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自閉症を尿検査で診断 29

ストーリー by hylom
可能性として 部門より

あるAnonymous Coward 曰く、

尿の構成成分から自閉症の診断を行えるようになるかもしれないそうだ(Science Blog本家/.)。

自閉症の人は消化器官の細菌構造が他とは異なるそうで、このため消化器系の疾患を患うことが多いという。尿検査を行い、この細菌の副生成物や身体の代謝過程を調べることで自閉症を診断できるようになるかもしれないとのこと。

現在自閉症の診断は子供自身のコミュニケーション能力、社会的交流、また想像力などを調べる長期にわたる検査プロセスを経て行われている。このため、18ヶ月未満の子供では確実な診断を行うのは難しいとされている。しかし簡単な尿検査で診断することが可能になれば、早期から治療や支援を受けることが可能になる。

ただし、現在では自閉症の進行と消化器系の疾患のメカニズムや生物学的意義はまだ完全には解明されていないとのことだ。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by y_tambe (8218) on 2010年06月09日 13時10分 (#1777196) ホームページ 日記
    >自閉症の人は消化器官の細菌構造が他とは異なるそうで、このため消化器系の疾患を患うことが多いという。

    「消化器官の細菌構造」っつーか……要は「腸内細菌の構成」です。腸内細菌叢とか腸内フローラとか言われるもののこと。10年くらい前に「自閉症の原因は、腸内細菌にある」と述べた論文(pubmed [nih.gov])が出てまして、確か、Nature Newsも取り上げたことがあったと記憶してます。

    この仮説の根拠としては、自閉症の小児とそうでない(正常な)小児では、腸内細菌叢を構成する細菌に違いが見られた、というもの。一般的に小児のうちは、いわゆるビフィズス菌の仲間(Bifidobacterium属)が優勢であることが多いのですが、自閉症の場合はクロストリジウム属の比率が高くなっていた、と。

    だったら乳酸菌でも与えて「腸内環境を改善」してやれば自閉症が治るかも、ということで注目されたわけですが、その後、この仮説を支持するようなデータはほとんど得られず、むしろ自閉症の原因としては遺伝子変異との関連を強く示唆する論文が相次いで出た、という流れ。なので、論争中にある「自閉症の病因説」のうちでマイナーな、しかも現在は支持する研究者も少ない仮説の一つだと言っていいでしょう。

    ぶっちゃけて言うと、ある意味これもメチニコフ理論の延長線上にあるものでしかないんじゃないか、と思ってます。
    メチニコフ理論は、大雑把に言うと「腸内の悪玉菌が作り出す毒素」が非常に多様な病気の原因になるし、宿主の寿命も左右するのだ(=だからヨーグルト食べて善玉菌増やせば長生きできるよ!)という仮説です。

    #この場合、それに加えて「乳児ボツリヌス症」みたいな例から連想して、乳児期の異常と腸内細菌叢の関係を結びつけて考えたのでしょう。

    そりゃまぁ、腸内細菌叢が宿主に与える影響は皆無である、というわけではありませんが、少なくともこれまで主張されてきたような「発がんの原因である」などでは、遺伝子変異が原因である、ということが明らかになるなど、メチニコフ理論は大筋において(少なくとも、それ単独で病因になりうる、主な因子ではないだろうと)否定されつづけてきた、という流れがあります。それに加えて、その困難さから「メチニコフ理論」の正当性をヒトで証明できた研究は、今のところ存在しないのが現状です。

    ある意味この辺りは、微生物学界隈では「EM理論」と並ぶ疑似科学的なテーマの一つです。ただ厳密にいうと、この「腸内細菌叢の病因説」は、きちんとした研究も行われてきたけど根本的な証明が出来ないという、いわば「未科学」の領域でして。そういう意味ではEMのような明らかなトンデモ理論と同列に扱うのは失礼なんですが、結局はその辺りの事情から変な健康屋だとか、ビリーバーも多く存在してるもんで。正直、あんまり「近づきたくない」領域だったりする。

