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プレートの沈み込んだ先が折れてマントルの底へ沈んだ絵とかも見たことがあるんですが、 そこからの連想で、プリュームになって浮いてくる前の、外核に加熱され中のプレート物質なのかと思ったのですが。
リンク先によれば、どっちかというと外核から浮いてきたスラグと予想されてるわけですか。地震波の速度解析だけで構成物質が分かるもんなんですねえ。
単純には、まず
・P波の速度は密度・弾性率・剛性率に依存・S波の速度は密度と剛性率に依存
という関係がある。で、圧力に関してはこれとは別に「上に乗っているものの重さで決まってんだろ」というもっともらしい算出法がある。でもってさらに別な情報として、ある圧力、ある組成、ある温度の時、物質がどんな相をとるか、という実験結果とその超高圧・高温側への外挿予測がある。相がわかると、第一原理計算のようなものである程度は弾性率などが推定できる。となると今度は温度と組成が知りたくなるが、マントル部分に関しては深層から上がってきた岩石の組成や構造から推定。外核と内核の境目のところは鉄(の化合物)が液体(低圧・低温の外核)から固体(高圧・高温の内核)になると言うことで実験値の外挿から推定(ただし組成に不確定点が多いためより誤差が大きい)。内核・外核内での温度勾配は、固体・流体での熱移動だのを考慮して推定。あとは組成がわかればおおよそ決まるが、これは非常に難しい。重いものが沈み軽いものが浮くと言うことと、地殻の組成の実測値、それが沈み込んだ後どう動くかのシミュレーションだとか、高圧下でどのように相変化するか(それによって密度がかわり、浮くか沈むかが変わったりする)の実験結果などを総合して、「まあこんな組成なんじゃないの?」と仮定する。そこから演繹される結果が膨大な実測データと合わなければ間違い、あってるようなら暫定的に採用。
そんなわけで、新たな相がある位置に発見されると、・そこでの地震波の速度が実測からおおよそわかる。・温度は各種モデルから(誤差は大きいものの)推定できる。・圧力もまあ推定できる。・元素の組成は、いくらかは推測される。・存在してそうな元素の組み合わせで、その場の圧力・温度条件下で周囲のものと同じ程度の密度(違えば浮くか沈むかする)になる相を探す(そう言う実験結果を探す)。・その相から推定される地震波速度が実測と合えば暫定的にその相がいると判断できる。というように、様々な理論・実験・実測・仮定を積み上げて当てはまっていそうなものを探します。そのため、基盤としている昔の人の結果が実は間違っていた!とか言うことが明らかになると、広範囲にわたってモデルの再構築が要求されます(時々ある)。
なんか詳しい人っぽいので質問。地震波で地球の内部を探る [spring8.or.jp]このページのD”層というのは深度といい厚みといい、『発見』された層にとても近いように見えます。別物なんでしょうか?ちなみに2008年の成果ページにあります。
同じものです。この部分に地震波の速度が遅い領域があることはだいぶ昔から知られていました。その起源に関しては諸説様々にあったわけですが、2004年頃だかそのぐらいに発表された論文で、高圧実験の結果から外核の物質(と信じられているもの)がペロブスカイト相からポストペロブスカイト相と呼ばれる新発見の相に転移しているのではないか、という説が提唱されていました。今回の論文は、最近の地震の解析などを用いることでより詳細なデータを得てそれを解析した結果、ポストペロブスカイト相への転移だけでは地震波の速度変化を説明しきれず、実はこの領域では単に相転移が起こるだけではなく、化学組成も少々違ったものになっているのではないか?というものが新たな発見(仮説)となっています。
そういう意味では、新たな層の発見というか、見つかっていた層に対する新たな事実の判明というか。(まあ、組成の違う層がある、という意味では新たな層の発見でもあるのですが)
上下方向で十分な攪拌が起こっていれば、このような「軽い元素が上の方にちょっと多めに集まっている」という状況にはならないと考えられますので、このあたりではこれまで考えられていたよりも対流が弱いのではないか?とか、いくつかの点で既存のモデルの見直し(再確認)が必要になるかもしれません。
お答えいただき、ありがとうございます。層があることはわかっていたけれど、観測データが予想と違っている。それで、層のできかたが今までのモデルでは説明できないわけですね。
ありがとうございました。
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アレゲは一日にしてならず -- アレゲ見習い
沈んだプレート物質? (スコア:2)
プレートの沈み込んだ先が折れてマントルの底へ沈んだ絵とかも見たことがあるんですが、 そこからの連想で、プリュームになって浮いてくる前の、外核に加熱され中のプレート物質なのかと思ったのですが。
