アカウント名:
パスワード:
なにやら色々省略されたり間違った記述だったり誤解を招きそうだったりするんで補足.
・ビッグバン理論には,色々説明に難点のある部分もあった(だいぶ昔).
・それを解決するために,インフレーション理論(*)が提唱される(そこそこ昔).
*インフレーション理論:宇宙誕生直後の10の数十乗分の1秒という短時間の間に,体積が10の数十乗倍にも増えるような急速な膨張(インフレーション)が起こったとする説.「現在の宇宙があまりにも平坦すぎる」等の旧ビッグバン理論の問題点を解決できる.この説においては,インフレーションの後に宇宙が超高熱に加熱され,これをビッグバンと呼ぶ事が多い(宇宙の誕生→インフレーション→ビッグバン)
ところが,ビッグバンに関しては証拠が集まりつつあるものの,インフレーションに関しては「これを認めると色々説明がうまくいく」という事はあっても,実験的な証拠が出ていなかった.#背景放射の揺らぎあたりは間接的な証拠とも言えますが.
・インフレーションでは非常に高速に膨張するので,初期宇宙にあった様々なものが大きく引き伸ばされる.(まだ人類は成功していないが)相対論と量子論がきちんと統合されるものなら,初期宇宙の「時空そのもの」にも微小な量子ゆらぎが存在するはずであり,これもインフレーションに伴い引き伸ばされた巨大な時空の歪みへと変換される.これを(まだ未完成だが)量子重力なども含めて考えると,初期宇宙にあった時空の揺らぎは引き伸ばされた結果重力波となる事が予想されている(原始重力波).#だったと思うんですが,この辺の理屈はうろ覚え.
・これとは別に,宇宙にはビッグバンの超高温の名残である背景放射(現在ではマイクロ波領域)が充満している.重力波がもし存在すると,光は重力波(=時空の歪み)によって散乱され,特徴的な偏光面が現れる(水面で光が反射すると,特定の偏光面だけ残るようなもの).通常の物資の粗密によっても光は散乱されるのだが,重力波による散乱だと偏光面がらせん状に巻いたような特徴的な散乱光(Bモード)も出てくる事が判明している.
・ということは,背景放射(非常に弱い)の偏光面を観測してBモードが見つかれば,それは重力波によって散乱されたものだと考えられる(*).
*実際には,単なる重力レンズ効果によってもBモード変更は現れる.ただし,そのスケールがかなり違ってくる.重力レンズによるBモードは角度スケールが小さく,原始重力波によるものはより大きなスケールを持つ(と予測されている).従って,大きなスケールを持つBモードが見つかれば,恐らく原始重力波由来だと考えられる.
・このため背景放射が原始重力波によって散乱された結果できるBモードを観測しようといくつかの施設で観測が行われていたが,今回ついに「それっぽいものが見えた(ように思える)」という報告が成された.
という感じの流れです.まとめると,・大きな角度スケールを持つ背景放射のBモード偏光(らせん状の偏光面)が見つかった.・と言うことは多分巨大な重力波由来(波長が数十億光年以上になるような超巨大重力波)・そういう超巨大な重力波は,初期宇宙のインフレーションでのみ生じると予想されている(通常の天文現象でそこまで大きなスケールが生じるのは非現実的).・とするとインフレーション理論の初めての観測的な証拠に!
毎度お疲れ様です、わかりやすくてとっても参考になります。
>宇宙の誕生→インフレーション→ビッグバン
一時期、この手の解説本を読みまくったけど、イメージが違うなぁ・・・また最新のを読み直してみるか
より多くのコメントがこの議論にあるかもしれませんが、JavaScriptが有効ではない環境を使用している場合、クラシックなコメントシステム(D1)に設定を変更する必要があります。
クラックを法規制強化で止められると思ってる奴は頭がおかしい -- あるアレゲ人
いろいろ言葉足らずなので補足 (スコア:5, 参考になる)
なにやら色々省略されたり間違った記述だったり誤解を招きそうだったりするんで補足.
・ビッグバン理論には,色々説明に難点のある部分もあった(だいぶ昔).
・それを解決するために,インフレーション理論(*)が提唱される(そこそこ昔).
*インフレーション理論:宇宙誕生直後の10の数十乗分の1秒という短時間の間に,体積が10の数十乗倍にも増えるような急速な膨張(インフレーション)が起こったとする説.「現在の宇宙があまりにも平坦すぎる」等の旧ビッグバン理論の問題点を解決できる.
この説においては,インフレーションの後に宇宙が超高熱に加熱され,これをビッグバンと呼ぶ事が多い(宇宙の誕生→インフレーション→ビッグバン)
ところが,ビッグバンに関しては証拠が集まりつつあるものの,インフレーションに関しては「これを認めると色々説明がうまくいく」という事はあっても,実験的な証拠が出ていなかった.
#背景放射の揺らぎあたりは間接的な証拠とも言えますが.
・インフレーションでは非常に高速に膨張するので,初期宇宙にあった様々なものが大きく引き伸ばされる.
(まだ人類は成功していないが)相対論と量子論がきちんと統合されるものなら,初期宇宙の「時空そのもの」にも微小な量子ゆらぎが存在するはずであり,これもインフレーションに伴い引き伸ばされた巨大な時空の歪みへと変換される.これを(まだ未完成だが)量子重力なども含めて考えると,初期宇宙にあった時空の揺らぎは引き伸ばされた結果重力波となる事が予想されている(原始重力波).
#だったと思うんですが,この辺の理屈はうろ覚え.
・これとは別に,宇宙にはビッグバンの超高温の名残である背景放射(現在ではマイクロ波領域)が充満している.
重力波がもし存在すると,光は重力波(=時空の歪み)によって散乱され,特徴的な偏光面が現れる(水面で光が反射すると,特定の偏光面だけ残るようなもの).
通常の物資の粗密によっても光は散乱されるのだが,重力波による散乱だと偏光面がらせん状に巻いたような特徴的な散乱光(Bモード)も出てくる事が判明している.
・ということは,背景放射(非常に弱い)の偏光面を観測してBモードが見つかれば,それは重力波によって散乱されたものだと考えられる(*).
*実際には,単なる重力レンズ効果によってもBモード変更は現れる.ただし,そのスケールがかなり違ってくる.重力レンズによるBモードは角度スケールが小さく,原始重力波によるものはより大きなスケールを持つ(と予測されている).
従って,大きなスケールを持つBモードが見つかれば,恐らく原始重力波由来だと考えられる.
・このため背景放射が原始重力波によって散乱された結果できるBモードを観測しようといくつかの施設で観測が行われていたが,今回ついに「それっぽいものが見えた(ように思える)」という報告が成された.
という感じの流れです.
まとめると,
・大きな角度スケールを持つ背景放射のBモード偏光(らせん状の偏光面)が見つかった.
・と言うことは多分巨大な重力波由来(波長が数十億光年以上になるような超巨大重力波)
・そういう超巨大な重力波は,初期宇宙のインフレーションでのみ生じると予想されている(通常の天文現象でそこまで大きなスケールが生じるのは非現実的).
・とするとインフレーション理論の初めての観測的な証拠に!
Re: (スコア:0)
毎度お疲れ様です、わかりやすくてとっても参考になります。
>宇宙の誕生→インフレーション→ビッグバン
一時期、この手の解説本を読みまくったけど、イメージが違うなぁ・・・
また最新のを読み直してみるか