パスワードを忘れた? アカウント作成
7043148 story
サイエンス

絶対零度よりも低温の (と表現することが可能な) 量子気体が作り出される 23

ストーリー by reo
タイトルの代替案募集中 部門より

ある Anonymous Coward 曰く、

ミュンヘン大学の研究者らが、絶対零度より低温の量子気体をつくり出すことに成功したそうだ (WIRED.jp の記事DOI: 10.1126/science.1227831 より) 。

という話題になると「物理の法則が乱れる!」といった見出しをつけて煽る方のが世間的の流行に追従する感じでイイのかもしれませんが腐れてもわたしたちは /.Jer ということで、このあたりのコメントからのツリーに詳しいです、と phason 氏の解説に丸投げさせていただきます。生物物理計算化学者の雛の記事にも詳しいですが、ボルツマン因子に負の温度を与えた時のエネルギー分布 (エネルギーの高い状態の占有率の方が,エネルギーの低い状態の占有率よりも高くなる) を運動の自由度で実現した、ということらしいです。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 0 K. 絶対零度、あらゆる原子の運動が停止。フィンランド人は「くそっ、今日はまたずいぶん寒いじゃないか!」と言い始める。

    -0 K. マイナス絶対温度、一部の原子の運動が重力に逆らい始める。フィンランドでは家庭の冷蔵庫が普通に実現している温度。 ← **New!**

    -27 K. 摂氏マイナス300度、地獄が凍結。(※これは2006年に記録済み [aljazeera.com]で、ヨーロッパ全土を大寒波が襲い大騒ぎになりました)

  • 雑記その1 (スコア:5, 参考になる)

    by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2013年01月08日 12時20分 (#2302140) 日記

    この論文,一度日記で取り上げようかと試みたんですが,まじめに解説してたら「温度とは何か?」の部分だけでとんでもない長さになったんで断念.温度って,とても身近な物理量のくせに物理的にきちんと説明しようとすると面倒なんですよね……

    そんなわけで多少厳密さを省きながら,ポイントだけ列記.

    1. 温度とは何か?
    温度って何?って話は実はとても面倒くさい話になります.
    (ですのである程度は前野先生のページ [nifty.com]あたりにぶん投げちゃいます)
    いろいろな表現のしかたはあるのですが,「温度」というのは「エネルギーの分配のしかた」だと思ってください.ここで,たくさん粒子がいる系を考えましょう.この粒子は準位として,内部エネルギーが0(基底状態),E,2E,3E……と,離散的な励起状態を持つとします.

    最低温度(0 K)は全粒子が最低エネルギー(0)にいる状態です.ここにちょっとエネルギーを加えると,一部の粒子がEに励起されます.ですが大部分は0にとどまったままですし,偶然2Eのエネルギーが集中した,という高い励起状態の粒子もほとんどいません.これが非常に低温な状態です.

    粒子の集団にもっとたくさんのエネルギーを与えていくと,Eのエネルギーの粒子が増え,さらには時々2Eのエネルギーだったり3Eのエネルギーを持つ粒子も出てきます.これが温度の高い状態です.しかし個数で見れば,最低エネルギーである0にいる粒子が一番多く,エネルギーの大きい粒子ほど少ない,という傾向は変わりません.これをきっちり数式で表すとボルツマン分布(エネルギーがE高い粒子の個数は,exp(-E/kT)倍に小さくなる)になり(kはボルツマン定数,Tは温度),逆にここ(=エネルギーの異なる粒子を見出す確率の比)から温度を定義できるようになります.

    では温度が極限まで上がっていくとどうなるでしょうか.ボルツマン分布に「非常に大きなT」を代入するとわかるように,この時はあらゆる準位がほぼ等確率で実現します.つまり,ある粒子が0のエネルギーを持つ確率とE,2E,3E……である確率が等しくなります.ここが温度無限大の極限です.つまり「温度が高い」,というのは,「エネルギー差をものともせず,様々な状態が似たような確率で実現する場合」と表現できます.
    ただし注意点として,温度がどんなに高くても存在確率の一番大きいのはエネルギー0の状態になる,と言う点は変わりません(温度無限大の極限でだけ確率が等しくなるが,最低エネルギーの占有率の方が低くはならない).

    2. 負の温度とは何か?
    前項で見た通り,温度がゼロから無限大までの全領域において,1つの粒子を取り出した際に見つける確率が一番高いのは「エネルギーが0の状態」です(*).

