パスワードを忘れた? アカウント作成
2771334 story
アメリカ合衆国

米物理学者、米国物理学の将来を悲観する 28

ストーリー by hylom
いっぽう日本は 部門より
taraiok 曰く、

米物理学者Steven Weinberg氏による物理学の将来を悲観した記事「The Crisis of Big Science」が話題を呼んでいる(本家/.)。

この記事は「The New York Review of Books」に掲載されたもの。内容としては次のようなものである。

2011年は原子核発見から百周年、ヒッグス粒子の存在への道筋も見えてきた年でもあった(/.J過去記事)。

1911年の「Ernest Rutherford」による原子核の発見は、ロンドン王立協会のわずか70ポンドの助成金によって支えられていた。彼の研究に必要不可欠なラジウムはオーストリア科学アカデミーから貸与されていたのでこの予算でも成り立っていた。そして、この原子核の発見から核物理学は「ビッグ・サイエンス」となった。

物理学の発展には予算が必要だ。だが、アメリカの素粒子物理学の見通しについてはかなり悲観的だ。

アメリカでは新世代の粒子加速器「SSC(Superconducting Super Collider)」計画が1993年に頓挫し、その後に設立された欧州合同原子核研究機関(CERN)のLHC(大型ハドロン衝突型加速器)によって、アメリカはヒッグス粒子関連の研究で追い抜かれた。これと同じ予算の縮小が「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」にも起ころうとしている。

Steven Weinberg氏は、LHCでもしヒッグス粒子の存在が確認されたら、次は新たなステップに行かなければ素粒子物理学の「ビッグ・サイエンス」は来ない。同様のことが宇宙論についても言えるとしている。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by lazy_chain (35875) on 2012年04月26日 9時17分 (#2143050) 日記
    世界最長の電子線形加速器をもつ米国の SLAC [wikipedia.org]は
    高エネルギー物理で 3つのノーベル賞を排出した施設ですが、
    おそらく予算面の厳しさもあって高エネルギー物理から放射光
    を用いた研究のための施設にシフトしてしまいました。

    SLACのLCLSは日本のSACLA [riken.jp]に先駆け、世界初の
    X線自由電子レーザーの発振に成功しています。
    • by Anonymous Coward

      ×排出
      △輩出
      ○受賞者を輩出

  • by Anonymous Coward on 2012年04月26日 6時58分 (#2142998)

    物理学やアメリカに限らず、他の分野や日本でも、それどころかアレゲな人が集まる/.Jでさえ、こういった話は珍しくない気がしますが。
    基礎研究なんてお金にならない分野はやるべきではない、宇宙開発や核融合だとか、いつ芽が出るのか判らない技術にお金を賭けるべきではない、とか。

    予算が有限である以上そういう話が出るのは仕方がなく、選択と集中というのは一つの戦略ではあるわけですが、だからといってどこまでカットしてよいのか?それは本当に研究しなくてよいものなのか?というのは日々考えさせられます。

    # ただし、カットして他の研究に回せ・・・は理解できるが、カットして国民にばら撒け論については、お前らそれで10年後もこの国が食っていけると思ってるのかと突っ込まずにはいられない。

    • 物理学のなかでも高エネルギー物理学は、基礎研究の中では突出した存在だと思いますよ。

      LHCの建造には日本円にして5000億円超が投じられてますし、米国で頓挫したSSCは1兆円とも
      言われてましたから。これほどの金額を設備に投じる必要がある基礎研究は物理学の他にないんじゃ
      ないですかね?
      で、核融合はどちらかと言うと見返りを期待する応用研究の分野になるんじゃないかと。基礎研究が
      深く関わってるもののエネルギーを得るという実利が最終目標ですから。宇宙開発は微妙な
      ポジションですね。衛星のような商業利用がある一方、探査のような利益にならないものもあるので。

      素粒子の研究がこれらに比べて特異なのは、見返りが得られるかわからないこと、得られる成果が実利に
      結びつくかどうかもわからない中で、多額の投資が行われてきた、という点だと思います。
      その投資を支えてきた理由の一つが国家安全保障だそうな、というのは他のスレッドに書いたとおりです。

      素粒子の領域を調べようとすればするほど、高エネルギーが必要になり、いずれ限界が来ますから
      金をカットするというより、次のステップは実現可能性というレベルで語られるべき領域に入っているのかな
      という感じですかね。

      親コメント
    • by Anonymous Coward on 2012年04月26日 11時39分 (#2143170)

