
茨城県東海村の加速器実験施設で放射性物質漏れ、30人以上が被曝 108
ストーリー by hylom
強まる風当たり 部門より
強まる風当たり 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、
23日、茨城県東海村の加速器実験施設J-PARCで放射性物質が漏れ出すという事故が発生した(ウォール・ストリート・ジャーナル[配信元は時事通信])。「施設内の放射線量が上がった際に担当者が換気扇を回し、外部に放射性物質を放出していた」とのことで、原子力規制委員会への通報は24日夜。通報が遅れたことについても批判を浴びている。 陽子ビームが誤作動し、通常の400倍という想定外の出力でビームが金属(金)に照射され、生成された放射性物質が気化して拡散したのが原因。当初作業員4人が最大で2ミリシーベルトの被曝を受けたと発表されたが、26日、27日には新たに追加でそれぞれ24人について最大1.7ミリシーベルトの被曝、3人に最大0.3ミリシーベルトの被曝が確認されたことも発表。
さらにレベル1の事故との暫定評価が設定された。加速器実験施設などの研究施設は原子力発電所と比べ規制が緩いが、今回の事件でJ-PARCの長期にわたる停止も懸念されるという(MSN産経ニュース)。
まあ規則は規則ですし (スコア:5, 興味深い)
自分は病院の放射線科で働いているので2mSvの被曝なんて普通に毎年受けてるし、
注射器から検査用薬剤を漏らしてメガベクレル単位の汚染させて拭き取ったりする「事故」も起こしてますが(幸い管理区域内のみの汚染)、
いざまともな知識と資格を得て担当になって、そこで日常生活を送っていると、周囲が思ってるより全然深刻さを感じなくなるんですよね、こういうの。
中の人の実感からすれば「隠蔽」というより、「えっ、これって深刻なの? なんか報告しないといけないの?
法律とかってどうなってたっけ? うわめんどくせ」、と思ってたんだろうな~、とは思います。
まあ法律は法律ですから、甘く見ずに従わないとこういう怖い叩かれ方するわけで、被曝なんかよりよっぽどそっちの方で寿命が縮まる思いです。
(放射線に関する医学生物学的知識はあるけど、放射線に関する法的知識なんて、大昔の講義や試験の後は殆ど忘れちゃった…)
Re:まあ規則は規則ですし (スコア:5, 参考になる)
起きた事象を把握した上で、報告の義務があるかどうかを間違えたならそういうことでしょうけれど、今回のは違います。
報告が遅れる原因としては、事実認識の不足 (起きた事象を把握していなかった)、規則の理解の不足 (起きた事象は把握していたけれど報告の義務があることを理解していなかった)、意図的な規則違反 (起きた事象を把握して報告の義務があることも理解していたけれど規則を破って報告しなかった) といくつかあります。
#2390547 [srad.jp] の人が紹介してくれている報告書では、事故が起きた 5 月 23 日の段階では J-PARC は管理区域外の汚染について把握しておらず、放射性物質が管理区域外に漏洩したことに気付いたのは 24 日午後 6 時過ぎになってからだったとしています。つまり、 J-PARC の主張としては、報告の遅れは事実認識の不足が原因だったということ。なので、規則に対する認識が甘かったという主張ではありません (どっちが良いということではなく、原因が違うということ)。
もちろん、報告書が嘘の可能性がないとは言いませんが。
Re: (スコア:0)
「報告の遅れ」って、締め切り何時間超過したの?