    *ただし,エネルギーEを持つ似たような状態がN個あると,トータルでの「エネルギーがEである確率 / エネルギーが0である確率」はN×exp(-E/kT)になるので,そこまで考えれば「エネルギーが0という1つの状態をとる確率」より,「エネルギーがEであるN個の状態のどれかをとる確率」の方が高くなったりします.が,話が煩雑になるので以下ではその効果は無視.

    ではもし,エネルギーが高い状態の方が数が多い,と言うことになったらどう表現できるのでしょうか?ここではさらに簡単のために,各粒子はたった2つの状態しか持たないとします.つまりエネルギーが0か,+Eか,という2準位です.温度無限大の極限では,全粒子N個の粒子の半分=N/2個がエネルギー0で,残りのN/2個がエネルギーEとなっています.これはボルツマン分布に温度無限大を入れるとエネルギー0とEが等確率になる事からも確認できます.では今度は,この集団に(何とかして)さらにエネルギーEを押し込んだとします(実はこれを実現するにはいろいろトリッキーな手法が必要なのだが,今それは無視).
    すると今度はエネルギー0の粒子がN/2 - 1個,エネルギーEの粒子がN/2 + 1個となります.この状態を無理矢理ボルツマン分布で表現すると,exp(-E/kT)のTとして負の値を代入したものに相当します.式から明らかなように,負の値を入れるとエネルギーの高い方が確率が高くなりますからね.こういった状態を,「反転分布」(通常はエネルギーが低い方が確率が高いのに,それが反転している分布)と呼びます.レーザー発振では必須の分布で,レーザーの本を読むと必ずこの反転分布が記載されています.で,この「エネルギーが高い状態をとる確率の方が高い分布」の状態を無理矢理温度で表現したものが「負の温度」となります.

    3. 負の温度と普通の温度の関係
    上に示した例からわかるように,「負の温度」というのは絶対零度の下ではありません.実は「負の温度」というのは,「温度無限大のさらにその先」というような状態です.系にエネルギーを注入していくと,温度がどんどん上がって温度無限大に達し(現実にはそこまでエネルギーを注ぎ込むことは無理),さらに(実際には無理だけど)エネルギーを注入できれば「マイナス無限大の温度」に突入,そこからさらにエネルギーを増していくと温度がどんどん上がって-0(0に極限まで近いマイナス)に到達します.
    ところが当たり前の話として,通常のエネルギーの流れは「温度の高いもの → 温度の低いもの」です.そのため単純に系にエネルギーを加えていくだけでは温度無限大の壁を突破できません.そのため負の温度(反転分布)を作るためにはいろいろトリッキーな操作が必要になります.

    長くなったので一度分割して,今回の実験に関しては続きに記載.

    • Re:雑記その1 (スコア:5, 参考になる)

      by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2013年01月08日 12時25分 (#2302142) 日記

      続きです.

      4. じゃあ,今回の実験は何が新しいの?
      反転分布と負の温度は既知の現象です.では今回の話の何が新しいのかというと,それを運動の自由度方向で実現した,と言う点です.
      またまたやっかいな話になるのですが,実は温度というのは異なる自由度ごとに分離して異なる値をとることが可能です.例えばガスで,並進の温度は非常に高い(分子の飛んでいく速度の分布は幅を持っていて温度が高い)けど,振動温度は非常に低い(分子内の振動はほとんど励起されていなくて,ほぼ全てが最低振動状態にある)などです.これまでに作られた多くの反転分布は,原子や分子の内部励起を用いていて,電子励起だけに注目した場合の温度が負,とかそういう感じになります.例えば分子の集団を持ってきたとき,その各分子中の電子は高い準位にいる確率が非常に高い,とかです.こういう状態が作りやすいのは,内部励起状態が非常に離散的で,実質的に上の順位が無視できたりするためです.例えば一番下の2つの準位だけ見ると,上の方に分布している数が多い,とかそんな感じです.真の意味での負の温度だともっと上の状態はもっと多く占有されていないといけないのですが,「準位間のエネルギー差が大きくてずっと離れているから,まあ上の準位は今のところは見なかったことにしよう」と下の準位だけに注目して「負の温度」としているわけです.