    #とか言うと、また「腸内細菌のバランスが〜」とか、食って掛かる人が出てきそうですけど ;-P

    ただここ数年になってようやく、プロテオームやトランスクリプトーム解析などから、腸内フローラの全容を解明しようという科学的なアプローチが行われだしたところですので、こっち方面からの今後の成果に期待しています。
    • ケチを付けるわけではなく,僭越ながら補足しますと,腸内細菌が「原因」であるとはこの論文の著者も言っているわけではありませんので,
      この研究自体が疑似科学の範疇にあるわけではないということはy_tambeさんも同意していただけると思います.
      (とはいえそういう結論に持って行きたい意図が感じられる論文ですが)

      今回も含めて,自閉症患者のゲノムやタンパク質を全て調べて健常者とどう違うかを明らかにしようという研究はまだ途上にあり,ゲノムの
      方からはかなり徹底的に調べたにも関わらず,特定の患者の原因となっていそうな遺伝子がみつかった程度で,多くの自閉症患者に適応できる
      基準は見つかっていません.

      そこで更に最近では自閉症患者と健常者で体内のタンパク質を全て調べ上げて違いを見出そう(プロテオーム解析)という研究が
      始まっており,いくつか結果も出ているようです.その分類で言えば,今回の結果のユニークなところは血液採取の必要がない,という部分です.

      もちろん最終的には治療に持っていくことが目的なのですが,まずは原因特定,さらにその前に確実な診断が必要なわけで,
      まだ自閉症研究は分子生物学的にはこの第一段階でうろうろしてるという,謙虚に言えばそういう段階にあります.

      では,なぜタンパク質が違うのかということですが,もちろん機能に直接関わる場合もあるでしょうが,腸内細菌が原因という仮説よりは
      多少受け入れられている仮説として,自閉症は自己免疫疾患であるというものがあります.
      実際,免疫機能や免疫関連分子の量が健常者と差があるという報告があります.
      自己免疫疾患においては自分のタンパク質のうちいくらかが不要に攻撃されてしまい,機能不全を起こすとされています.
      この場合,免疫機能の違いは体内の細菌の構成にも影響を及ぼすことが考えられ,腸内細菌の違いを「結果」として包含できます.
      しかし,この仮説もゲノムの方から証明はできておらず,何らかの原因があっての「結果」であるのかもしれません.

      --
      kaho
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      • by y_tambe (8218) on 2010年06月09日 20時09分 (#1777402) ホームページ 日記
        フォローありがとうございます&非常に参考になります。

        「自閉症」と一口に言っても、最終的には「行動上での違い」で診断されることもあって、実際には原因や発症過程の異なる、いろいろなタイプのものが混じっているのかもしれないなぁ、と思いました。
        #例えば化膿レンサ球菌感染が急性糸球体腎炎などの自己免疫疾患の原因になることがあるように、ひょっとしたら、中には本当に何らかの細菌感染に起因するものも混ざっていたりする可能性もあるのかなぁ、とか。


        腸内細菌叢に関していうと、最近、プロバイオティクス製品などが謳う「効果」に対して、各国の保健省が(他の代替医療と同様に)警告を発しはじめている、という状況にあります。これまでヤクルト中央研なども頑張って、いろいろな論文を出しては来ましたが、エビデンスとしては十分ではない、という判断が下されつつある状況というか…。

        そういう状況の中、−オミクス解析によって、これまで巨大なブラックボックスであった腸内細菌叢が「観測」できるようになりつつあります。これまで「腸内の善玉菌を増やす」とか言ってた製品が、本当に「ヒトの腸内で、特定の菌群だけを増やしているのか」などが(割と)直截的に検証できる段階までやっと辿り着いた、という印象を持ってます。