Re:まあ規則は規則ですし (スコア:1)
>周囲が思ってるより全然深刻さを感じなくなるんですよね、こういうの。
とってもわかるんだけど、内輪の話でしょ。
知識のない人にそれは通じないんだよね。
だからといって、素人は黙ってろというわけにはいかないんだよね。その素人からの攻撃を守って
くれるのが法律なんだと思う。というわけで、法律はそのまま守った方がいいと思う。
まあ、スラドには「俺様がわかる程度のことはみんなにもわかるはず」という謙虚な方が多いので、
書くだけ無駄なわけだが。
Re:まあ規則は規則ですし (スコア:1)
不謹慎だが言い方に吹いてしまった、しかも結構間違ってたりするんだよな、本当にどうしようもねえ。
Re: (スコア:0)
スラドの人って結構、俺様が知っていることは世界の人が知っているべきで、
知らないやつは屑、
と受け取られかねない文章がそこここに見られます。特に軍事と科学分野。
だから、軍事オタと理系は世間様から疎んじられるのだろうな、と思うことしきり。
#スラド民をサンプルにして一般化するな、という発言は妥当なのですが、本題とは
関係ないので横に置いといて。
どうして、「俺様の知識は世界の人が知っているはず」「俺様の知識は常識だろ」
を前提とした、他人の貶め方がスラドでは通用するのか、本気で知りたい。
Re:まあ規則は規則ですし (スコア:1)
あくまで素人の勘でかないが…
国の基準値はかなり厳し目だと思う
Re: (スコア:0)
いや、中の人も隠蔽ってのは自覚合ったんじゃないかな。
でも、問題になるのをいやがって、過小評価した。
こういう風にばれると不信を招くから、小さくても、規則通り、報告や公表をすべきなんだよ。
Re: (スコア:0)
ということにしたいのですね
Re: (スコア:0)
>自分は病院の放射線科で働いているので2mSvの被曝なんて普通に毎年受けてるし、
年間の被曝量と、一時にガスとして体内取り込みもアリでの被曝量を並べてどうとか語るのは
さすがになんか変な気がする。
Re: (スコア:0)
こういう認識の人が多いから事故が絶えないんだと思う。
そういう意味で”参考になる”。
Re: (スコア:0)
まともじゃない担当がまともじゃない病院で勤務している実態が伺える。
Re:まあ規則は規則ですし (スコア:1)
いや流石に机の上とかを汚染したら、拭き取ったり、それなりの計測くらいはするんじゃないかな、どこでも。
とはいえ、患者に注射したRIが排泄されていく検査室付近のトイレとか、どうせ相対的に酷い汚染になってるわけで(患者が普段より丁寧に便器使ってくれるわけもなく)。
別に放射線に限らず、食品衛生とか、手術室の感染制御とかも一緒ですが、一定の安全レベルより下に抑えられているなら、それ以上無駄に神経質になってもね、という。
Re: (スコア:0, 参考になる)
そりゃ放射線科の人間は使い捨てだから。
日赤が定めた活動基準基準だと、1mSv/年 [biglobe.ne.jp]となっている。
放出された放射性物質を列挙してみる (スコア:3, 興味深い)
専門外なので間違っているかもしれんが、
追加資料(http://j-parc.jp/researcher/ja/safety/HDtrouble20130525.pdf )の10ページによると
放出された放射性物質は・・・
●197Hg(半減期64.14h)
●43K(半減期22.3h)
●198Au(半減期22.3h)
●195Hg(半減期9.9h)
●24Na(半減期15.0h)
でいいのかな?
たしかに、半減期が短い分、研究者たちにとっては「へ?何かこれ問題なの??」
って感じなのかもしれない・・・
Re: (スコア:0)
一番長いやつが60時間で、21,600,000秒だと考えると、実際のところ、観測したい奴の半減期はその十数桁下だから、ほとんどの研究者にとっても、十分長いと思いますよ。というか、これって基底状態の半減期ですか?励起してたらもっと短いのではないでしょうか。
防災の素人集団 (スコア:3, 興味深い)
別に日本に限ったことじゃないけど, 大学・学術機関の防災意識は企業・産業界と比較して低く, 実際に事故も多発しています. 正確な統計はありませんが, 企業の研究室よりも多いのは確か [nikkei-science.com]みたいです.
どうも大学・学術機関においては事故は大きなリスク・コストとして扱われず, 組織的な安全監査・指導が行われていないというのが背景としてあるようで. 専門家であるからこそ, 自身が防災・安全については素人であることを認識できないというのも有ると思います.
