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熱音響機関の(ほどほどに易しく、ほどほどに難しい)説明
http://www6.ocn.ne.jp/~seisan/632/632-51.pdf [ocn.ne.jp]http://www.nagare.or.jp/download/noauth.html?d=24-4-t04.pdf&dir=41 [nagare.or.jp]
熱力を囓ってた人なら説明を追えると思います。#タコニス振動とか懐かしいなあ。
概要だけいえば、熱を吸収して膨張したガスがちょっとずれたところで熱を放出しつつ冷却&収縮、その体積変化がガス全体に伝わり、ある臨界を超えると自励発振するようになる、というものです。これにより、熱源の熱から音波という仕事が引き出されます。音波に伴う気体の膨張・圧縮は同時に熱の吸収・放出を伴うため,全体としては熱源で吸熱、放熱部で放熱というサイクルを持つ熱機関となります。温度差のあるところで熱を移動し、音波という運動として取り出す、というものですね。温度差から音波への変換は、理論的にはかなり(カルノーサイクルに近いところまで)効率を上げられます。音波から他の形への変換はまた面倒なのですが、例えば圧電素子を使って電力にするとか、音波の周期振動でダイレクトにピストンを駆動するとか、そういう手法があるにはあります(ただしエネルギー密度などの関係で効率は結構低い)。
ここ数十年ぐらい盛んに研究されているのですが、ちゃんと解析しようとすると開放系の熱力みたいなもの(壁面との熱のやりとり、気体の断熱および等温圧縮・膨張)と流体力学(気体の運動)を同時に解いてやる必要があって面倒なようです。まあ最近は計算能力が上がってきているので、ある程度力業で解いたりも出来るようですが。
むしろこの手の熱音響機関は冷凍機(パルス管冷凍機など)として優れていて、・機械的駆動部分がないので安い・機械的駆動部分がないので小さくできる・機械的駆動部分がないので信頼性が高い・熱効率が高く、入力に対し冷凍機出力が高いと言った特徴があります。冷凍機として使う場合は、高温熱源と排熱部を使って音波を発生しておいて、この音波が移動する途中で冷却部の熱を吸収&放熱部で排熱、という形になります。
熱力学的自励振動を使った機器といえば自励振動型ヒートパイプ [jsrae.or.jp]がありますね. この場合, 作動流体の輸送が目的なので比較的実装が簡単なのでしょう.
例えばCPUクーラー [okaya.co.jp]などで一般向けにも販売されていたのですが, 誰か使ってた人いらっしゃいますか? 当時から安定的に自励振動させるのは難しそうだとは思っていたのですが, 最近の負荷によって頻繁に発熱量が変化するCPUだとさらに実装が難しそうですね.
>冷凍機(パルス管冷凍機など)として優れていて
よくわからんけど冷蔵(凍)庫とクーラーの仕組みは同じらしいので、その特徴はクーラーにも応用可能?
>その特徴はクーラーにも応用可能?
実例があるかは知らんけど、冷房的な用途を目指した研究は見た覚えがあるので、不可能ではない、ってとこじゃないかと。ただこの手の熱音響機関はある程度高温部の温度を上げないと音波が出てこないので、「部屋の冷却」というような用途の際に効率がよいのかどうかは謎。(一端を結構加熱しないといけないので、室外機に相当するものの温度はそれなりに高くなっちゃうかも)
冷凍機として使う場合は、高温熱源と排熱部を使って音波を発生しておいて、この音波が移動する途中で冷却部の熱を吸収&放熱部で排熱、という形になります。
すごく…永久機関っぽいです…
ぱっと見には永久機関ぽく感じるのもわかりますが原理をちゃんと理解していれば、そんな疑問は氷解するんですけどね。
熱音響機関というと謎の機関っぽいですが、「スターリングエンジンみたいなもの」と考えれば理解しやすいんじゃないかと思います。
スターリングエンジンは、「温度差からピストン(ディスプレーサ)の往復運動への変換」もしくは「ピストンの往復運動から温度差への変換」ができる可逆機関です。熱音響機関というのは、空気などの媒質が、「ディスプレーサ」の働きをしていると考えてください。「温度差」から「空気の微小な往復」=「音」への変換をしたり、逆に「音」=「空気の微小な往復」から「温度差」への変換をしたりできるわけです。
熱音響機関による冷凍機というのは、スターリングエンジンを2台用意して、そのピストンを直結したようなものです。ピストンの代わりに、「音」で運動エネルギーの伝達を行っているわけです。