      本来は科学の基礎研究や社会の発展のためにこそお金を集めるべきであって、
      安全保障だとか社会福祉のような必要不可欠な分野に充てる分を切り詰める
      のが国家組織を含めた社会運営における「選択と集中」の目的だと思います。

      絶対的な安心とか、無限の幸福のためにいくらかけても無駄なことは誰もが判っ
      ていはずなのに。

      親コメント
    • by Anonymous Coward

      > 基礎研究なんてお金にならない分野はやるべきではない、

      タレコミの件はこれが主な話じゃなくて、純粋に「次のネタが無くなるよ」という話なんじゃないでしょか。
      19世紀末にも似たようなことが言われていたはずなんですけどね…

      • by Anonymous Coward

        タレコミを読んだ限りでは、元記事の意図は、アメリカが他の国や地域(たとえば欧州)に負けるということだと思いました。

        • by Anonymous Coward

          > タレコミを読んだ限りでは、

          それはそれとして、ヒッグス粒子の次のネタって具体的に見えつつあるんですかね。
          興味はある。金はないけど(←当たり前)。

          • by Anonymous Coward

            超対称性パートナーの一番軽いやつとか
            ステライルニュートリノとか
            比較的大きな余剰次元の影響とか

    • by Anonymous Coward

      基礎分野ではなく応用分野でさえも、例えばムーアの法則を支える半導体分野でも、
      研究開発費や世代更新の投資が大きく膨らんで(といっても宇宙や素粒子物理ほどじゃないですが)
      多くの半導体メーカーでは持ちきれなくなり、世界の数社しかついていけなくなってます。

      今後、どこまで膨らんでいくんでしょうね。

      • by Anonymous Coward

        半導体については、数年~数十年期間の具体的なビジネスに結びついた研究なので、
        単に金額が肥大化しすぎて回収できるかどうかの判断が難しいというだけの問題です。

        素粒子やら宇宙論やらは、具体的なビジネスの話を描ける前段階の研究であり
        回収を前提とした投資の話ができないため、予算縮小の妥当性が測れないという問題です。

        • by Anonymous Coward

          > 予算縮小の妥当性が測れないという問題です。

          違うと思いますよ。
          物理学の研究も必要コストが膨らみ続けているのが現実でしょう。
          規模が大きくなり過ぎて、今はもう「わずか70ポンドの助成金」では何も出来ない。

          お金を集めるために研究のペースが落ちるのは、研究者にとっては不本意でしょうが、どうしようもないですよね。

  • 原子核の発見から、相対論も量子力学も今の産業に欠かせない技術になってるわけで。 宇宙開発にしても、月に到達、さあ次は・・・→すぐに役に立つ人工衛星技術以外は置いてけぼり、だったし。

    これまでは未知の領域へ投資しても割と早めに見返りがあったのでそれなりに回ってたけど、 最近、見返りがありそうな気配すら見えなくなって来てるので、投資が見込めなくなるんじゃないか、やばい、みたいな現状に思える。
    • そうですね。

      SSCの計画がぽしゃったとき、米国で戦後、物理学、中でも素粒子の分野に多額の資金が投じられたのは
      原子の研究を始めとする物理の基礎研究から原水爆という超兵器が作られたという事実が背景にあり、
      国家安全保障が物理学への投資のモチベーションになっていたことが何度か指摘されてました。

      その後、ソヴィエト崩壊を経て、ビッグサイエンスの新発見で国家安全保障を脅かすような
      敵が見当たらなくなったこと、さらに先端のビッグサイエンスから今までなかったような超兵器
      が生み出される可能性はゼロではないにせよ限りなく小さくなっているといったようなこともあるので、
      物理学への投資のモチベーションはさらに低下してるだろうと思われます。

      どちらにしても、LHCを超えるような加速器を建造するのは途方も無い金が必要ですし、最終的には
      地球上で実現可能なエネルギー領域が高エネルギー物理学の限界になるということもあって
      いずれ終りが来るものでしょう。国家国民に資金を負担してもらうことができる限界というのもあ
      りますからね。

      というようなわけで、これからは宇宙を丹念に観測することで、地球上では起き得ない高エネルギー
      現象を探して、それをさらに調べることで新たな知見を得るというように、ビッグサイエンスに頼らない
      研究の方向に進むしか無いのでは、といったような話はちょっと前からされるようになってるようです。

