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原子力

チェルノブイリ原発近辺の森林、放射能の影響によって腐敗が遅れる 45

ストーリー by hylom
殺菌された森 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、

チェルノブイリ原子力発電所での事故発生から28年が経とうとしているが、発電所周辺の土地では枯れ木や落ち葉などの腐敗速度が遅いことが明らかになったそうだ(Smithsonian Magazineslashdot)。

チェルノブイリ周辺に生息している鳥の脳は通常よりも著しく小さく、樹木の成鳥は遅く、虫や蜘蛛の数が少ないことなども分かっているという。サウスカロライナ大学の研究チームが行った調査ではその影響はさらに小さな微生物や菌類にもおよんでおり、これによって倒木や枯れ葉などが土に還るサイクルが変わっているようだ。

調査では放射能汚染されていない枯れ葉を集め、虫などが混入していないことを確かめた上でメッシュの袋に入れて立ち入り禁止区域内に設置したそうだ。設置場所の汚染状況は様々であり、汚染が全く確認されていない場所にも設置された。1年近く後に枯れ葉の状態を確認したところ、汚染されていない場所では重量にして7~9割分の枯れ葉が無くなっていたのに対し、汚染箇所では6割が残っていたとのこと。また、このような枯れ葉の堆積により山火事の危険性が高まることも危惧されるそうだ。

なお、研究チームは今後同様の調査を福島でも行う予定だそうだ。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by Jubilee (20038) on 2014年03月17日 20時22分 (#2564785)

    リンク先を読んでみると、Oecologiaの論文 [springer.com]ですね。いま広島で日本生態学会やってるからタイムリーかな?Abstractをざっと訳してみました。

    『チェルノブイリ由来の放射能汚染が植物性物質の分解に与える影響は未だに未知である。我々は、重度に汚染されたサイトでは土壌無脊椎動物の消失または密度の低下が分解率を下げるだろうと予測した。もしも微生物が主要な分解者であったなら、大型の土壌無脊椎動物の排除は分解に影響を与えないであろう。2007年9月に、チェルノブイリの周囲のバックグラウンドの放射線量が2600倍異なる20のサイトにおいて、我々は汚染されていない4種の樹木の乾燥した落葉を入れた572個のバッグを落葉層に設置した。それらのバッグの約4分の1は土壌無脊椎動物の侵入を阻む目の細かいメッシュでできていた。これらのバッグは2008年の6月に回収され、質量減少を評価するため乾燥の上秤量された。ウクライナの正常なバックグラウンド放射線レベルのサイトと比較して、重度に汚染されたサイトでは落葉の質量減少は40%少なかった。同様の落葉の質量減少の低下を、個々のバッグ、異なるサイトのバッグ、および放射能汚染のレベルが異なる隣接したサイトのバッグの組の間の差について推定した。落葉の質量減少は、大型の土壌無脊椎動物がいる場合、いない場合より少しだけ多かった。林床の厚さは放射線レベルに沿って増加し、全ての落葉のバッグからの質量減少に比例して減少した。これらの発見から、放射能汚染は落葉の質量減少率を低下させ、落葉の蓄積を増加させ、植物の生育環境に影響することが示唆される。』

    # なんかいまいちな英文です。"Similar reduction..."の文なんか構造破綻してるんじゃないかな。間違いがあったら直してください。

    リターの分解にミミズやトビムシやササラダニ(こいつらまとめて土壌無脊椎動物)による摂食が大きく影響しているのはまあ常識です。Abstractではその生息数に触れられていなかったけれど、ツルグレン+ベールマンで調べるのはごく普通です。

    基礎知識的な話をすると、落葉(リターlitter)の分解速度を知るのによく使われるのがリターバッグ法です。対象物を網の袋に詰めて林床(地面)においたり、地中に埋めたりします。一定期間後に回収して乾燥して秤量。根っこが入ってたりすると悲惨。それをいっぱいやったみたいです。ウクライナの自然放射能レベルは知らないけれど、福島レベル(0.05μSv/h)だったとしても2600倍あると130μSv/hだから1日仕事すると1mSv浴びちゃいますね。東日本は世界的にも自然放射能が低い方だったから、恐らくもっと高いでしょう。そんなところでよくやったもんです。

