磁界で電子の波の挙動をコントロール、高密度な記録媒体の実現へ向けた新理論 29
ストーリー by hylom
解説お願いします…… 部門より
解説お願いします…… 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、
日本経済新聞の記事「容量無限のハードディスクへ道 九工大など新現象発見 」によると、九州工業大学の岸根順一郎准教授が、HDDなどの磁気記録媒体の情報量を大幅に増やせる可能性がある新しい物理現象を理論的に予言したそうだ(九州工業大学のプレスリリースPDF、 Physical Review Letters誌掲載論文)。
「カイラル磁性体」と呼ばれる磁性体がある特定の状態になっているとき、そこにかける磁界を変化させることで電子の動きを制御できる、という現象だそうだ。日経新聞では「容量無限」とあるが、厳密には1つの素子で複数ビットの状態を記録できる、というものだと思われる。
ちょうど今読んでました (スコア:5, 参考になる)
カイラルマグネットやってる人たちが出しているのでカイラルを前面に押し出してますが,まあ本質的にはらせん磁性なら出来る話です.
(カイラルだと,らせん磁性が生じやすい.ただし,カイラルでなくてもらせん磁性はあって,それでも出来る)
また,今回の話はあくまで「簡単な計算でちゃんとそういう効果が出ることが示せたよ」と言う話であって,実際に何かの系で実現した,という話ではありません.
#実際の系でも出来ると思いますが,らせん磁性で伝導を持つ系ってそんなに多くないんですよね.
らせん磁性体(ある軸方向にスピンが並んでいて,スピンの向きが少しずつ傾いていて全体でらせん状になっているもの)に磁場を書けると,らせんの周期を変えることが出来ます.
一方,伝導電子はスピンを持つため,局在スピン(磁性源)と相互作用を持ちます.
つまり,伝導電子は「局在スピンの配列」(=磁気構造)の作るポテンシャルの中を運動しています.
さて,磁場によりらせん磁性の周期が変わると言うことは,伝導電子の感じるポテンシャルの周期も変わる,と言うことになります.
バンド理論を学んだ方はわかるかと思いますが,ポテンシャルの周期が変わると言うことは,ブリルアンゾーンの大きさが変わります.
(周期が大きくなると,ブリルアンゾーンは小さくなる)
そのため,ポテンシャルが,「フェルミ準位の電子のところでちょうどバンドが折りたたまれるような周期」という周期になった場合,フェルミ準位はブリルアンゾーンの端に来ます=ギャップがそこに開くので,絶縁体になります.
(厳密ではないけれども)もうちょっとだけわかりやすい描像で説明すると,フェルミ準位の電子(電気伝導を担う,伝導電子の中で一番エネルギーの高いあたりの電子)の波長とちょうど同じ周期のポテンシャル(波長の半分だっけか?まあいいや)があると,X線で言うところのブラッグ反射が起こって全反射条件になり,右に進んでいた電子が全反射で左へ返ってくるような状況になります.そうすると電子は進めないので絶縁体です.他方,そういう周期じゃないポテンシャルだと,電子は移動できるので金属になります.
今回の例だと,その「ポテンシャルの周期」を外部磁場で自由にコントロールできるので,全反射条件(のようなもの)になるポテンシャルの周期に調節すると絶縁体,そこからずらしていくとギャップが急速に縮んで最終的には金属状態,と,抵抗が高いところから低いところまで外場でコントロール出来よ,と.
で,まあ,これが現実の素子として使えるかというと……
まあ,無理なんじゃないでしょうか.少なくとも30-50年ぐらいは.
#いや,難しいと思いますよ.と言うか,携わってる面子を見ても実用化を狙ってるとは思えないですし.
マニアックな話になりますが,結晶格子の周期と,らせんの周期が不整合(両者の比が無理数)だと,最小公倍数的なものが無いため,両方のポテンシャルをあわせた実際に電子が感じるポテンシャルの周期が無限大(周期がない)になって,逆にブリルアンゾーンのサイズは無限小(元々のバンド構造が,無限回折りたたまれたもの)になったりして面白いことが起きます.
(現実の系では完全な不整合は無理で,ある程度の長さで周期がそろっちゃうんですが,それでも何度もバンドが折りたたまれた面白い構造が出てくる)
Re:ちょうど今読んでました (スコア:3, 参考になる)
読み直したら誤字脱字がひどい……
上では簡単のために絶縁体と金属のところを取り上げて説明しましたが,実際に論文中で書かれているのはもっと離散的な折りたたみです.全部絶縁化するような折りたたみなんですが,そのときのギャップの開き方が違うというか.
それと,すでにタレコミ部分でも突っ込まれてますが,これで容量無限とか言ってる日経は誇大(略)でJAROに(略).
#いや,広告じゃないんですが.
これを無限とか言うのは,メモ用紙一枚と鉛筆渡して,「文字サイズは可変だからまさに無限の記録が出来ると言える」とか言ってるようなもんです.