どういう想定で運用していたんだろう? (スコア:1)
放射性物質を扱うことが想定された(放射線量計が設置してある)施設の運用として,意外というか,引っかかったことが2点。
まず,換気扇に吸着フィルターなどが設定されていなかったこと。
放射性物質が発生した場合にも稼働していたみたいだから,封じ込めは想定されていなかったのだろうか
次に,放射線量が異常値を示しているのに,研究員・従業員を被曝検査を指示せずに帰宅させたこと。
雇用契約が曖昧な院生はわからないが,従業員は労働法規下にあるから,今回の被曝は労働災害の面もある。
研究所の使用者(雇用主)は放射線関係法令に詳しくないのだろうか。
Re:どういう想定で運用していたんだろう? (スコア:2, 興味深い)
確かに、加速器っていうのは、放射性物質を作るための装置と言っても過言ではない。過言ではないのだが、原発みたいなのと違って、最悪の最悪を想定しても、人間を1人殺すほどの放射性物質を作るのは難しい。意図的にやってもけっこう難しい。主に量的な意味合いで。
加速器の事故で気を付けなければいけないのは、加速器自体の放射線で、その次がターゲットや線源が放射性物質の場合だろう。電気代を湯水のごとく浪費しながら、今回の事故を再現したとしても、排出される放射性物質は質量としても放射能としても連日やって問題ないレベルだと思う。ましてや、それをフィルターで取り除くってのはちょっと考えられないな。
Re:どういう想定で運用していたんだろう? (スコア:2)
「年間の放出管理目標の100分の1に相当する」とかいう報道もあるので、これが本当なら毎日は不味いですよね。4日に1回ならOK?
Re:どういう想定で運用していたんだろう? (スコア:1)
> 連日やって問題ないレベル
1mSv/日は大杉だろ。管理区域だとしても1年間で50mSv、5年間で100mSvが上限だ。
Re:どういう想定で運用していたんだろう? (スコア:1)
その主語は「排出される放射性物質」じゃないの?
Re:どういう想定で運用していたんだろう? (スコア:1)
ISSを放射線をワンタイムで通過させるのと、
今回の実権や原発事故のように放射線源を体内に取り込むのとでは影響が違うのでは?
そもそも、今回の実験で出来た核種が何なのかわからないと生物的半減期も割り出せないし、1mSv/日と言う影響がどの程度続くのか(体内に滞留するので)わからない。
Re:どういう想定で運用していたんだろう? (スコア:1)
あなたの管理するサーバから個人情報が大量に漏れたとき、あなたの上司が数時間で完璧に対処できるように
あらかじめ個人情報関係法規を完璧に勉強してくれている可能性は、そんなに高くないと思うのよ。それと一緒。
もちろん個人情報を漏らさないためのテクニカルな知識ってことなら、みなさん十分勉強してることでしょうけどね。
不思議なのは…… (スコア:1)
ビーム電流が200倍になってることに気がつかないって一体何の実験やってたんだろう?
測定結果モニタしながら実験してれば普通おかしいと思うよねえ。
Re:不思議なのは…… (スコア:5, 参考になる)
いや、200倍になったのは5msで気付くとか以前に自動停止しています。
で、多量の放射性物質が生成・気化していることに気付かず(発生部は真空に引かれている密閉空間)、自動停止をリセット。
試運転したらビーム強度が落ちていたので調整して利用再開、という流れ。
(注:PDF) http://j-parc.jp/researcher/ja/safety/HDtrouble20130525.pdf [j-parc.jp]
で、おそらく利用再開で真空ポンプが動いて段々と放射性物質が排気されて線量増加。
しかし、線量増加を「通常運転時も半減期の短い放射性物質で線量が上がることがあり、すぐ減衰するとの認識だった。」そうで、換気扇を回すと。
http://jp.wsj.com/article/JJ11758617867101704529619000507651931320553.html [wsj.com]
Re:不思議なのは…… (スコア:1)
標的は大気中。
大気中に置いたひとつの原因は発熱対策だと思います。
J-PARCの発表資料にもあるように2秒かけてゆっくりとビームが照射されるはずで
リングを周回するビームが一度に標的に当たることは全くの想定外だったはず。
ビームに関しては遅い取り出し用の電磁石が想定外の異常な動作をした原因を
突き止める事とその対策、標的に関しては万が一全ビームが標的に当たって
もその際に発生した放射性物質が周囲に漏れ出さない(かつ平常時の発熱対策)
設計にする事等今後やるべき事が多く、実験再開までにかなり時間を要する?