    --
    Jubilee
  • という話がある。また一般的に微生物って人間よりは仕組みが簡単なので放射線に強い。この報告はよく吟味しなければならない。
    http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1379233318 [yahoo.co.jp]

    • 微生物にもいろいろあるからね。ただ小さいだけで、結構仕組みが複雑なものも微生物って言ってしまうのはどうなんだろう。藻は藻類なんだから、腐敗に関わる菌類や細菌類と同一視する必要はないんじゃないかな。

      「線量率効果」っていうのがあって、「放射線量と死亡率は一次関数ではなく、低線量では丸まっている」っていう理論がある。これについても、いろいろ理屈はあるんだが、「一定量以下の放射線を浴びた場合には、組織を修復するので死因にならない」という効果が最も大きいと考えられている。つまり、人間が浴びる放射線によって、人間の体内には年間に相当な回数の細胞レベルでの癌化がおこっているはずだが、それが極めて弱い場合、例えば、自然放射線由来の場合、癌が顕在化する前に、その細胞を捨てるなりなんなりで、症状としての癌化を防いでいるから、高線量に比べると異常に死亡率が低くなる。

      しかし、この効果が認められるのは、当然のことながら、多細胞生物である必要があるわけで、それも、幹細胞みたいなのをたくさん持っていればいるほど、すなわち、体内の組織が複雑なほど有利になる。つまり、ラン藻類とか細菌類みたいな原核生物だと問題外だから、一回当たれば必ず死ぬ。人間や藻のような多細胞生物は、時間間隔が空いてさえいれば、仮にすべての細胞にまんべんなくあたったとしても、個体としては生き延びられる可能性がある。

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      • 多分、その理解であっていると思います。
        つまり、森全体が放射線殺菌されていた、という事です。

        放射線殺菌は、例えば、牛肉に放射線をあててO157の病原菌を殺す、という形で既に利用されていますが、
        それがチェルノブイリでは森全体で起きている(かも)、という事だと思います。

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        • by Jubilee (20038) on 2014年03月17日 23時22分 (#2564892)

          食肉の処理に用いられる線量は数キログレイです。食品に対する放射線照射(食品照射) [rist.or.jp]より。人の致死量の1000倍くらい。短時間にそれくらい当てなければ充分な殺菌はできません。滅菌ならさらにもう一桁上がります。普通に考えると周辺の森がキログレイオーダーの照射を受けるような環境では残った3基の原子炉を何年も運転するなんてムリだと思います。だから「放射線殺菌」はちょっと。

          放射線殺菌は、例えば、牛肉に放射線をあててO157の病原菌を殺す、という形で既に利用されていますが、

          日本でのことではありませんから、念のため。日本で認められている食品照射はジャガイモだけです。…ところで「O157の病原菌」ってなんですか?「腸管出血性大腸菌O157」のこと?細かいようですが、病原体の名前(株名)がO157なのであって、O157は病気の名前じゃありませんよ?こういう間違い方って、単なる書き間違いでない場合は根が深いというか、知識基盤に問題がある人がよくやります。

          んでもって、その前のコメント(多細胞生物の方が強いとか)も、Deinococcus radioduransあたりを見れば的外れであることが分かります。そのさらに前のよりによって「Yahoo!知恵袋」を引いてのコメントも、元ネタが元ネタだけになんだかなあ。「Yahoo!知恵袋」がひどい玉石混淆であるのはネットの基礎知識だと思いますが。ここで引かれているのは石の方。

