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極性高分子と電界を使って、室温付近での熱変換が可能に 30

ストーリー by nabeshin
テレビだけでなく、冷蔵庫も壁掛け! 部門より
capra 曰く、

ペンシルバニア州立大学のZhang教授率いる研究チームは、極性高分子(polar polymer)を使った熱変換技術を開発しました(ペンシルバニア州立大学発表本家記事)。

極性高分子を電界下に置くと分子は秩序だって整列しますが、その際熱エネルギーを放出し温度が下がります。電界を解くと、分子は無秩序な状態に戻り、熱を吸収し温度が上がります。研究チームは12℃以上の温度差を観測しており、この分子のランダム化と秩序化の繰返しと、適切な熱交換器を組み合わせることで広い温度範囲での加熱や冷却を実現できるとしているとしています。磁界を利用した冷却装置はいままでにも研究されてきていますが、電界を利用する方が手軽であり、将来的にコンプレッサーフリーのエアコンや冷蔵庫の開発に繋げられるのではないかと期待されています。他にも、消防士の防火服やスポーツウェアの温度調節、また回路基板の冷却などへの応用も考えられるとのことです。

今回発表された論文によると、P(VDF-TrFE)(ポリフッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体)のほうでは、強誘電-常誘電的相転移が起こる70℃以上という条件となってしまうが、chlorofluoroethyleneを共重合させたP(VDF-TrFE-CFE)のほうでは、室温付近で同等の熱交換が行えたようだ。少し前のものだが、この実験で使われたポリマーに関するZhang教授の講演内容が小林理研ニュースにおいて読める。
この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • ここに違和感が (スコア:4, 参考になる)

    by Anonymous Coward on 2008年08月13日 13時52分 (#1402698)
    >電界下に置くと分子は秩序だって整列しますが、その際熱エネルギーを放出し温度が下がります。

    初期状態:無電場中で外気温と同じ温度T1、配向はかなりランダム。
    電場印加:電場中では、電場のないときと比べ、「同じ温度」での配向の
         乱雑性が異なる。同程度乱雑なら、電場中の方が温度が高い。
         このため、この系に電場を印加するということは、(系の内部
         状態を一切変えなくとも)系の温度が高くなる、ということに
         なる。そのため電場印加直後の系の状態は(配向等が一切変化
         しなければ)温度T2>T1である。ただしこの温度は配向に関する
         自由度の温度で、並進や振動の温度はT1のまま。
    しばらく放置:外気温T1<T2であるから、温度の低い外界へとエネルギーを
           捨てることができ、系の温度は配向の自由度を含めてT1となる。
    電場除去:電場が無いのに整列している状態は、配向に関する自由度でみると
         温度が低い状態である。このため、配向の温度T3<T1。
         内部緩和により、振動や並進の自由度からエネルギーが配向側に
         逃げることで、系の温度はすべての自由度でT4<T1へと変化。

    そんなわけで、系の温度は

    電場をかけた瞬間:系の温度は上がったとみなせる
    外界へ熱放出:系の温度は外界と同じ(=初期温度)に下がる
    電場を取り除いた時:系の温度は外界より下がる

    となるわけで、温度が下がるのはエネルギーを外界に捨てた時ではなく、
    その後の電場を取り除いた時(とその後の内部緩和)。
    • by manmos (29892) on 2008年08月13日 17時52分 (#1402825) 日記
      なんで、こんな当たり前の事が、と考えてみると、通常の家庭用のエアコンとかだ
      と、熱を放出する圧縮側が暖かくて、吸収する膨張側が冷たいからで、温度が下が
      る側で冷やすって、違和感があったりするからなんですね。

      でも、水冷エンジンなどでは、放出側の温度が低くて、吸収側が温度が低いと言う
      のが感覚もわかりやすいわけで、そういう違和感があんまりないです。

      温度が下がった奴が、吸収側にやってきて、温度の上がった奴が放出側にいくって考えると違和感は全くないかな。

      #むかし、水冷エアコンの冷却塔の掃除を毎年やっていたなぁ。

      親コメント
      • Re:ここに違和感が (スコア:1, すばらしい洞察)

        by Anonymous Coward on 2008年08月13日 19時28分 (#1402866)
        そういう問題ではなく、「タレこみの記述、間違ってるよね?」って事が言いたいのでは?
        タレこみ文ではまるで、「電場をかけると整列して余剰のエネルギーを放出し、その時に
        温度が下がっている」かのように書いてあるけど、実際には余剰のエネルギーを放出した
        段階では(温度的には)冷えていないわけで。
        #電場をかけることで上昇していた(配列の)温度が、外気温(つまりは元の温度)と同じ
        #に戻っただけなんで、冷えてはいない。
        親コメント
    • by Anonymous Coward
      むぅ、わからない。
      >電場印加:電場中では、電場のないときと比べ、「同じ温度」での配向の
      >     乱雑性が異なる。同程度乱雑なら、電場中の方が温度が高い。
      電場がかかるから、その分(「整列」するので)乱雑性が低いんじゃないんですか?
      何か理解する為の文献/検索キーワードとかあれば紹介下さい。

      • by Anonymous Coward
        絶対零度近くまで冷却するのに、磁場を使うっていう話があったと思うけど
        それと似ていたりする?
        • by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2008年08月14日 1時26分 (#1403050) 日記
          全くその通りで,磁場冷却と一緒ですね.