      ところが「粒子の運動(並進運動)」の方で負の温度を実現しようとすると,なかなかやっかいな状況が判明します.何度か述べた通り,負の温度(反転分布)ではエネルギーの高い状態の方がより多く占有されています.ところが困ったことに,「運動」というのは準位の離散化が小さく,準位間の間隔が非常に接近しているのです.そのため「上の準位は無視して~」と言うことが言えません.
      じゃあ目に付く全準位で反転分布にすれば良いじゃないか,というと,今度は「上の準位ほど占有確率が高い」という負温度の条件が襲いかかってきます.速度は速ければ速いほどエネルギーが高く,しかもエネルギーの上限は事実上ありません.この状況で,「上の準位を無視せずに負温度を実現しよう」と思い「エネルギーの高い順位ほど確率を上げて……」とやると,占有確率が上の方で発散していきます.つまりほぼ全粒子が無限大のエネルギーを持つ,と言うような無茶な状況が要求されてしまうわけです.

      5. では今回はそれをどうやって実現したのか?
      そこで今回,著者らは運動のエネルギーに上限を作りました.どうやったのかというと,格子を組ませてバンドを作ったのです.
      電子で考えてみましょう.電子は結晶のような周期的なポテンシャルの存在下では,「バンド」と呼ばれる(ほぼ)連続的な状態をとります.価電子帯,伝導帯とか言って,金属と絶縁体を分けているもとになるあれです.バンド構造もよく見ればギャップを挟んでさらに上のバンド,そのまた上のバンド……と無限に続いていくのですが,ギャップに隔てられた1つのバンドだけを見ればエネルギーに上限が作られています.これはレーザーなどで使う反転分布(負の温度)において,「本当はもっと上の準位もあるんだけど,エネルギー差が大きいからそこは無視して2つの準位だけで負温度と呼ぶ」と言うのと似た状況です.
      使ったのは電子ではなく39K原子ですが,原子であっても周期ポテンシャル中にうまいこと閉じ込めれば波動として全体に非局在化したような状態となり,バンドを組みます.ただしこいつが電子と異なるのは,電子がフェルミオン(1つの状態には1粒子しか詰まれない椅子取りゲーム)なのに対し,39Kはボソン(1つの状態に何個でも詰めこめる)だと言う点です.このため,39Kはバンドの底を全粒子が占めた様な分布を作ります(電子だと,席が埋まってしまうのでどんどんバンドの上の方まで詰まる必要がある).
      さてこの39Kを閉じ込めているポテンシャル,レーザーによって作られています.最初に作るポテンシャルは「格子点の位置でエネルギーが高くて,その中間でエネルギーが低い」と言うようなポテンシャルにしておきます.これは結晶中の電子(格子点の位置でエネルギーが低い)とは反対ですね.すると39K粒子にとっては「格子点を避け,ちょっと離れた部分を移動しているような分布」がエネルギーが低くなり,そういう状態をみんなで占めているわけです.
      そういった分布が実現した後に,レーザーをちょっといじってやってポテンシャルの形状を反対にひっくり返します.つまり「格子点の位置でエネルギーが低くて,離れた位置でエネルギーが高い」です.39K粒子の運動はレーザーの変調よりも遙かに遅いので追随できず,バンドの底に居た39Kは気がついた時には突然バンドの頂点に押し上げられていることになります.つまりこの39Kは,「バンド構造」において高い順位ばかりを選択的に占めている,と言う状況=運動量空間における反転分布(=負の温度)に叩き込まれたわけです.

      なおこうして作成された「運動量空間における反転分布」は迅速に崩壊して「まっうな」分布に戻っていくため,寿命は数十ミリ秒程度となっています.

      *実際には同時に,39K原子間の相互作用も斥力から引力になるような変調をかける.反発が勝つ状況だと,「近づけば近づくほどエネルギーが高い」というようにエネルギーの上限がなくなってしまい,反転分布が作れなくなるため引力であることが必須になる.