          放射能についてはネットには嘘やデマが飛び交っているので、ちゃんとした本で勉強し直した方がいいですよ。「いちから聞きたい放射線のほんとう [chikumashobo.co.jp]」あたりはきちんと基礎から書いてあるのに読みやすくていいです。放射能については「日経サイエンス」あたりも特集号(別冊かな?)を出したりしていました。今月の「ニュートン」はその関係の特集ですね。

          --
          Jubilee
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          • by Anonymous Coward

            別ACです。
            「放射脳殺菌に使われる放射線より弱い」のと「殺菌効果がまるでない」のとは全然違いますよね?
            殺菌効果が低いからって、影響をうける菌や微生物がゼロになるわけではないと思いますが、間違ってますか?

            • 「放射脳殺菌に使われる放射線より弱い」のと「殺菌効果がまるでない」のとは全然違いますよね?

              おっしゃるとおり、全然違ってません。だから「定量的に考えなくちゃ」と書いています。「放射線殺菌」というのは非常に厳しい処理で、人が入れるような環境で「放射線の影響を受ける」というのとは別物であるという指摘がしたかっただけです。

              # 「放射脳殺菌」というのはジョークですかね(^_^)

              放射線の影響で無脊椎動物相がダメージを受けるならリター分解過程に影響があるのは当然です。その辺は論文を読んでください。40ドルくらいしますから、大学図書館にでも行けば。Abstractの拙訳は別記事に載せました。

              --
              Jubilee
              親コメント
            • by Anonymous Coward

              殺菌とか減菌を日常語ではない方の定義で使っているのだと思うよ。(ぐぐってみ)
              どっちも間違ってない。

            • by Anonymous Coward

              「ゼロでは無い」という程度では、マクロな世界に影響は出ないんじゃない?
              影響を及ぼす菌のうちの1%でも死ねば、多少の影響を検出できるかもしれないけど、今の線量でそんなに影響出るとは思えないし。

            • by Anonymous Coward

              放射脳は殺菌しないとね。

          • by Anonymous Coward

            世の中、「私は本やネットで勉強したから真実を知っています!」とか言ってアレな本を持ち出す人もいるしなあ。

  • 連想で

    KIDDofSPEED - GHOST TOWN - Chernobyl Images - Kidofspeed - Elena
    http://www.kiddofspeed.com/japanese/01.htm [kiddofspeed.com]

  • 権力は腐敗する (スコア:2, オフトピック)

    by northern (38088) on 2014年03月17日 22時28分 (#2564862)

    つまり、官邸の地下にでも埋めておけば腐敗が遅れるわけだな
    #ほんとにそうだったらいいのに

  • 人間に狙われないから頭使わなくても殺されないので脳を小さくしてもよくなつているとか。
    天敵が増えたせいで虫が減ってるとか
    森を整備して無いだけとか

    放射線量よりも人間がいないのが効いていそう。野外だと条件が複雑そうだからコントロール下の実験室で試して欲しい

    • ウクライナは日本の倍近い国土に人口は半分以下、人口密度は1/4以下ですので
      チェルノブイリでなくても、人と接触の機会のない野生生物はいくらでもいるのではないでしょうか?
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    • by Anonymous Coward

      その論理だと、人類と共に数千年いきている動物は、そろそろ文明を発生させてもいい頃じゃない?
      犬とか猫とか。

      人間がいなくなったら殺虫剤や農薬が無くなるので、虫は増えそうだけど。
      適応で、放射線に弱い生物が減り、強い生物が増えているというだけじゃないかな。

      きっと、脳みそが小さいやつは、脳みそが大きいやつより放射線への適応力があるんだよ。
      頭のいいやつは「ここはヤバイ」と言って逃げるが、頭の悪いやつは「大丈夫だよ~。危ないなんて言ってるのは馬鹿だ」ってそこに残るとか。
      ほら、ネットでもそうでしょ?