Re:ちょうど今読んでました (スコア:2)
記事だけ読んだら、永久機関みたいな怪しげな話にしか見えなくて‥‥。
でも、まだ、グレンラガンのイメージが付きまとっていて無限に巨大化できるのかと(笑)
真面目に勉強に行ってきます、はい。
世の流れがHDDからSSDに移りつつあるけど (スコア:2, すばらしい洞察)
#HDDの今後の活躍に期待ください。
Re: (スコア:0)
そう言われた事もあ…ったような気がします。
---FDD
Re: (スコア:0)
逆にいつ居なくなるんだよ
っと突っ込みを入れたくなる
デバイスの筆頭な気がする・・・
Re: (スコア:0)
フロッピーディスクはメディアもドライブも製造が終息したからまもなく過去帳入りでしょう
まるでどこかの総理大臣みたいですね (スコア:0)
一人で複数の状態
$ ねこじゃないよ
Re:まるでどこかの総理大臣みたいですね (スコア:1, おもしろおかしい)
> 一人で複数の状態
なるほど。
・空気の読めないカン違い状態
・中身のないすっからカン状態
・回収日を待っている空きカン状態
・国民からの総すカン状態
・民主党所属の議員もさじを投げるもうあカン状態
・椅子にしがみつくだけしか能がないあカンたれ状態
・平気で発表したことを訂正する卑劣カン状態
・長けているのはカン計だけ状態
な状態の重ね合わせなのですね。
#ハイゼンベルグ・ストライクってやつでしょうか。
Re: (スコア:0)
>$ ねこじゃないよ
じゃあ鳩で。
MLC (スコア:0)
無限大の抵抗に電流が流れるか確認するには (スコア:0)
多値って事は (スコア:0)
ブラックホール化するんじゃないの (スコア:0)
エントロピーが増える=ブラックホールの表面積が増えるらしいんだけど
この理論が予言しているものに一定空間に一定以上の情報を入れると
ブラックホールになるってのがあったはず
Re:ブラックホール化するんじゃないの (スコア:4, おもしろおかしい)
いくらでも入るHDDがありゃ、なんでもかんでもぶち込んでしまって、
だんだん、中身がごちゃごちゃして探しようがなくなって、何一つ取り出せなくなりそう。
そういう意味では、最新の宇宙理論にしちゃ珍しく、感覚とマッチする。
1を聞いて0を知れ!
Re:ブラックホール化するんじゃないの (スコア:1)
という考え方は破綻してませんよね。
読み出せなくなってしまったらそれは情報じゃない。だとすると「情報」密度の上昇によって発生したブラックホールは、ブラックホールになった瞬間にその情報が失われて、ブラックホールであることをやめてしまうんじゃないでしょうか。
Re:ブラックホール化するんじゃないの (スコア:2, 参考になる)
>ブラックホールになった瞬間にその情報が失われて
最近の理論だと、ブラックホールになっても情報は失われずに、蒸発過程で再び情報が放出されることになってます。
(そうしないと量子論の仮定と矛盾するため、量子論が破綻する)
ただ、重力の量子論が確立されていないため現在の理論を何とかして適用している状況であり、ちゃんとした重力の量子論が見つかった暁には話が変わる可能性もありますが。
Re: (スコア:0)
まぁ、放出された時に情報を全部キャッチできなくても、放出された事には変わりないわけで…
と言うかアレだ。記録素子に与えられた磁性が失われる事を以って「放出される」とか…
Re:ブラックホール化するんじゃないの (スコア:1)
佐藤明機のビブリオテーク・リヴでそういう話があったっけ。
描かれたのは15年くらい前だったかな?
らじゃったのだ
Re: (スコア:0)
>この理論が予言しているものに一定空間に一定以上の情報を入れると
>ブラックホールになるってのがあったはず
つまりぼくのお宝HDDがTENGAになる日も近いってワケよ!
「無限ビットの容量」 (スコア:0)
Re: (スコア:0)
/dev/nullに繋がる物理デバイス誕生の予感!
OS開発者は今から物理nullデバイスの存在を見越した設計をしておくべきではないか
#ぬるぽ
Re: (スコア:0)
そういうデバイスであれば、事実上容量無限と言う見方もできなくはないかな。
磁気バブルメモリ復活! (スコア:0)
と言う話ではなかったのか。ちょっと残念。
プレスリリースより
~中略~
掘り出してきた水晶は実は古代の記憶媒体で、磁界をかけるとムフフな映像が……ホール素子?
#直リンすんな! [srad.jp]は緩和されたんでしたっけ?
Re: (スコア:0)
水晶髑髏はコンピューターだったんだよ!!
ΩΩ Ω ナンダッテー
磁界で電子の波動拳をコントロール? (スコア:0)
・・・
インデックスが (スコア:0)
Re:インデックスが (スコア:1)
無限長のアドレッシングというとあれだけど、どんなに長い有限長アドレスも表現できて、現実的に使う範囲ではそこそこのアドレッシング長の表現を採用すれば十分じゃないですか?たとえばUTF-8みたいに最初に後続のアドレスの長さ情報が埋め込まれているみたいな感じ。アドレスのデコードが大変そうだけど、元コメントはそれを言っているのかな。
さすがに実行プログラム中にそういうアドレス表現を持たせるのは無理目だけど、データ領域に限れば、serial flashにアクセスするみたいな感じで実現できないかな。そうすればシステム全体のバス幅にも容量は影響を受けません。遅いという一点で実用になるか眉唾だけど。(笑)
システムが生き残れる間は拡張しなくていいようなbit幅を持たせれば十分、というのも考えたけど、これはず~と後世恨まれそうですね。2000年問題の再来みたいな感じ。(笑)
vyama 「バグ取れワンワン」