      親コメント
    • by Anonymous Coward on 2013年01月08日 12時46分 (#2302170)

      反転分布のことを「負温度」と呼ぶメリットは何でしょうか。紛らわしいだけのように思えます。

      「温度」は、エネルギー分布が定義できる(多数の粒子がある)系で、その分布が自然な分布
      (ボルツマン分布なりマックスウェル分布なり)に従っている場合に初めて定義できるものですよね。
      エネルギー分布が変な形をとるときには、ふつう、温度は定義できません、と言います。

      反転分布も「自然な分布」ではないですから、温度を定義したり「負温度」と呼ぶことそのものに、
      すごく違和感があります。百歩譲って、ボルツマン分布の式の温度に負の値を入れたときの
      分布と正確に一致する場合(エネルギーが発散するので絶対に実現できない)にのみ
      「負温度」という言葉を使ってもいいかも知れませんが、たんなる反転分布で「負温度」と呼ぶのは、
      そのほかの(温度が定義できない)「自然な分布でない分布」がかわいそうです。

      しかも、反転分布はおっしゃるように、無理矢理エネルギーをつぎ込んだ状態(直感的には温度が
      高そうな状態)ですから、直感的にも「負温度」と呼ぶのは違和感があります。

      それにもかかわらず、反転分布のことを「負温度」と呼ぶからには、なにかメリットがあるのでしょうか。
      たとえば、温度が仮想的にマイナスだと考えることによっていろんなことが説明できるとか、
      いろんな公式がそのまま使えて便利だとか。

      親コメント
      • Re:雑記その1 (スコア:5, 参考になる)

        by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2013年01月08日 14時42分 (#2302272) 日記

        注:統計・熱力は(道具として使うものの)あまり専門ではないので,以下,変なことを言っている可能性があります.そのまま信じないようお願いします.

        >紛らわしいだけのように思えます。

        一理あります.実際に,似たような理由で負温度という言葉を使わない方もいらっしゃいます.
        ただ,

        >エネルギー分布が変な形をとるときには、ふつう、温度は定義できません、と言います。

        と言う点に関しては,(準)平衡状態にある負温度の系,と言うものが知られています.
        代表例がスピン系です.スピン系は準位が離散的(1/2スピンだと2準位しかない)なうえ,スピン間での相互作用以外の相互作用が弱く(特に核スピン系),さらにスピンの反転は光学的には禁制なので光を放出しての緩和もできません(実際には微妙に禁制が解けるので,ゆっくりとは緩和できる).
        磁場中にスピンを置くと熱平衡に達しますが,そこで磁場だけを反転させると分布が完全に反転した系が得られます.ところがスピン系は孤立性が高く外部にエネルギーを放出して低エネルギーに緩和するのに非常に時間がかかるため,短い時間スパンでは事実上負温度のまま平衡に達します(もちろん,超長時間放置すればゆっくりと外界とエネルギーのやりとりをして正の温度に戻る).

        こういった系の統計力学というものがずいぶん昔(5-60年ぐらい前?)から理論・実験の両面でいろいろ研究されており,その結果こういった系でも熱力学の各種の法則は保たれていることなどが示されました.
        ただし負の温度は到達不能点である+∞よりも大きいと考える必要があり,低い方向の極限である-0の絶対零度と,高い方の極限である+0の絶対零度はともに到達不能点である,という事になります.

        と言うわけで流れとしては,

        ・通常の温度では実現できない変な(準)平衡系が存在する.
        ・既存の熱力学の枠組みをできるだけ維持したままそういう系を扱おうとすると,単純に温度を負に置くのが良い.
        ・+∞の向こうに-∞があるのは変だが,そこには目を瞑る.どうせ∞の点は到達できない特異点なのだから,そこでの接続は気にしない.

        とかそんな感じでしょうか.

        >たんなる反転分布で「負温度」と呼ぶのは、
        >そのほかの(温度が定義できない)「自然な分布でない分布」がかわいそうです。

        まあこれもまた一理あるのですが,準平衡である程度の時間安定して存在しているのなら,どんな分布であってもそこでの温度は定義できるはずです.∂S / ∂E = 1 / Tがありますので,こっちで出せるかと.
        ですから言ってしまえば,他の「変な分布」であっても,それが(準)平衡状態で成立するのならば,そこでの温度として負温度を用いることには何の問題もないと思います.