この2台あるどちらの熱機関(スターリングエンジン/熱音響機関)にも、「高温部」と「低温部」があります。
入力側熱機関では、「高温部」に高温熱源を、「低温部」は室温を使います。高温部の温度は下がり、低温部の温度は上がり、そういう温度移動の結果として運動エネルギーが生まれます。そこで、高温部には高温熱源の熱をどんどん供給し、低温部には、室温の空気などでどんどん冷却します。
その運動エネルギーが伝わった先の、冷凍側熱機関では、「高温部」に室温を、「低温部」に冷却対象を使います。運動エネルギー→温度差への変換結果として、高温部の温度は上がり、低温部の温度は下がります。より温度差を有効に使うため、高温部を、室温の空気などで冷却し、できるだけ室温に近づけます。そうすると、低温部側は、室温よりどんどん温度が下がっていく、ということになります。
こうやって、高温熱源からの熱による冷却が実現できるわけです。
いや、永久機関とは違うよ。簡単に言ってしまえば、
1. 高温熱源Aから低温廃熱部Bへ熱を移動する際に引き出せる仕事でヒートポンプを駆動2. ヒートポンプによって冷やしたい別の場所Cから熱を吸い出す
という過程だから。身の回りのクーラーだって、発電所の高温部(A)から廃熱部である大気(B)へ熱を移動する過程から仕事を引出し、それを使って部屋(C)を冷やしてるでしょ?それと同じこと。(具体的な実装方法は相当異なるけど)
永久というか・・・すごいB級の匂いがする。
ピュアオーディオ業界が黙っていないな
「無酸素銅を素材にした熱音響機関はB級よりA級動作に近くなり、歪みが少なく広がりのある澄んだ音色で…」
これ本当に実用レベルの製品が出まわる頃には特許で雁字搦めになって> ・機械的駆動部分がないので安いが結局・特許が多いので高いになるといういつものパターンが待ってそう。
# でもすっげぇ応援してる!
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熱音響機関 (スコア:5, 参考になる)
熱音響機関の(ほどほどに易しく、ほどほどに難しい)説明
http://www6.ocn.ne.jp/~seisan/632/632-51.pdf [ocn.ne.jp]
http://www.nagare.or.jp/download/noauth.html?d=24-4-t04.pdf&dir=41 [nagare.or.jp]
熱力を囓ってた人なら説明を追えると思います。
#タコニス振動とか懐かしいなあ。
概要だけいえば、熱を吸収して膨張したガスがちょっとずれたところで熱を放出しつつ冷却&収縮、その体積変化がガス全体に伝わり、ある臨界を超えると自励発振するようになる、というものです。これにより、熱源の熱から音波という仕事が引き出されます。
音波に伴う気体の膨張・圧縮は同時に熱の吸収・放出を伴うため,全体としては熱源で吸熱、放熱部で放熱というサイクルを持つ熱機関となります。温度差のあるところで熱を移動し、音波という運動として取り出す、というものですね。温度差から音波への変換は、理論的にはかなり(カルノーサイクルに近いところまで)効率を上げられます。
音波から他の形への変換はまた面倒なのですが、例えば圧電素子を使って電力にするとか、音波の周期振動でダイレクトにピストンを駆動するとか、そういう手法があるにはあります(ただしエネルギー密度などの関係で効率は結構低い)。
ここ数十年ぐらい盛んに研究されているのですが、ちゃんと解析しようとすると開放系の熱力みたいなもの(壁面との熱のやりとり、気体の断熱および等温圧縮・膨張)と流体力学(気体の運動)を同時に解いてやる必要があって面倒なようです。まあ最近は計算能力が上がってきているので、ある程度力業で解いたりも出来るようですが。
むしろこの手の熱音響機関は冷凍機(パルス管冷凍機など)として優れていて、
・機械的駆動部分がないので安い
・機械的駆動部分がないので小さくできる
・機械的駆動部分がないので信頼性が高い
・熱効率が高く、入力に対し冷凍機出力が高い
と言った特徴があります。
冷凍機として使う場合は、高温熱源と排熱部を使って音波を発生しておいて、この音波が移動する途中で冷却部の熱を吸収&放熱部で排熱、という形になります。
Re:熱音響機関 (スコア:1)
熱力学的自励振動を使った機器といえば自励振動型ヒートパイプ [jsrae.or.jp]がありますね. この場合, 作動流体の輸送が目的なので比較的実装が簡単なのでしょう.
