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バイオテック

脳神経性難病の進行を遅らせる遺伝子治療 10

ストーリー by nabeshin
完全治療とまではいけていないが 部門より

insiderman 曰く、

今まで効果的な治療法が確立できていなかった脳神経性の難病が、遺伝子治療によって治療できるようになるかもしれない(Reutersの記事)。

ウェイル・コーネル大学とコロンビア大学が運営する、ニューヨーク・プレスビテリアン病院のロン・クリスタル教授が行った遺伝子治療は、脳にガラス管を挿して遺伝子を運ぶためのウイルスを直接注入するというもの。病気の原因となる突然変異した異常細胞に正しい遺伝子を与え、正常な細胞に戻すことが目的だ。

(つづく)

今回の実験では、Late Infantile Neuronal Ceroid Lipofuscinosis(LINCL)と呼ばれる脳神経性難病を患っている10人の子供に対して遺伝子治療を行った。LINCLは4歳ごろから発症し、協調性や視覚、会話能力がだんだんと失われていき、10歳から12歳ごろには自力での呼吸が不可能になってしまう疾患だ。

この治療が行われた10人のうち、1人は治療の数週間後にてんかん発作が原因で死亡し、また別の1人は2年後に原因不明の理由で死亡した。いっぽう、残りの8人は、発症が通常よりも遅くなり、明らかに延命効果が見られたという。

まだこの遺伝子治療により、難病を完全に治療するまでには到達できていないものの、先月には視覚を失った4人の患者に遺伝子治療を行ったところ、視覚の改善効果が見られたという報告もある。遺伝子治療について倫理的な是非はあるものの、着実にこの治療法は進歩している模様だ。
この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 参考までに (スコア:3, 参考になる)

    by Anonymous Coward on 2008年05月17日 1時00分 (#1345451)
    "coordination, vision and speech" は「協調性や視覚、会話能力」とするより「運動協調性、視覚、発語」とした方がよいかも。

    ちなみに "coordination" については、英文版ウィキペディアの "motor coordination [wikipedia.org]" の記事が参考になります。また LINCL (Late Infantile Neuronal Ceroid Lipofuscinosis) については、やはり英文版ウィキペディアに "Neuronal ceroid lipofuscinosis [wikipedia.org]" と云う記事があります。

    さらにちなみに、"Late Infantile Neuronal Ceroid Lipofuscinosis" を訳すとしたら「乳児後期型神経性セロイドリポフスチン蓄積症」ぐらいでしょうか(「セロイドリポフスチン」は色素なので、「蓄積」を付けてありますが、これは取ってもよいでしょう。また、あるいは、「蓄積」を「沈着」で置き換える訳し方もありえます)。

    ただ「セロイドリポフスチン症」で、ネットを検索してみると犬の病気の記事が沢山引っ掛かりますな。すでに、別のコメントで指摘されていることですが、少し内包がズレるかもしれないにしろ、ヒトの病気としては「バッテン病 (Batten disease)」の方が、取り敢えずの情報は集めやすいかもしれません(例えば、この件自体を紹介しているとも思われる「BioToday - バッテン病に対するCLN2遺伝子治療の有効性が確認された [biotoday.com]」では「遅発性幼児型バッテン病(Late infantile neuronal ceroid lipofuscinosis、LINCL)」と云う書き方をしています)。

    --[ゑびすや] (管理するパスワードを増やしたくないので、AC)
  • by Anonymous Coward on 2008年05月16日 17時25分 (#1345233)
    ・・・どういうワケだかAKIRAを思い出してしまいました。
    • T/O

      と思ったけども。タレコミ中にある
      >Late Infantile Neuronal Ceroid Lipofuscinosis(LINCL)
      ってぐぐっても出てこなかったんですけど、(英語では引っかかった)
      日本では知られていない(患者がいない)病気なんでしょうか?
      親コメント
      • by Anonymous Coward on 2008年05月16日 19時02分 (#1345261)
        専門家では無いので、間違っているところもあるかもしれませんが…

        「バッテン病」で調べると、たどり着きやすいです。
        「神経セロイドリポフスチン症」とも呼ばれています。

        いわゆるバッテン病の中で、現在分かっている8種類の原因遺伝子のうち、CLN2のものが「LINCL」で、遅発性幼児型と呼ばれている…はずです。

        日本では、ライソゾーム病 [wikipedia.org]として特定疾患の難病指定されているはずです。

        親コメント
        • by Anonymous Coward
          バッテン荒川の死因だった病気ですね(違う

          ライソゾーム病の一部は、欠損している原因酵素を投与することにより病気の
          進行を遅らせることができます(ゴーシェ病とか)。しかしながら、脳には血液脳関門
          があって、この手の分子が到達することができません。このため、脳神経症状の改善には
          このような酵素補充療法は役立ちません(ちなみに酵素補充療法の年間の治療費は数千万かかる。)
          ファブリー病のような腎臓の症状の改善には効果があるようですが。

          このため、この件のように遺伝子治療や幹細胞移植などが治療法として考えられます。
          幹細胞移植で事業化をめざしているベンチャーがあったらしく、遺伝子治療も
          その辺のビジネスがらみなのかもしれません。
          • マウスか何かでは、パーキンソン病か何かで欠損した神経細胞を幹細胞を分化させたものの導入で治療してましたね
            明確な効果が見えていたので、体細胞由来で幹細胞が確立された今、ヒトへの応用も視野にいれるでしょう

            #幹細胞を作れても、分化させる方法が確立しきれていないですけど
            #基礎研究やってた人間としては、再生医療も遺伝子治療も、もう面白い分野ではなくなってしまいました

            親コメント
      • やりなおし (スコア:1, 参考になる)

        by Anonymous Coward on 2008年05月16日 18時28分 (#1345253)
        バッテン病で調べ直してきなさいっ
        親コメント
    • by Anonymous Coward
      >こう・・・

      どう??
  • by Anonymous Coward on 2008年05月16日 20時07分 (#1345284)
    Cln2タンパク質の抗体ってのは出来てしまわないんですかね。
    もともと持ってないんだから、セレクションがかからないんじゃないかと思うんですけど。
    血液脳関門がたより?
    • Re:抗体 (スコア:3, 参考になる)

      by teratera (19792) on 2008年05月17日 18時19分 (#1345653) 日記

      できないでしょう

      タンパク質自体を注入するというなら抗体が出来ますが(ヒトのタンパク質でも、細胞内にしかないタンパク質が血管=細胞外にでることで抗体が作られることは在ります)。
      今回の技術では、ウィルスを使って脳細胞のDNAに『正常な』タンパク質の配列を押し込んで(例えばCln2)、生来持っていた異常なタンパク質(cln2)の機能を補完するものです。
      細胞内でタンパク質を作り、ライソゾーム病はゴルジ体(細胞内小器官)の酵素の異常なのでそこでタンパク質を使うので、免疫系の細胞に接触する機会がありません。
      というわけで、抗体に関しては心配いらないと思います。

      #治療ので使うウィルスに対する抗体ができる可能性はありますけど、そのへんはウィルスを何回も使わずに1回で感染成功させることで対応するつもりかな。

      親コメント
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私はプログラマです。1040 formに私の職業としてそう書いています -- Ken Thompson

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