
かき混ぜることで、分子構造の左右作り分けに成功 47
ストーリー by hylom
できちゃった 部門より
できちゃった 部門より
greentea 曰く、
日刊工業新聞によると、東京理科大学の山下俊准教授と奈良先端科学技術大学院大学の藤木道也教授の研究チームが、対称的な構造を持つ鏡像異性体を簡単に作り分ける手法を開発したそうだ。
液体を寒天のように固めるゲル化剤を水に入れ80度Cにして、時計回りか反時計回りにかき混ぜた。分子構造の左右の偏りを調べる手法を使い、溶液内で左手系分子と右手系の分子を作り分けられることを示した。
鏡像異性体は化学反応性や物性はほとんど同じであるため分離や作り分けが困難だが、生体への影響などは全く異なる場合があり、工業的にはこれらを選択的に得ることは非常に重要である。
このような鏡像異性体の作り分けは、これまでにも盛んに研究されてきており、例えば2001年のノーベル化学賞を鏡像異性体の作り分けに関する研究で野依氏らが受賞した。
それがまさか、固めてかき混ぜながら作るという、単純な方法で作り分けできるとは驚きである。
まだそこまで行ってないかも? (スコア:3, 参考になる)
論文はAngew. Chim. Int. Ed.のこれだと思うんですよ.
http://dx.doi.org/10.1002/anie.201104708 [doi.org]
ゾル-ゲル系にローダミン入れてかき回すと,円二色性が出ましたよ,という論文です.
つまり,かき混ぜることによりローダミンの空間配列としてカイラルな配置(というかそれを生み出している高分子のカイラルな空間構造)が出来,ゲル化温度以下でそのまま固めるとその構造が固定される.で,温度を上げるとゾル化してそう言った構造が崩れ,逆回転で攪拌して固めると逆向きの構造ができあがる,と.
現時点ではまだ分子のカイラリティの制御までは行っていなくて,カイラルな空間配置,というカイラルな場を作った段階に思えます.
もちろんカイラルな場の中で反応を起こせばカイラルな分子がある程度偏った生成比で得られる可能性はありますし,現在もそう言った方向で研究を行っているんでしょうが,この段階でカイラリティを制御した分子作成,とまで言ってしまうと言い過ぎのようにも思えます.
(ってもまあ,今論文が読める環境にいないのでabstだけからの判断ですが)
ちゃんと読んでみました (スコア:5, 参考になる)
やはり光学異性体を作り分けたりはしていないようです.
ちょろちょろと報告がある,「攪拌したら光学活性的な挙動が出たよ」という現象を詳しく調べられる系を作ることに成功,とかそんな感じですね.
マクロな攪拌とミクロな光学活性は関係が無いと昔は思われていましたが,ポリマーとかには影響があるんみたい,という報告がちらほら出ていました.どうも,攪拌によって溶液中の分子の並びかたに偏りが生じているのではないか?という事になります.と言っても溶液ですので,きっちり並ぶと言うよりは,平均するとちょっと螺旋っぽい構造になる,とかそういう統計的な話になります.
そこで著者らは,もし溶液中でそういう螺旋っぽいミクロな構造が実現しているなら,そこに蛍光色素を一緒に入れておけば円偏光が出てくるんじゃないの?と考えて実験.さらに入れておくポリマーとして室温でゲル化するものを使うことで,そういった攪拌中にできるミクロな構造を固定化し,そのまま測定に持って行くことに成功しています.
でまあその結果,マクロな攪拌によって誘引されるミクロな対称性の破れ(イメージとしては,洗濯機を回すと,中の衣類がねじれる様なものと言ったらよいか)をきちんと測定できる手法になるよ,と.
この手法の売りとしては,使ってるポリマーが非常に簡便に合成できて入手性に優れているところ,室温で固まり,少し温めると溶けるため微視的なカイラルな構造を作ったり崩したりと言った実験がやりやすいところ,水溶性の様々な色素を取り込ませて同じように実験できるところ,などだそうです.
要追試 (スコア:2)
区分のため、容器に予め「右巻き」とか「左巻き」
みたいなラベルを貼っていたとしたら。
そのラベルに、容器内の分子構造が
影響を受けた可能性があると思います!
