米国、中距離核戦力全廃条約の破棄を宣言 44
破棄 部門より
米政府は1日、ロシアによる条約違反を理由として「中距離核戦力(INF)全廃条約」の破棄を宣言した(時事ドットコムの記事、 読売新聞オンラインの記事、 産経ニュースの記事)。
INF全廃条約は射程500kmから5,500kmの弾道ミサイルや巡航ミサイルの全廃を定めたもので、1987年に米ソで結ばれた軍縮条約の一つ。冷戦終結の象徴の一つともされてきたが、近年では米国がロシアの新型巡航ミサイル9M729を条約違反だと非難。ロシアは9M729の射程を480kmと主張する一方、米国が進めるミサイル防衛システムが攻撃に転用可能で条約違反だと非難しており、さらに条約に縛られない中国が中距離ミサイルを開発するなど、対立が続いていた。
条約は離脱通告から6か月後に失効する。今後のロシア側の対応次第では破棄の取り消しもありえるが、現状では可能性は低いとのことだ。
世界終末時計は昨年、米国とロシアが互いにINF全廃条約違反を非難しながら核戦力を強化していることなどを理由に30秒進められ、真夜中まで残り2分となった。今年は核リスクや気候変動リスクへの対策が進まない現状を「the new abnormal」として、残り2分のままとなっている。世界終末時計を管理するBulletin of the Atomic Scientistsは声明で、昨年10月にトランプ政権がINF全廃条約破棄の意志を示したことを挙げ、米国とロシアに交渉のテーブルへ戻るよう求めていた。今回の発表を受け、Bulletin of the Atomic Scientists会長でCEOのレイチェル・ブロンソン氏は、核戦力不安定の新たな時代が来たなどと批判している。