      更に言うと、基礎的な物理理論というのもそろそろ限界なのかもしれません。現時点で、すでに
      上は宇宙スケールから、下はTeVスケールまで、それなりに機能する理論を手にしているわけで、
      スケールにして2メートル足らずの人間が必要とする基本理論はほぼ手にしており、また
      人間スケールで手に入れられる理論はほぼ手に入れてしまったのかもしれないとか。
      そんな悲観的な見方もありかもしれませんね。

      親コメント
  • by Anonymous Coward on 2012年04月26日 6時36分 (#2142996)
    同情するなら金を出せ!
  • by Anonymous Coward on 2012年04月26日 7時00分 (#2142999)

    よりコンパクトな加速器を目指して [aat.kek.jp]開発中のこと。
    先日、レーザー核融合 [at-s.com]の件でも話題になったけど、
    フロンティアはまだまだあるのだなあと思った。

  • by Anonymous Coward on 2012年04月26日 7時15分 (#2143004)

    カネが使えるようになるまで実験はお休みね、でいいんじゃないの?
    ヒッグス粒子が発見されたところですぐにカネになるわけでもあるまい

    • 一日休むと取り戻すのに三日かかる、とかの世界なんですよ、きっと。
      親コメント
      • by Anonymous Coward

        電話一本の対応をすると、もとの集中を取り戻すのに何十分もかかるもんです。
        現場を離れたらもとに戻すまでどれだけ要するのやら。

    • by Anonymous Coward on 2012年04月26日 13時29分 (#2143297)

      このクラスの実験の世界で最も重要な要素である人材は、使われなくなれば散逸して失われてしまいます(SSC で実際に起きたことです)。

      一方、有用な人材というのは、単に技術や知識を持っているだけでは全く駄目で、使うからといってすぐに育成できるわけではありません。研究に臨むスタイル、他研究者との価値観の共有、メーカーや政治家など多方面へのコネクションなど、不断の継承によってのみ維持しうるものが不可欠です。技術分野では先進国に追いついた旧発展途上国が基礎研究分野で後れを取るのは、単に予算配分の問題ではなくて、世界に伍する人材が一朝一夕には獲得しえないからなのです。

      親コメント
    • by Anonymous Coward

      加速し続けなければ呼吸ができないとかじゃないですか。

    • by Anonymous Coward

      使おうと思ってすぐ始められる程身軽な分野ではありません。
      10年かけて設計・開発、10年かけて建設、10年かけて解析
      さらにこの期間中、常にカネを投入して技術革新を続ける必要があります。
      逆にこの期間の全てにおいて一定の技術的フィードバックは得られます。
      それをカネにするか(できるか)どうかはまた別問題ですが。

  • by Anonymous Coward on 2012年04月26日 7時17分 (#2143007)

    国家予算全てを注ぎ込んだって最新の加速器1つ作れない時代はもうすぐそこなんですね。

    • by Anonymous Coward

      ちなみにLHCの総建設費は、たったの数千億円です。

      • by Anonymous Coward

        ではそのたった数千億円を、
        ・LHC
        ・ITER
        ・京を半ダース
        ・ちきゅうの大艦隊
        ・新炉型原子炉の実証炉
        ・数十発のH-IIAと宇宙機
        等々のどこへ使うか考えないといけませんよね。

        • by shibuya (17159) on 2012年04月26日 23時08分 (#2143665) 日記

          ITERは実質フランスへの供与なのだから同じ枠の財布からでないような気がするけど、それを数千億円の予算の一部にまとめあげる手腕の官僚・政治家・愛国的政商がいたらそのお手並みを見たい気がする。リストのそれ以外の項目にも怖いもの見たさ感はあふれまくる。

          親コメント
  • by Anonymous Coward on 2012年04月26日 22時11分 (#2143629)

    どうして科学者の方々はこういう場で「科学的な説明」をしないんでしょうか。
    お得意の論理やグラフを用いて客観的な理由付けをすべきと思うのですが、
    ソースのようにやや「感情的」や「感覚的」な主張が多いような気がします。

    何ででしょうね。

    • by Anonymous Coward

      科学はロマンだから

      冗談でも何でもなく、モチベーションは感情や感覚から始まります。
      その後の理由づけ(例えば何故ヒッグスを見つけなければならないか)なんて、
      個別のテーマごとに幾らでもありますよ。

typodupeerror

にわかな奴ほど語りたがる -- あるハッカー

読み込み中...