        #実はこういったわけで、この辺りの話題には最近特にセンシティブだったりします ^^;
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    • あ、念のために一応補足しておきます。
      「自閉症の原因は腸内細菌である」という病理的な仮説の真偽がどうあろうとも、実際、調査疫学的に「自閉症の場合には、特定の腸内細菌由来の物質が尿中から検出される」ということが真なのであれば、それを診断マーカーに使うことは可能だと思います。誤解のないよう。
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    • by msfm (3219) on 2010年06月09日 13時52分 (#1777218)

      自閉症の人は偏食が激しい場合が多いので、そのせいで腸内フローラの均衡が他の人と違うってだけじゃないのかな。それに関しては、乳児の段階で調べれば分かると思うんだけど、その辺のデータって有るんでしょうか?。

      卵が先か、鶏が先か…。うーん。

      # 自閉症児の親なので関心大。

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      • by y_tambe (8218) on 2010年06月09日 16時54分 (#1777302) ホームページ 日記
        おっしゃる通り、腸内細菌叢の構成は食べ物によっても変化しますし、(それとも関係して)年齢によっても変化します。

        一般に乳児の段階では、いわゆるビフィズス菌の仲間が多いのですが、母乳栄養児と人工栄養児を比較すると、母乳栄養の方がビフィズス菌が優勢になることが判ってます。
        また成長していくと、徐々に別の菌種(ユウバクテリウム属など)が占める割合が増加して優勢になります。老人になるとクロストリジウム属の割合が(優勢にまではならないけど)増加します。

        なので、乳児の段階で調べたデータが、成長してからも「そのまま」使えるわけではないと思われます。ある一定の、例えば乳児の段階でデータを集めて比較する必要性があるでしょう……ただ、この場合も母乳栄養と人工栄養の違いなどについても考慮が必要だと思います。
        ただ、下手すると(例えば、HTLVキャリアなど授乳を行わないよう指導されてる人に対して)「母乳で育てなかったから自閉症になったんだ」みたいなことを言い出す輩が出て来ないとも限らないわけでして。この辺りは結構デリケートな問題にもなりかねないと思います。
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        • by msfm (3219) on 2010年06月10日 16時56分 (#1777787)

          詳細な情報、有り難うございます。

          やはり、まだまだデータが足りない、と言ったところでしょうね。ウチの場合、18ヶ月までの診断に失敗してるので、他の人に同じ轍を踏んで欲しくない、と言う思いがあっての関心だったのですが。…難しいものですね。

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      • 乳児の段階で偏食って何?

        --
        the.ACount
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      • by Anonymous Coward

        #本家にFull textと称するものが転載されてるので、それとAbstractを見つつ。
        研究対象は3から9歳なので乳児じゃないですし、研究方法のところにも偏食を考慮したような記述はなかったです。

        まあ偏食によるものだったとしても、自閉症の人の、症状が改善してるかどうか、をチェックするのには使えるんじゃないでしょうか。…というのが論文の中での提起なようですよ。

        • by Anonymous Coward
          >症状が改善してるかどうか

          自閉症の改善って「社会とそれなりにうまくつきあえるようになる」ことだと思うんだけど、排泄物でそれが分かるというのは、ちょっと信じられない。
          可能だとしたら、非常に画期的なこととは思うけど。
    • by saitoh (10803) on 2010年06月10日 10時19分 (#1777565)
      検索したら出てきちゃいましたよ。 おっしゃる、消化器系を治療したら自閉症は治るんだっていう主張 [jiheisho.org]。 なんか、イオン水とか波動水屋さんのWEBと似た印象を受けます。
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    • by Anonymous Coward

      自閉症患者の消化器官内の細菌構造が他とは異なる、という話が事実(相関関係がある)なら今回の技術は有用。
      他と異なっているから自閉症になるという仮説(因果関係)が正しいかどうかには依存しない。

      ただ、相関があるというのは事実なのでしょうかね?