        >反転分布のことを「負温度」と呼ぶからには、なにかメリットがあるのでしょうか。

        そういう変な分布も世の中に実在していて,そういう系も含めて一つの同じ「統計.熱力学」と言うもので扱おうと考えたときに収まりが良くなる,とかそういう感じなのでは.
        確か理論の枠組みを変えずに,様々な統計的性質はそのまま扱えた……はず.
        ただしいくつかの(旧統計力学における)理論的帰結は,前提としている仮定(要は正の温度で必ず実現している条件)があったりするので,そういうのに関しては成立しなくなりますが.
        統計・熱力も扱う範囲を次第に拡張しながら来ており,負温度もそうですが,そもそも平衡状態でのみ定義されていた「温度」と言うものを非平衡定常系でも適用できるように拡張したり(まあ,我々の身の回りは全て非平衡状なので,昔の厳密な定義では宇宙のどこでも「温度」は定義できない,なんて困ったことになっちゃいますしね),将来的には完全に非平衡な系も扱おうとしていたりとしていますので,そういう拡張政策(より広い対象を,同じ原理で取り扱う)の一環と思っておけば良いんじゃないでしょうか.多分.

        親コメント
        • by Anonymous Coward on 2013年01月09日 4時12分 (#2302655)

          コメントの要旨:温度も分布関数も金科玉条ではない。

          おそらく多くの理解の混乱(良い意味でのものも含めて)は、温度の定義の違いにあると思います。基本的に物理学では温度は巨視的にはエネルギーのエントロピーに対する偏微分で定義され、微視的には原子の(集団)振動で定義出来ます。これらは統計熱力学が親コメの仰る範囲で温度の定義に関して確立している現在、微視的な定義がよりはっきりとした定義になっていると思います(但し定義は唯一とは言っておりません)。他方、そのエントロピーや統計熱力学の成立前から実生活で温度は定義されており、水銀柱(古いか)あるいは水の凝固点・沸点あるいは体温で定義されています。実生活あるいはその少し延長の場合には物理学上の温度の定義と実生活の温度の定義が合うので普段は不思議に思いませんが、実際には両者の定義が合う必要性もありません。水銀温度計で8000度Cを計れるかと言えば計れないのでこの方法では定義不可能です。知りうる熱電対でも同じで、2色温度計では原理上測定できるかもしれませんが、その範囲でその「装置・器具」の精度は保証されていないように思えます(その前に輻射で燃えるような)。いずれにしても測定方法に依存します

          さて、他方の分布関数の方ですが、フェルミ・ディラック分布やボース・アインシュタイン分布の定義にも温度は入って来ます。従ってその古典近似であるボルツマン分布も同様です。

          それゆえ、私には./Jerの範囲では、温度と分布関数は鶏と卵の関係で、分布関数を決めたなら温度が0ケルビンを下回るのは不思議でなく、それはそのような温度と分布関数という道具を使っているからと言うように思えます。

          具体的に今回の現象がどうであるかについては、親コメや他ツリーに詳しい説明があり、現象論的には「単にこういうことじゃないの?」と言うことに関しても「なるほど、勉強になった」という意見以外はありません。

          最後に、ACなのでスコアを上げれませんが、親コメ群は非常にバランスの取れた分かりやすい説明ですね。勉強になりました。

          親コメント
        • by Anonymous Coward

          負の温度ってのはコンピュータにおける負の数の補数表現みたいなもんなんですね。

        • by Anonymous Coward

          +∞の向こうに-∞があるのは変

          例えば数学中毒な人なら、何の違和感もなく「ああ、温度ってのは実数値(R-値)じゃなく、RP 1R-値なのか」で納得する気がします。相当不正確になりますが、平たく言えば「直線=半径無限大の円、これはガチ」と言う感じで。

    • by Anonymous Coward

      負の温度とは何か…は、イメージとしてはなんとなくつかめた気がします。
      で、それはたとえばそれを利用することで第二種永久機関をつくれたりするものでしょうか?
      http://sustainablejapan.net/?p=3407 [sustainablejapan.net]
      を見ると効率100%を超える熱機関がつくれるとか書いてあるのですが…。

      • Re:雑記その1 (スコア:3, 興味深い)

        by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2013年01月09日 9時04分 (#2302724) 日記

        >効率100%を超える熱機関がつくれるとか書いてあるのですが…。

        あー,昔ランダウの統計・熱力か何かで同じような説明を読んだような……
        うろ覚えですが,

        ・負温度の系を使って,そこと他との間の熱のやりとりだけを見るとカルノーサイクルの効率を超える.
        ・ただしこの「仕事の引き出し」により系の状態が変わるので,そのまま繰り返す事はできない.

        とかそんな感じだったような.
        つまり外部からエネルギーを与えてあらかじめ負の温度の系を作っておくと,そいつと他の熱浴との間の熱のやりとりを「単発で」回したときの効率が100%を超える,ただしもう一度同じ事をやるにはまた外部からエネルギー加えて負の温度を再構築してね,って感じだったかと.