リンク先によれば、どっちかというと外核から浮いてきたスラグと予想されてるわけですか。地震波の速度解析だけで構成物質が分かるもんなんですねえ。
Re:沈んだプレート物質? (スコア:2, 参考になる)
単純には、まず
・P波の速度は密度・弾性率・剛性率に依存
・S波の速度は密度と剛性率に依存
という関係がある。
で、圧力に関してはこれとは別に「上に乗っているものの重さで決まってんだろ」というもっともらしい算出法がある。
でもってさらに別な情報として、ある圧力、ある組成、ある温度の時、物質がどんな相をとるか、という実験結果とその超高圧・高温側への外挿予測がある。相がわかると、第一原理計算のようなものである程度は弾性率などが推定できる。
となると今度は温度と組成が知りたくなるが、マントル部分に関しては深層から上がってきた岩石の組成や構造から推定。外核と内核の境目のところは鉄(の化合物)が液体(低圧・低温の外核)から固体(高圧・高温の内核)になると言うことで実験値の外挿から推定(ただし組成に不確定点が多いためより誤差が大きい)。内核・外核内での温度勾配は、固体・流体での熱移動だのを考慮して推定。
あとは組成がわかればおおよそ決まるが、これは非常に難しい。重いものが沈み軽いものが浮くと言うことと、地殻の組成の実測値、それが沈み込んだ後どう動くかのシミュレーションだとか、高圧下でどのように相変化するか(それによって密度がかわり、浮くか沈むかが変わったりする)の実験結果などを総合して、「まあこんな組成なんじゃないの?」と仮定する。そこから演繹される結果が膨大な実測データと合わなければ間違い、あってるようなら暫定的に採用。
そんなわけで、新たな相がある位置に発見されると、
・そこでの地震波の速度が実測からおおよそわかる。
・温度は各種モデルから(誤差は大きいものの)推定できる。
・圧力もまあ推定できる。
・元素の組成は、いくらかは推測される。
・存在してそうな元素の組み合わせで、その場の圧力・温度条件下で周囲のものと同じ程度の密度(違えば浮くか沈むかする)になる相を探す(そう言う実験結果を探す)。
・その相から推定される地震波速度が実測と合えば暫定的にその相がいると判断できる。
というように、様々な理論・実験・実測・仮定を積み上げて当てはまっていそうなものを探します。
そのため、基盤としている昔の人の結果が実は間違っていた!とか言うことが明らかになると、広範囲にわたってモデルの再構築が要求されます(時々ある)。
Re: (スコア:0)
なんか詳しい人っぽいので質問。
地震波で地球の内部を探る [spring8.or.jp]
このページのD”層というのは深度といい厚みといい、『発見』された層にとても近いように見えます。
別物なんでしょうか?
ちなみに2008年の成果ページにあります。
Re:沈んだプレート物質? (スコア:2, 参考になる)
同じものです。
この部分に地震波の速度が遅い領域があることはだいぶ昔から知られていました。その起源に関しては諸説様々にあったわけですが、2004年頃だかそのぐらいに発表された論文で、高圧実験の結果から外核の物質(と信じられているもの)がペロブスカイト相からポストペロブスカイト相と呼ばれる新発見の相に転移しているのではないか、という説が提唱されていました。
今回の論文は、最近の地震の解析などを用いることでより詳細なデータを得てそれを解析した結果、ポストペロブスカイト相への転移だけでは地震波の速度変化を説明しきれず、実はこの領域では単に相転移が起こるだけではなく、化学組成も少々違ったものになっているのではないか?というものが新たな発見(仮説)となっています。
そういう意味では、新たな層の発見というか、見つかっていた層に対する新たな事実の判明というか。
(まあ、組成の違う層がある、という意味では新たな層の発見でもあるのですが)
上下方向で十分な攪拌が起こっていれば、このような「軽い元素が上の方にちょっと多めに集まっている」という状況にはならないと考えられますので、このあたりではこれまで考えられていたよりも対流が弱いのではないか?とか、いくつかの点で既存のモデルの見直し(再確認)が必要になるかもしれません。
Re:沈んだプレート物質? (スコア:2, 参考になる)
ポストぺロブスカイト相や沈んだプレート物質は、マントル(基本的には岩石)の最下層(深さ2700-2900km)、
今回の発見は、核(基本的には鉄)の最上層(深さ2900-3200km)
です。
というわけで、沈んだプレートの話とは「違います」が正しいと思うんですが。
皆さん、本記事(Natureでも概要部分は誰でもアクセスできます)を読んでコメントしましょうよ。
Re: (スコア:0)
お答えいただき、ありがとうございます。
層があることはわかっていたけれど、観測データが予想と違っている。
それで、層のできかたが今までのモデルでは説明できないわけですね。
ありがとうございました。