      • by the.ACount (31144) on 2010年06月11日 9時37分 (#1778177)

        胃腸の状態が精神状態の影響を強く受けるってのは常識だから、いかにもありそうな話だ。

        --
        the.ACount
        親コメント
      • Re: (スコア:0, すばらしい洞察)

        by Anonymous Coward

        逆もあるでしょ。
        自閉症にかかわる要因が、腸内細菌の変化をもたらしてるという可能性もある。

        • by nim (10479) on 2010年06月09日 17時21分 (#1777320)

          逆じゃなくて、それも相関関係のうちです。

          因果関係はわからないにせよ、相関関係があるなら
          検査のためには有効だね、というのが元コメントの主張ですよ。

          親コメント
    • by Anonymous Coward

      なんか読んでると、腸内細菌って「三尸」みたいですね。

  • by Anonymous Coward on 2010年06月09日 13時32分 (#1777207)
    検査結果を信頼しすぎることが心配です。

    たとえば歯科では、歯にプローブをあてるだけで虫歯を検査できる便利な道具が使われています。
    これの動作原理は、単波長の光(たいていはレーザー)を照射して反射してくる光の分光スペクトルを調べて入射光とは別の波長の反射光の量を調べるというもので、虫歯の原因菌には蛍光を持つものがいるので間接的に虫歯の原因菌の量が調べられるわけですが、これとて万能ではありません。ですが、これを使いはじめると「虫歯菌センサー」かのように使ってしまうわけです。患者にも数値で説明できるので非常に受けがいいし。
  • by Anonymous Coward on 2010年06月10日 8時01分 (#1777538)
    自閉症の治療ってどういうことが行われるんでしょうか。
    自閉症「患者」って「治療」を希望するものなんでしょうか。
    医師や家族が本人の意向を無視して「治療」するなら
    ロボトミー手術とあまり変わらないような。
    • by the.ACount (31144) on 2010年06月11日 9時44分 (#1778180)

      自閉症は学習障害の一種だから、その治療は学習援助。
      人間が本能的に持ってる他者の心理を理解する能力が損なわれているが、それに応じた教育を行えば学習可能と分かっている。

      --
      the.ACount
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      • by Anonymous Coward
        > 人間が本能的に持ってる他者の心理を理解する能力が損なわれている
        これ、本当にそうなの?
        他者の心理を理解しない自由はないの? なぜ?
        • by the.ACount (31144) on 2010年06月15日 12時29分 (#1780226)

          他者の心理を理解する「能力」なんて書いたから誤解してるようだけど、実際は脳の器質的障害。
          脳の特定部位が損傷していて、そこが「他者の心理を理解」する機能を持つ部位と考えられている。
          損傷していても脳には可塑性があるので、訓練でカバーできる。

          --
          the.ACount
          親コメント
        • by Anonymous Coward

          社会がそれを「是」としないから。
          まあ、どこかに引きこもっていれば治療は受けずに済むでしょ。
          社会から断絶していれば、その力は及ばない。

          # もしくは、そんな社会の力さえ働かない所に行く。ソマリアとかどう?w

          • by Anonymous Coward

            この種の障害ってのは、本人や周りが「つらい」ということでしかない。
            もし、ある種の自閉の人たちが社会的に多数派になれば、今の社会における正常人が障害者といわれることもあり得るわけで。
            ある文化では許容される性格が他の文化では人格障害として扱われることもあるそうで、結局社会に受け入れられるかどうかが障害であるかないかの境界になっていると。

    • by Anonymous Coward
      頭の病気で本人の意思気にしたって仕方ないだろ。
      お前は分裂の妄想真に受けて治療方針たてんのか?
      • by Anonymous Coward
        > 頭の病気で本人の意思気にしたって仕方ないだろ。
        やっぱりロボトミーとかわらんのか。
        そういうことなら、それはそれで構わんのだが。
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身近な人の偉大さは半減する -- あるアレゲ人

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