例えばCPUクーラー [okaya.co.jp]などで一般向けにも販売されていたのですが, 誰か使ってた人いらっしゃいますか? 当時から安定的に自励振動させるのは難しそうだとは思っていたのですが, 最近の負荷によって頻繁に発熱量が変化するCPUだとさらに実装が難しそうですね.
Re:熱音響機関 (スコア:1)
>冷凍機(パルス管冷凍機など)として優れていて
よくわからんけど冷蔵(凍)庫とクーラーの仕組みは同じらしいので、その特徴はクーラーにも応用可能?
Re: (スコア:0)
>その特徴はクーラーにも応用可能?
実例があるかは知らんけど、冷房的な用途を目指した研究は見た覚えがあるので、不可能ではない、ってとこじゃないかと。
ただこの手の熱音響機関はある程度高温部の温度を上げないと音波が出てこないので、「部屋の冷却」というような用途の際に効率がよいのかどうかは謎。
(一端を結構加熱しないといけないので、室外機に相当するものの温度はそれなりに高くなっちゃうかも)
Re: (スコア:0)
すごく…永久機関っぽいです…
Re:熱音響機関 (スコア:4, 参考になる)
ぱっと見には永久機関ぽく感じるのもわかりますが
原理をちゃんと理解していれば、そんな疑問は氷解するんですけどね。
熱音響機関というと謎の機関っぽいですが、「スターリングエンジンみたいなもの」と考えれば理解しやすいんじゃないかと思います。
スターリングエンジンは、「温度差からピストン(ディスプレーサ)の往復運動への変換」もしくは「ピストンの往復運動から温度差への変換」ができる可逆機関です。
熱音響機関というのは、空気などの媒質が、「ディスプレーサ」の働きをしていると考えてください。
「温度差」から「空気の微小な往復」=「音」への変換をしたり、逆に
「音」=「空気の微小な往復」から「温度差」への変換をしたりできるわけです。
熱音響機関による冷凍機というのは、
スターリングエンジンを2台用意して、そのピストンを直結したようなものです。
ピストンの代わりに、「音」で運動エネルギーの伝達を行っているわけです。
この2台あるどちらの熱機関(スターリングエンジン/熱音響機関)にも、「高温部」と「低温部」があります。
入力側熱機関では、
「高温部」に高温熱源を、「低温部」は室温を使います。
高温部の温度は下がり、低温部の温度は上がり、
そういう温度移動の結果として運動エネルギーが生まれます。
そこで、高温部には高温熱源の熱をどんどん供給し、
低温部には、室温の空気などでどんどん冷却します。
その運動エネルギーが伝わった先の、冷凍側熱機関では、
「高温部」に室温を、「低温部」に冷却対象を使います。
運動エネルギー→温度差への変換結果として、
高温部の温度は上がり、低温部の温度は下がります。
より温度差を有効に使うため、高温部を、室温の空気などで冷却し、できるだけ室温に近づけます。
そうすると、低温部側は、室温よりどんどん温度が下がっていく、ということになります。
こうやって、高温熱源からの熱による冷却が実現できるわけです。
Re:熱音響機関 (スコア:1)
いや、永久機関とは違うよ。
簡単に言ってしまえば、
1. 高温熱源Aから低温廃熱部Bへ熱を移動する際に引き出せる仕事でヒートポンプを駆動
2. ヒートポンプによって冷やしたい別の場所Cから熱を吸い出す
という過程だから。
身の回りのクーラーだって、発電所の高温部(A)から廃熱部である大気(B)へ熱を移動する過程から仕事を引出し、それを使って部屋(C)を冷やしてるでしょ?それと同じこと。
(具体的な実装方法は相当異なるけど)
Re: (スコア:0)
永久というか・・・すごいB級の匂いがする。
Re: (スコア:0)
ピュアオーディオ業界が黙っていないな
「無酸素銅を素材にした熱音響機関はB級よりA級動作に近くなり、歪みが少なく広がりのある澄んだ音色で…」
Re: (スコア:0)
これ本当に実用レベルの製品が出まわる頃には
特許で雁字搦めになって
> ・機械的駆動部分がないので安い
が結局
・特許が多いので高い
になるといういつものパターンが待ってそう。
# でもすっげぇ応援してる!