Re:不思議なのは…… (スコア:3, 興味深い)
たとえば原子核実験ではどれだけの粒子が標的に当たったか測定してるわけ
だけど普通は実験中は瞬間的な変化ではなく積分値を見る。
加速器は無数のコンポーネントで構成されてるのでビームは安定ではない
(特に素粒子・原子核実験用の大電流のビーム)ので、今回の様な異常な
事があっても、後から詳細に解析しないと普段から起きてる平均から
少し外れたイベントと簡単には区別がつかない事が多い。
今回の事故で何が起きたか即座に気づくことは実質不可能だと思うが、
その後がまずかった。
なぜJ-PARCの報告書をリンクしない? (スコア:2, 参考になる)
J-PARC ハドロン実験施設におけるトラブルについて
http://j-parc.jp/ja/topics/20130525press.html [j-parc.jp]
この追加資料を見れば、ビームが 5ms のパルスで来ていて、とても反応する暇はないことが理解できるのに。
Re:なぜJ-PARCの報告書をリンクしない? (スコア:1)
Re:なぜJ-PARCの報告書をリンクしない? (スコア:1, 興味深い)
勿論ヒントは散りばめられていたはずですが、
400倍でビームが来続けていたならともかく、
大多数を占める正常値の中に埋もれる1発だけの異常データに
気付くのはなかなか難しいんじゃないですかね?
#しかも下流の実験装置が見てるのは陽子ビームではなく、二次粒子
まあ、想像力の欠如とか批判は幾らでもできますが。
Re: (スコア:0)
一日分どんどん実験してからゆっくり解析するんでしょうね。
# 使用料が高いのかな?
それなら仕方ないね (スコア:1)
反応する暇もないんだから安全対策なんて取りようもないね。
200倍どころか数万倍になったって、気付けないだろう。
もう実験禁止でいいんじゃない?
Re:なぜJ-PARCの報告書をリンクしない? (スコア:1)
J-PARCのページには書かれていないけど、wikipediaの記事を信用するのであれば、
陽子ビームの異常を知らせる警報でビームが停止したんでしょ。
しかも、それをリセットして実験継続したみたいだし。
もし、これが本当なら、気づかないふりをして隠ぺいいしたといわれても仕方ない気が。
Re: (スコア:0)
測定結果がモニタできた頃には、とっくにビームが物体にあたって放射性物質ができて拡散したあとでは?
高速(特に光速)で動くものを衝突する前に結果を見て判断するのは事実上不可能なんだよ。
Re: (スコア:0)
よくわからないけど、ビームを出す時間はミリ秒とかマイクロ秒の単位なんじゃないの
Re:不思議なのは…… (スコア:4, 参考になる)
資料を見ますと、本来は数秒かけて取り出すものが 5ms で引き出されてしまったために取り出しビームの強度が想定の数百倍になったとありますね。
実験屋さんからすると、おそらくビームの運転サイクル(入射→加速→取り出し)は変わらないように見えるでしょうから、測定器のモニタリングで気づくかどうかというレベル。実験中は普通はデータが正しく取れているか確認するくらいしかできないですし、カウンターの積分値は変わらないので、わからなくても不思議はないかと。
もっとも、加速器の運転員がこれに気付かないというのはダメダメな話。いくら自動化されているとはいえ、ビーム電流の減り方を見てればすぐに何かがおかしいことはわかるはず。
気の緩み (スコア:0)
大騒ぎする事故では無いと思うが、放射性物質を保有していてそれを厳重に管理しなければならない施設ではなく、放射線をその都度生成する実験施設だからという気の緩みあるのでは?