          磁場冷却では磁気双極子に磁場を印加,一時的にスピン温度が高くなった系から
          外界へ熱を流出させ,その後磁場を取り除くことでスピン温度を下げる.
          (他の自由度からスピン自由度へのエネルギー移動で他の自由度の温度も下がる)

          今回の例では分子の電気双極子に電場を印加,一時的に配向温度が高くなった系から
          外界へ熱を流出させ,その後電場を取り除くことで配向の自由度の温度を下げる.
          (他の自由度から配向自由度へのエネルギー移動で他の自由度の温度も下がる)

          ちなみに磁気冷却は絶対零度付近だけでなく,最近では室温付近でも使えないかと
          いうことでいろいろ研究もおこなわれています。
          磁場冷却は応答は速いけれども磁場を作る部分がかさばる,今回のは電場を作る
          部分は楽だけれども分子の配列の緩和に多少時間がかかる,という感じですかねぇ.
          親コメント
      • by Anonymous Coward
        >電場がかかるから、その分(「整列」するので)乱雑性が低いんじゃないんですか?

        電場がかかってから整列するまでの間、つまり電場が印加された瞬間のことです。
        この瞬間では、電場があるにもかかわらず乱雑性が高い(何せ電場非印加時の
        乱雑性を引きずっている)ため、(配向の)温度は高くなります。
        時間がたって整列すると温度は下がります。これは乱雑な配向だったものが電場で
        エネルギーの低い方向に比較的揃う&余剰エネルギーを外に放出、という過程な
        わけですが、見方を変えると外部温度よりも(配向の自由度において)温度の高い系
        から外界へ熱が流出し、外部温度と系の温度が同じになる熱緩和過程です。
        • by Anonymous Coward
          レス、有難う御座います&ご返事遅くなって済みません。

          >電場が印加された瞬間
          成る程。#1403000の私の質問については、了解です。

          でも、元コメント#1402698の
          >電場中では、電場のないときと比べ、「同じ温度」での配向の乱雑性が異なる。
          >同程度乱雑なら、電場中の方が温度が高い。
          は、まだわからない(^^;。多分、温度が何を示しているのかを(私が)厳密に理解していないからでしょう・・・。

          初心に戻ってWikipediaで「温度」を見てみたら、(これは室温での話だから量子論はとりあえず脇に置くとして)物質を構成する分子運動のエネルギーの統計値、となっていたの
  • http://members.jcom.home.ne.jp/kobysh/experiment/feynman/feynman.html [home.ne.jp]
    茨城県で高校の先生をしていらっしゃる小林義行さんの実験紹介ページに
    ゴムを使ったファインマンエンジンというのがあります。夏休みの自由研究にいいかも?
    (ルートページは、http://members.jcom.home.ne.jp/kobysh/)

    山口大学を退官された溝田先生が指摘されていますように、「ファインマン物理学」の中で、
    ゴムの伸縮に伴う温度変化は低下だと書かれているそうですが、私は今手元になく、
    岩波の日本語版でどうなっているかわかりません。脚注訂正されているんでしょうか。
    http://www.yamaguchi-u.ac.jp/yu/yu74/pdf/yu74-05.pdf [yamaguchi-u.ac.jp]
    • by Anonymous Coward on 2008年08月13日 15時19分 (#1402748)
      二人で使うと温まりますが、一人で使うと急速に冷えますね。

      # 心が
      親コメント
    • by the.ACount (31144) on 2008年08月13日 18時12分 (#1402837)
      >ゴムの伸縮
      「伸」なのか「縮」なのか、どっちやねん。
      温度に一番敏感なのは唇だから、輪ゴムを伸ばして唇に当てると暖かく感じるし、パチンと縮めて当てると冷たく感じる。
      逆に、輪ゴムで縛ったものを冷蔵庫に入れるとデロ~ンと伸びてしまう。
      --
      the.ACount
      親コメント
      • ご指摘ありがとうございます!間違いました。「伸ばすと暖まる」がファインマン先生の教科書では、
        「伸ばすと冷える」って書いてあったらしく、ken2さんに教えて頂いたところによると、現在の版では
        直っているということでした。
        正直なところゴムを冷やすと伸びるのは実感としては身についていません。
        人に聞かれたら、冷やすと弾性がなくなりかつ縮むと答えてしまいそうです。
        親コメント
    • 日本語版vol.2の43刷では、255ページ

      ゴム・バンドを引張ると,それは熱くなる.