Re:要追試 (スコア:1)
「ありがとう」と書けば良い構造になるが、「左巻き [zokugo-dict.com]」と書けばスネて悪い構造になるなんて、そんなトンデモは信じないぞ。
科学的に考えよう。右という字の最初の二画はノ→一、左という字は一→ノ。鍵はここにあると見た。
これって、 (スコア:2)
生物の起源を解明するって話につながりそうな。
Re:これって、 (スコア:1)
かき混ぜたのは誰かって話ですか?w
モデレータは基本役立たずなの気にしてないよ
Re:これって、 (スコア:2)
普通にコリオリ力じゃだめ?
#てことは、北半球と南半球では鏡像関係な生物が発生して・・・
#南半球の方が海が多くて優勢になったとか??
それにしても、こんな単純な方法でいいとは( Д ) ゜ ゜
Re: (スコア:0)
一旦、複製ができるレベルに行ってしまうと、あとは数の論理ですからね。
Re:これって、 (スコア:1)
日本書紀の国生みの話は本当にあったんだ!!!的な?
ショートショート (スコア:1)
とあるSFショートショート(星新一かな?)でこんな話があった。
「とある装置の事故に遭遇した男。
右利きのはずが左利きに。文字も全部左右反転して見えるという。
調査の結果、どうやら事故によって空間ごと体が左右が反転してしまったらしい
ということが判明する。しかしそれを除けば健康体そのものだった。
左右反転しても生活がちょっと不便になる程度かと思われていたが、
彼はだんだんと衰弱していった。十分な治療が施されているにも関わらずだ。
実は彼の体にとって食物から得られる栄養素は光学異性体であるため、
どれだけ食物を摂取しても栄養素をうまく吸収できないのだ。
彼の事故は業務中の労災であり、このままだと会社は彼を活かし続けるために、
鏡像異性体の食事を提供しなければならない義務を負っている。
莫大な金を使って、彼が死ぬまでずっとだ。そこで。。。」
ひょっとすると、この話も、既に時代遅れになってしまったのだろうか。
他にも「二重人間スポック」で、偽物を見分ける手段でも出てました。
偽物の方は自分で鏡像異性体を作って摂取してたんだと。
>固めてかき混ぜながら作るという、単純な方法で作り分けできるとは、驚きである。
しかし簡単にできなければほとんどの生物も困るわけで。
生物の細胞内でも、こうやって作っているのだろうか。
Re:ショートショート (スコア:3, 参考になる)
>SFショートショート(星新一かな?)
クラークではないかと.
#「明日に届く」に収録の「エラー」(原題:Technical Error)
>生物の細胞内でも、こうやって作っているのだろうか。
いえ,そんなことは全くなくて.
生物の場合は,元々ある光学異性の分子をテンプレートにして作るので,一方が選択的に出来ます.タンパクなどは光学異性も含めた立体的な構造がきっちり出来ているので,反対にはならないわけです.
逆に言えば,そう言ったテンプレート無しの状態で作り分けるのは非常に困難(というかほとんど無理)です.
Re:ショートショート (スコア:1)
おもしろそうなのでアマゾン見に行った。
「明後日に届く」そうだ。
#ただそれだけです。すいません。
Kindle三分間ショッピング (スコア:0)
Kindleのコレにも収録されていた。
The Collected Stories Of Arthur C. Clarke
http://www.amazon.com/dp/B00550NYDU/ [amazon.com]
これだったら3分で手に入るよ。
「文庫本2~3冊分くらいはあるんじゃね?」というボリューム感で、お買い得と思って思わず衝動買いした。
しかしそんなにボリュームがあれば読み終われるはずもないので、結局意味ないじゃん。orz
Re: (スコア:0)
星新一の方は、「君たちはこのままではエイリアンなんだ」の方だっけ?
あれも違う作者なんだろうか。
Re:ショートショート (スコア:2)
対消滅起こしていたんじゃないですか?
如何なる内容であろうとACでの書き込みは一切無視します。
Re:ショートショート (スコア:1)
>素粒子レベルで反転してたら対消滅起こしていたんじゃないですか?
元ネタで出てくるのはパリティ反転で,反粒子になるのはチャージの反転なんで,素粒子単位で反転してても大丈夫です.
Re: (スコア:0)
いえ、そのあと、対消滅するんですよ。
#しまったネタバレ
Re: (スコア:0)
対消滅じゃなく核融合ですよ。
Re: (スコア:0)
質量欠損といいたった?