ビームラインの誤作動の原因を確かめもせずに実験を継続したのはひどい
本当に装置の誤作動なの? (スコア:0)
陽子ビーム発生装置の誤操作の方が判りやすい
Re: (スコア:0)
人間がいちいち操作するようなものじゃないですから。
ビームパイプの中の陽子ビームをぐりぐり押し付けてうすーーーーーく削り出す
鰹節製造機みたいなものが、一気に全量送り出してしまったのが原因。
自動通知はできるはず (スコア:0)
村や県に通知する機能は自動化・多重化できないのかな。サーバ監視みたいに。
この施設で「xx分間にyyミリシーベルトを検知」・・・とか異常があると、村と県と消防に自動通知。
情報がなかなか伝達されなかったのは施設の性質というよりも、担当教授のキャリアパスとかそういう力が働いたからだろうか。
Re:自動通知はできるはず (スコア:3)
Re:自動通知はできるはず (スコア:1)
自治体への通知を書き換えて隠蔽(神戸製鋼所の例[1])という事例もありますね。
[1] http://www.kobelco.co.jp/releases/2006/05/1175779_11976.html [kobelco.co.jp]
Re:自動通知はできるはず (スコア:1)
単純に、この事故がヤバいと気が付かなかったのでは。
「よくあること」で現場が片付けていたけど、後からデータ整理しててヤバいことに気がついたとか。
その場にいた研究者とかの被曝測定も凄く遅かった感じがしますし、現場の安全管理体制自体がゆるゆるなんでしょうね。
後、行政側の外側からの監視が十分だったか?と言う問題もあるような。
事業者がずさんでも外部での自動監視ができてればここまでの被害にはならなかったかもしれないです。
実際、風下の住宅街にまで放射能が届いていたのですから、住民の安全という事も大きい。
Re: (スコア:0)
だれかZabbixの放射線プラグイン作ってくれませんかね
いつも思う (スコア:0)
この手の放射能事故に関しては、やけに擁護に回ったり「心配している奴らは何も分かってない素人」
みたいな態度を取る人が多いよね、スラドって。
Re:いつも思う (スコア:1)
そういえば、直線加速器の誘致とかいう話があったような気がしますが、候補地選定にあたっておられる専門家の方々は今回のこの始末をどう評価されるんでしょうね?
Re: (スコア:0)
実際にそうなんじゃないの?
Re:いつも思う (スコア:1)
4シーベルトで半数が死亡、致死量が6~7シーベルトだね。
直接作業をしていた3人ー大内久さん、推定16~20シーベルト以上の被ばく、1999年12月21日なくなられました。
篠原理人さん、推定6~10シーベルの被ばく、2000年4月27日に亡くなられました。
横川豊さん、推定1~4.5シーベルトの被ばく、一時白血球がゼロになり危険でしたが、その後退院されました。シーベルトは被ばく線量の単位、致死量は6~7 シーベルトといわれます。)
大内さん、篠原さんの死因は放射線被ばくによる多臓器の機能不全です。以上の3人の方は、1999年10月6日、急性放射線症で労災に認定されました。(大内さんの容態については、NHK取材班「被ばく治療83日間の記録」を参照してください。)
Re:いつも思う (スコア:1)
普通は致死量というとLD50をさすと思います。
15Gyになってくると、最も放射線に感受性が高い造血器障害の次に弱い臓器の障害が問題になってきます。
放射線防護の教科書的には次は消化管粘膜なんですが、造血幹細胞移植が行われるという前提であれば肺が次の感受性臓器です。だから、造血幹細胞移植前の全身放射線照射の線量はX線で12(~15)Gyくらいが限界になっているわけですね。
JCO事故のような作業中の被曝事故だと実は様相が変わってきて、骨髄移植前の全身放射線照射とは異なり、「β線などの透過性の弱い放射線も含んで」「体の前からだけ」浴びる可能性が高くなります。造血組織は脊椎骨の骨髄にしても骨盤にしてもどちらかというと体の後ろ半分に偏っているので、造血組織が回復困難な被曝をしている場合には体の前半分の組織はそれよりはるかに多い線量を浴びている可能性が高くなります。そのため、事故での被曝で造血幹細胞移植を行っても助けるのは難しい(JCO事故のように、皮膚障害で死亡したり)とも言われています。