういった議論(Tired Light Theory)は出てきています.ただ,エネルギーを失わせる妥当な物理過程が見つからないという問題があり,当初から多分駄目だろう,と見られていました.ある意味とどめを刺したのは,遠方での超新星爆発における光の持続時間の観測です.超新星に関してはかなり色々なことが分かっており,その爆発の光の持続時間がどの程度のものなのか,ということも近場での多数の爆発の観測結果からよく分かっています.ところが,遠方の超新星を観測すると,その光(面倒なので,強度は矩形のパルスとしましょうか)の持続時間が距離に応じて増えていたのです.これは膨張宇宙論ではたやすく説明でき,(今の例で言えば)ある長さの矩形波が空間を渡ってくる間に空間の長さが倍になるような速度で膨張が起っていれば,当然矩形波の長さが倍になります.これに対し,単に光子がエネルギーを失うだけだと,矩形のパルス長は変化せず,その波長だけが変化することになるため観測事実に適合できません.また,単に光子がエネルギーを失うだけだと,光子の密度は変化せずそのエネルギーのみが変化するので,観測されている背景放射のフラックスに合致しません.
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日々是ハック也 -- あるハードコアバイナリアン
どっかにいるんじゃない? (スコア:0)
昨夜NHKを見ていたらハッブル宇宙望遠鏡の番組をやっていた。なんでも131億光年離れた銀河が見つかったらしい。これを見ていて、ふと思った。131億光年先にあった銀河は、131億年後のいま、さらに131億光年先に遠ざかっている。だからいまは262億光年先にある。宇宙の等方性が正しいとしたら、反対側にも262億光年宇宙が広がっている。だから現在の宇宙は少なくても524億光年の直径を持つ。
これだけ広いんだったら、どっかに宇宙人がいるはず!
#なんか違う気がする。教えてエロい人。
遠方銀河の距離に関して (スコア:4, 参考になる)
このあたり,いろいろ混乱されている人もいますので結構やっかいなのですが,その原因として距離の定義がいくつかあることが挙げられます.
なんでそんなことになっているのかというと,対象物までがあまりに遠方であるため測定法に依存した値になってしまうことと,宇宙論的距離では宇宙の膨張の効果(これは膨張の時間変化がどうだったのかという影響も含む)等が効いてくるため,どのようなモデルを考えるかでいろいろ変わってくることに由来します.
例えば距離の測定で行くと,
近場:年周視差などで直接測定.数百光年ぐらいまで.
ご近所:主系列星の絶対光度やセファイドの絶
Re: (スコア:0)
>ですから,話題にされている「131億光年離れた銀河」は,その光が出たときには「131億光年よりも近い位置のあった銀河」で,現在は「131億光年よりももっと遠い位置にいる銀河」です.また,膨張速度は光速ではなく,どの程度離れたかはハッブル定数(とその時間変化)に依存します.
現在の観測では、131億光年先の銀河は、ほぼ光速に近い速度で遠ざかっているとなっているので、131億年前にすでに、光速に近い膨張速度になっていたのでは? むしろ、現在の膨張率のほうが、観測できないのでは?
なんかねー、最近は、定常宇宙論のほうが現実的な感じがしてきた。赤方偏移は、光子が長い距離を移動する間にエネルギーを失った結果、だとかね。
Re:遠方銀河の距離に関して (スコア:3, 参考になる)
>131億年前にすでに、光速に近い膨張速度になっていたのでは?
空間の膨張による相対速度は,距離が増えれば増えるほど大きくなります.
例えば毎秒距離が二倍になる膨張をしているとしましょう.
自分の位置から1mの所に存在する物体は秒速1m(実際には1秒の間に1mの位置から遠ざかる効果もあるからもうちょっと大きいけど)で遠ざかりますが,自分の位置から1kmの位置にある物体は秒速1kmで遠ざかります.つまり,空間膨張によって離れれば離れるほど,相対速度は加速していきます.ですので,131億年過去に戻ってもっと近かったときは,(宇宙の膨張速度が今と「それほど」変わらないならば……これは131億年過去程度の所までは,ほぼ成り立っていると観測より示唆されています)もっと相対速度は遅いと言うことになります.
ただし,ずっと過去に戻ってインフレーションの頃とかになってくるとまた色々違う部分も出るかも知れません.
>むしろ、現在の膨張率のほうが、観測できないのでは?
現在の,その銀河のいる場所の膨張速度,という意味ならYesです.
ただ,宇宙の等方性を正しいと考えるなら,我々の近傍の観測における宇宙の膨張速度とまあ同じようなもんだろ,と考えて値を出すことは可能です.
>定常宇宙論のほうが現実的な感じがしてきた。
ただし,その場合は宇宙を定常状態に保つために未知の力(と未知物理機構)がいくつか必要になります.なにぶん定常状態というのは(少なくとも現在我々の知っている重力等からは)不安定であるため,維持するためには何らかの機構で補正を効かせ続ける必要があります.
また,非定常的な歴史を示唆する観測結果を,定常な宇宙から発生させるための何らかの機構も必要です.必ずしも物理的に頭から否定されるものではありませんが,その新理論と無矛盾に摺り合わせる必要のある実験事実の量を考えるとなかなか大変そうです.
例えば簡単なところでも,オルバースのパラドックスを何とか解決しないといけません.
>赤方偏移は、光子が長い距離を移動する間にエネルギーを失った結果、だとかね。
ハッブルの発見の当初から,そういった議論(Tired Light Theory)は出てきています.
ただ,エネルギーを失わせる妥当な物理過程が見つからないという問題があり,当初から多分駄目だろう,と見られていました.
ある意味とどめを刺したのは,遠方での超新星爆発における光の持続時間の観測です.
超新星に関してはかなり色々なことが分かっており,その爆発の光の持続時間がどの程度のものなのか,ということも近場での多数の爆発の観測結果からよく分かっています.ところが,遠方の超新星を観測すると,その光(面倒なので,強度は矩形のパルスとしましょうか)の持続時間が距離に応じて増えていたのです.
これは膨張宇宙論ではたやすく説明でき,(今の例で言えば)ある長さの矩形波が空間を渡ってくる間に空間の長さが倍になるような速度で膨張が起っていれば,当然矩形波の長さが倍になります.これに対し,単に光子がエネルギーを失うだけだと,矩形のパルス長は変化せず,その波長だけが変化することになるため観測事実に適合できません.
また,単に光子がエネルギーを失うだけだと,光子の密度は変化せずそのエネルギーのみが変化するので,観測されている背景放射のフラックスに合致しません.