  • by hahahash (41409) on 2014年03月17日 18時10分 (#2564678) 日記

    腐敗分解が遅いということは、養分が土に還元されるのが遅いってことで、
    それが植物の生育に悪影響を与えているのではないか、というのは納得できる話。

    微生物に影響が強く出ていて、微生物が活動していないってことなのだろうけど、
    普通とは違う種類の微生物が大量にいたりしたら、それはそれで興味深そうだ。

    #この内容で『放射能』という単語を追加されると、ものすごくウソっぽく聞こえる……

  • by Anonymous Coward on 2014年03月17日 18時09分 (#2564676)

    汚染されているから枯れ葉が残るのか、
    枯れ葉が残るような地形(吹き溜まりとか)だから、汚染が今なお強く残っているのか。

    • Re:どっちが原因? (スコア:1, オフトピック)

      by baldmage (45440) on 2014年03月17日 18時41分 (#2564704) 日記

      もちろん自説に都合のいいほうが採用されます

      親コメント
    • by Anonymous Coward on 2014年03月17日 20時11分 (#2564777)

      というか、汚染されているところと汚染されていないところで天候など他の条件はどうなってるんだろう。
      広範囲だと他の条件もかなり違ってきてる気がするんだけど。

      親コメント
      • by Anonymous Coward

        雨の降りやすい所は汚染も流れ落ちやすく落ち葉の分解も早い。
        とか思ったけど、むしろ水はけの良い所は汚染も流れ落ちやすいが、落ち葉の分解は遅いというのもありえる。
        落ち葉の分解が早い所は落ち葉に付着または含まれた汚染物質は植物に取り込まれ拡散している、とかも言えそう。

        相関だけじゃなんとも言えないんだよね。

    • by Anonymous Coward

      >調査では放射能汚染されていない枯れ葉を集め、虫などが混入していないことを確かめた上でメッシュの袋に入れて立ち入り禁止区域内に設置した

      とあるので後者では無いな。

  • by Anonymous Coward on 2014年03月17日 18時31分 (#2564693)

    虫が少ないと言う事は、
    落ち葉を食べる昆虫も少ないので、落ち葉が腐葉土になる第一段階の進行が遅くなる。
    すると樹木の養分になりにくいので、樹木の生長も遅くなる。
    鳥も、餌となる虫や木の実が少なければ、飢えやすく、成長が阻害されるのかもしれない。

    さて、虫が少ない原因は、何なんだろうか。

    • by Anonymous Coward

      そりゃおま、原発事故の影響で放射能が強い場所だからじゃないのか?

    • by Anonymous Coward

      人が住んでいないからゴミが出ないからかも

  • by Anonymous Coward on 2014年03月17日 18時46分 (#2564708)

    鳥がナマケモノになったのか。

    • by Anonymous Coward

      木って、鳥になるんだー

  • by Anonymous Coward on 2014年03月17日 21時16分 (#2564816)

    あえて違う考え方をしてみる。

    世界と比較して日本に昆虫の種類が多いのは、地理的な条件のほかに里山という適度に
    人間の手が入っていたからという話を聞いた覚えがある。
    さらに、手をいれ続けていた里山を放棄すると、自然の山より植生が貧しくなるという話もある。

    であるならば、未だに放射性濃度が高く食用茸を採取できないようなところがあるチェルノブイリでも、
    事故前より放棄森林が増加し、複雑性が減少しているため生物の活動レベルが落ち込んでいるのではないか?

    上の理由も間接的には放射能汚染によるものといえるが、直接的な理由だとするならば、
    生物の生態調査でなく、解剖学的に変化があるか調べることが先でしょう。

    空間放射線による滅菌なら、箱にいれて放置すれば定量的に測定できるよね。

  • by Anonymous Coward on 2014年03月17日 21時52分 (#2564837)

    原発事故の犠牲者は腐らずにミイラになるから原発=ピラミッド説は事故前からよく言われていた。
    本格的に不謹慎なジョークになっちゃったけど。

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あと、僕は馬鹿なことをするのは嫌いですよ (わざとやるとき以外は)。-- Larry Wall

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