Re:ショートショート (スコア:1)
実は近かったり。
生体内では酵素反応が主で、酵素は光学異性体を区別するってのが片側だけなことの原因なので。
今回の「かき回す」というのはある種の酵素に似た構造を作る行為に相当するのだろう。
酵素が光学異性体を区別するってのは、酵素は鋳型みたいなもので対象分子の立体構造を識別するから。
Re: (スコア:0)
受精卵が子宮に着床する前に回転するとかいう謎の現象を思い出した。あれがそうだったりして
Re:ショートショート (スコア:1)
そこらへんはよく知らないが、内臓逆位 - Wikipedia [wikimedia.org]
は、腹腔内部の形成で鞭毛が機能しないと内部の回転水流がおきなくて、発生するとかなんとか聞いたなぁ。
# 生殖(男性)と気管なりの鞭毛もやばいのでいろいろ大変らしいが
M-FalconSky (暑いか寒い)
Re:ショートショート (スコア:1)
そういえば戦闘妖精・雪風でもタンパク質が光学異性体で食事を消化できない話がありましたね。
そしてその後に出てきた食べられる食事の正体が…
Re:ショートショート (スコア:1)
Re:ショートショート (スコア:1)
味が同じわけないでしょ。
うまみのグルタミン酸やイノシン酸も糖類も光学異性体では違うんだから。
the.ACount
Re: (スコア:0)
早くアニムスの花を探しに行くんだ。
鏡の国のアリスにも (スコア:0)
アリスが鏡の中の牛乳をおいしくないというシーンがあったような、なかったような。
竹本泉「うさぎパラダイス」 (スコア:0)
もし (スコア:1)
ジャムがこのことを知っていたらリチャードは死なずに済んだかもしれない。
らじゃったのだ
これはひどい! (スコア:1)
元記事より。
>対称的な構造を持つ分子を、簡単に作り分ける手法を開発した。
→ そんなものは開発してない。当然作り分けてもいない。
>分子構造の左右の偏りを調べる手法を使い
→ 確かに分子構造の光学異性「も」見ることが出来る手法だけど、今見えているのはそれではない。
>医薬品や調味料などの分野への応用が期待できる。
→ 遠い未来には出来るかもしれないけれど、とりあえず直近には全く関係がない。
(まあ、これは基礎研究の常套句みたいなもんだからここはしょうがないか)
日刊工業新聞が変な理解をしてるのかと思ったら、大学のプレスリリース自体も変だな。
(でもある程度言葉を選んで、嘘にならないぎりぎりのラインを狙っている)
http://www.sut.ac.jp/news/news.php?20111027174659 [sut.ac.jp]
>分子の利き手 (キラリティー) の制御に成功しました。
→ これは嘘になってしまっている。分子レベルのキラリティは制御していない。分子の超構造としてのキラリティは変えてるけど。
>回転の向きを反映したキラリティーを誘起することができます。
ここはうまく言葉を選んでる。キラリティとだけ言っておけば、分子の超構造としてのキラリティだという言い訳も出来るから(ただしミスリーディングなのは否めない)
>さらに、このキラリティーを分子機能に転写することもできるため
ここも微妙なところだ。
論文では、分子の集団としての機能には影響を与えているが、1つの分子の機能(いわゆる分子機能)に影響を与えているという例は示されていない。この文章だけを読むとあたかもキラルな分子を作り分けられるような錯覚を与える。やっぱりミスリーディングじゃないか?
超分子キラリティ (スコア:1)
>分子の超構造としてのキラリティは変えてるけど。
のキラリティというのは「超分子キラリティ」というのと近い概念なんでしょうか?
超分子キラリティは分子が集まってできた超分子のキラリティ、ということかな。
超構造というのも分子の集合体の構造という意味でしょうか、あるいは高分子のような場合かな。
なかなか興味深い概念ですね。
シャペロンというのが頭に浮かびましたが、あんまり関係なさそう。
ミクロな渦で超構造が変化する、そのくらいソフトな構造変化が細胞内でも起こっているのか?
Re: (スコア:0)
>「超分子キラリティ」というのと近い概念なんでしょうか?