        (記憶が確かならば)事前に外部からのエネルギー投入が必要なんで第二種永久機関とかは作れないんですが,純粋にに「熱力学を極める」という観点から昔それなりに研究されていたはず.
        と言うのも(上のコメントでちょろっと触れましたが)熱力学の理論展開の中には「温度が正」を暗に仮定しているものがいくつもあります.で,「負温度の系まで発想を広げると,そう言ったものにどんな修正が必要になるのか?」と言うような興味で研究されたわけです.

        親コメント
  • by Anonymous Coward on 2013年01月08日 12時10分 (#2302134)

    元論文にもきちんと「マイナス温度は過去からある概念」ということは書いてあるようですね。

    マイナス絶対温度を実現した元論文のアブストラクト抄訳&解説
    http://d.hatena.ne.jp/masa_cbl/20130108/1357614160 [hatena.ne.jp]

  • by Anonymous Coward on 2013年01月08日 11時19分 (#2302098)

    > エネルギーの高い状態の占有率の方が,エネルギーの低い状態の占有率よりも高くなる

    これって、いわゆる反転分布のこと?レーザーのために必要な前提条件ですよね。
    それ自身は、とくに新しくないと思うんだけど。

    リンク先のリンク先 [wikipedia.org]には、「反転分布は(便宜上)負温度とも呼ばれる」ともあるので、負温度と反転分布は同じ物ですね)。

    • 私も反転分布が最初に頭に浮かびました。
      最初に講義で聞いた時「負温度ってナニ?」って思ったっけ。

      「絶対零度より低温の量子気体をつくり出すことに成功した。」とあるので
      「反転分布状態で安定している物質」を作ったってことですかね。

      なんかのトリガーでエネルギーを放出するとしたら新たなエネルギー蓄積システムができたりヘタしたら爆弾に応用されたりして。

      親コメント
      • by Anonymous Coward

        これって要はボルツマン分布じゃうまく説明出来ない状態ですよって話?
        「エネルギー放出云々」って事は絶対零度よりエネルギー密度が低いと言うわけじゃないと言うことでいいんですか?

  • by Anonymous Coward on 2013年01月08日 12時58分 (#2302187)

    実はカル=スはダークシュナイダーに勝てたかも知れない ってことでいいのかな?

    • by Anonymous Coward

      上の説明みると、むしろ温度無限大をGENKAI TOPPAしてるような記述なんで、
      余計勝ち目なくなるんじゃないか?

  • by Anonymous Coward on 2013年01月08日 16時48分 (#2302347)

    冷凍ビームはいつ出来るの?

  • by Anonymous Coward on 2013年01月08日 17時32分 (#2302397)

    どんどん上にいくと、
    下から出てくる。

  • by Anonymous Coward on 2013年04月07日 13時24分 (#2358573)
    はじめてのカキコでございまして、状況などなにもわかってない者でございますが・・ ちょっと統計について言いたい サイコロのような物理的対称性があって、1/6と予測できるものが確率の対象になるのだと思う 同じ試行が繰り返し行えるというのだけが確率の前提条件ではない 統計で占いの的中率を考えるのは自由ですが、それに対して確率の考えに基づいて未来の予見をしてはいけないと思うわけです 今回のこの実験では、光子トラップで原子を個別に捉えて、並べているらしいです で、それに磁場をかけたりもする いったい何個の原子を制御して統計理論を適用しているのか ボルツマン分布は自然界において無数に存在する微視的粒子集団についての統計的法則です 数えられるような多粒子系にあてはめて、都合よく解釈していいのでしょうかね つまり、これはまさに、マックスウェルの悪魔、的なことではないか(笑 これは光子トラップ実験をよく利用する量子コンピュータ関連の研究と同じ類のように感じます エンタングルメントのような不思議な力や反重力などもテーマになることが多いみたいですね 悪いとは思いませんし、いろいろやってみることから始まるのですけど 未知の分野をいいことに、都合よく解釈してしまえ、みたいなことでは真に受ける気はしないですよね あるいは記者の煽り文句もどうだかなあ(笑
typodupeerror

あつくて寝られない時はhackしろ! 386BSD(98)はそうやってつくられましたよ? -- あるハッカー

読み込み中...