      となっていますね。多分当該箇所です。日本語版のどの段階でそうなったかは不明ですが。

      ちなみに同vol.2の212ページ、ブラウン運動の紹介で、

      植物の花粉の粒がせわしなく動き回るのに気がついた.

      と花粉だか花粉内の微粒子だかあいまいな書き方になってます(ブラウン運動にまつわる誤解 [wikipedia.org]参照)。原本では問題ないのでしょうか?
      親コメント
      • by Anonymous Coward
        ああ、ありがとうございます。直ってるんですね。
        ブラウン運動の話は以前聞いたことがあります。
  • by ksiroi (24990) on 2008年08月13日 13時51分 (#1402697) 日記
    建物全体を電界下において冷却しましょうよ!
    ここ [bigsight.jp]のこれ [comiket.co.jp]とか!
    温度が改善できれば次はにおいだ!

    // 個人的にはバドミントン競技での冷却を希望。
    // 無風で冷却!(オフトピ(:>^
    • by Anonymous Coward
      脂肪は無極性高分子ですよ。
  • by Anonymous Coward on 2008年08月13日 13時40分 (#1402691)
    オグシオのユニフォームには汗で冷えるようにキシリトールが配合されている。
    これ豆知し(ry
    • by Anonymous Coward
      洗濯はどうするのか、という疑問に誰も答えてくれません。
      誰か知らないか?
      • うちにも、キシリトール入りの繊維の製品があります。
        こいつの場合、キシリトールは繊維に練りこんであるので洗濯しても大丈夫だと書かれています。
        オグシオのユニフォームが同じかどうかは知りませんが。
        親コメント
      • by Anonymous Coward
        一度着たら売るんですy(パケロス
      • by Anonymous Coward
        こういう一度着たら使い捨てのユニフォームとか、
        一競技の間ぐらいしか持たない極限まで軽量化されたシューズとか、自転車とか。
        そういう話を聞くと「なんか違う」と思ってしまうのは、貧乏人根性が染み付いているだけなのか。
        • そう考えると相撲取りはなんてエコ…。最近の人はそうでもないらしいですが、以前はまわしを洗いもしなかったそうですから。(縁起かつぎだそうで。臭うので天日干しするらしい。)

          #ふだん着てる着流しも洗わない…と凄い事になりそーだ。
          親コメント
        • by Anonymous Coward
          そしてコスト低減のためにF1のエンジンみたいにユニフォームは一大会一着を無洗濯で着用の事、
          と言うルールが出来るんですね。
        • by Anonymous Coward
          格闘系や芸術系の競技はさておき、陸上や競泳なんかは人類の能力の極限に挑戦するものだから、
          そこに知恵という能力が加わっていてもいいとは思う。

          #…っつーか、いっそドーピングありでもいいんじゃないかなー、っと。
          • by Anonymous Coward
            今回話題のSpeedoの水着なんか一人だと着脱もままならないようなものらしいし、破れることもあるので、だいぶ予備が準備してあると聞いた。
  • by Anonymous Coward on 2008年08月13日 16時21分 (#1402791)
    中身の重さで壁の表面ごと崩落しそう...

    消防服可能ならクーラーバッグ的折りたたみ冷蔵庫とか
    中身の量に応じて拡張可能な伸び〜る冷蔵庫とかがうれしい。

    #うちの冷蔵庫の中はいろいろすごいことになってるのでAC
  • by Anonymous Coward on 2008年08月14日 2時37分 (#1403076)
    もっとシンプルに考えようよ。

    可逆過程の系では

    dQ=TdSなんで、系のエントロピーが減少するときには系の外部に熱を出すのは当然だよね。

    磁場を加える(あるいはゴムをひっぱる)ことは分子を配向させるためにエントロピーが減少する、

    →熱を系の外に出す。

    逆に、磁場を切る(ゴムをゆるめる)ときにはエントロピーが増大するので吸熱する。

    水/氷の相変化なんかと同じ。熱とエントロピーについてわかってれば統一的に説明できるじゃないか。

    やっぱり熱力学は美しいな。

    • by Anonymous Coward
      >もっとシンプルに考えようよ。

      原理から簡単に示せるものを、各過程にわざわざ分解して考えるのが楽しいんじゃないですか!
      #古典力学的機構のみで考えられた永久機関がなぜ動かないのかを、保存則でバッサリ切るんじゃ
      #なくて、いちいち考えるのと同じ楽しみ方。
  • by Anonymous Coward on 2008年08月15日 15時53分 (#1404224)
    関連ストーリーの廃熱を利用した冷却って、結局ガッカリ技術だったの?

    電界による熱交換は超低温を作るためにすでに使われている物だけど
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弘法筆を選ばず、アレゲはキーボードを選ぶ -- アレゲ研究家

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