まあそんな感じで。
結晶のキラリティ(キラルな空間群)なんかは古くから知られた概念なんで、目新しいってわけでも無いけれど。
>超構造というのも分子の集合体の構造という意味でしょうか
集合体、と言って良いのかわからないけど、多数の分子をまとめて考えると、という事を言いたかった。
例えばフラーレンのような丸い分子だって、空間的に螺旋を描くように配置されれば、全体としてキラルになる、と。
極端なことを言えば、金属で出来たバネだって、個
うちの母に (スコア:0)
カタクリで餡かけの餡を作るときに、「一方向にだけかき混ぜろ」っていわれてましたが、
そういうことだったのか!
Re: (スコア:0)
フルーチェや納豆もどちらにかき混ぜるべきか調査が必要ですね!
Re: (スコア:0)
納豆のポリグルタミン酸はL体とD体が混在してるそうですが、混ぜる方向で偏りが出たりするんですかね?
Re: (スコア:0)
後学のために、どちらにかき混ぜればいいのかも教えてください。
Re: (スコア:0)
>カタクリ
この単語だけで物体Xを想像してしまった私は穢れている
しかも母から作り方を教わるなんて…
#右方向と左方向で感触が違ったら、使い分けるといいかもしれません
基準は何だ? (スコア:0)
> 時計回りか反時計回りにかき混ぜた。
基準が無ければ、時計回りも反時計回りもないような。
重力とか?
Re: (スコア:0)
重力以外にあるとすれば、かき混ぜてる場所と容器全体の位置関係、という可能性ですかね。
容器の底にスターラーチップ置いてかき回すときと、上から羽ぶら下げて液面付近でかき回すときでできる渦の構造が違うとかもあり得ない訳じゃないんで。
(微視的な原因は、マクロな渦に誘引されたミクロな渦構造のようなものと考えられてるそうです)
Re:基準は何だ? (スコア:1)
重力なんて関係なく、かき混ぜ始めた場所と液体全体の位置関係だけでしょ。
回転を始めた場所から中に向かってネジれるんだから。
the.ACount
Re: (スコア:0)
ネタかマジかわからない。かき回す人が基準でしょ。
いや、コリオリの力や地磁気(北極・南極)って可能性も捨て切れないか。
Re:基準は何だ? (スコア:3, 参考になる)
>かき回す人が基準でしょ。
そう言うことが聞きたいんじゃないと思いますよ.
#いや,回す向きの名付け方はそうなんですが.
例えば円筒形の容器に入った溶液を,「完全に軸対称」に攪拌したら,右回転でも左回転でもカイラリティには影響はないはずです.なぜなら,右回転してるものをそのままぐるりと180度回転(円筒をぐるっと上下反転)したら左回転になるから.円筒を上から見るか下から見るか,ということでもあります.
#それに対し,カイラリティは見る方向を変えても変化しない.
つまり,単に右回転と左回転ではカイラリティなんてものはないんですよ.
その回転にプラスして,さらに回転軸の上下を区別する構造があって初めてカイラリティが出てきます.
棒に対し,周囲を一周するリング状の溝が彫ってあってもカイラリティは出ないけど,溝をある方向に対して進む螺旋状にすればネジになってカイラリティが出てくるのと同じです.
だから,回転だけではなく,その回転軸の上下を規定する何かがないといけない.で,それは重力(に誘発された,攪拌によって生じる渦の上下非対称性)なり,攪拌の仕方による上下非対称性(上で攪拌するか下で攪拌するか)などが原因として考えられる,って事.
一点間違えた (スコア:2)
>完全に軸対称
見直したら,ここがちょっとおかしいですね.
軸対称な回転でもカイラリティは出せないことはない(軸の上下で回転速度が違うとか,軸の上下を区別できる方法がある)ので,これだと間違いですね.
正しくは,軸の上下で対称になってる回転,ですね.
#もっと厳しい条件だと,軸方向の並進に対して不変な回転(どの位置で切っても同じ速度の回転),とかも有り.
この条件だと,回転が上下対称=中心に鏡を置いた時と完全に等しいため,当たり前ですがカイラリティは出ません.
Re: (スコア:0)
まあ、重力でしょうねえ。
くさめを... (スコア:0)
ここまで、「太平ヨンの航星日誌」ネタなし。
残念だ
薬品製造への応用が期待される (スコア:0)
これすごいぞ。
R体は副作用あるけどS体にはないということが薬にはよくあるから
簡単に作り分けられるようになったら、薬が安くなる。
Re: (スコア:0)