「重力波」の痕跡を観測、宇宙が膨張していることを示す証拠となるか 48
ストーリー by hylom
人類の敵の痕跡でないことを願う 部門より
人類の敵の痕跡でないことを願う 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、
米カリフォルニア工科大や米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームが、「重力波」の痕跡を発見したことを発表した(MSN産経ニュース、ウォール・ストリート・ジャーナル、Discovery、slashdot)。
アインシュタインの一般相対性理論では、ビッグバンが発生した直後に重力波が発生することが提示されていたが、これは今までに一度も証明されていない。この「痕跡」が本当に重力波のものであれば、「宇宙が膨張している」説の裏付けとなる。
大栗先生のブログ記事 (スコア:5, 参考になる)
大栗先生のブログ記事
原始の重力波 [exblog.jp]
原始の重力波 その2 [exblog.jp]
肝心の結果ですが、宇宙初期の量子ゆらぎでできた重力波の強さを表す r 比と呼ばれる量が
約0.2であるとの発表でした。これは、予想されていた値よりも大きく、驚きでした。(中略)
r 比が0.2であったということは、インフレーションのエネルギーが、
ヒッグス粒子の質量をエネルギーに換算したものより14桁も大きい。
一方、一般相対論と量子力学を統合するプランク・スケールと比較すると、2桁下です。
ですから、これまで素粒子物理学で実験されてきたエネルギーよりはるかに大きく、
超弦理論のように一般相対論と量子力学を統合する理論のエネルギーには近いということになります。
Re:大栗先生のブログ記事 (スコア:2)
Re:大栗先生のブログ記事 (スコア:2)
いろいろ言葉足らずなので補足 (スコア:5, 参考になる)
なにやら色々省略されたり間違った記述だったり誤解を招きそうだったりするんで補足.
・ビッグバン理論には,色々説明に難点のある部分もあった(だいぶ昔).
・それを解決するために,インフレーション理論(*)が提唱される(そこそこ昔).
*インフレーション理論:宇宙誕生直後の10の数十乗分の1秒という短時間の間に,体積が10の数十乗倍にも増えるような急速な膨張(インフレーション)が起こったとする説.「現在の宇宙があまりにも平坦すぎる」等の旧ビッグバン理論の問題点を解決できる.
この説においては,インフレーションの後に宇宙が超高熱に加熱され,これをビッグバンと呼ぶ事が多い(宇宙の誕生→インフレーション→ビッグバン)
ところが,ビッグバンに関しては証拠が集まりつつあるものの,インフレーションに関しては「これを認めると色々説明がうまくいく」という事はあっても,実験的な証拠が出ていなかった.
#背景放射の揺らぎあたりは間接的な証拠とも言えますが.
・インフレーションでは非常に高速に膨張するので,初期宇宙にあった様々なものが大きく引き伸ばされる.
(まだ人類は成功していないが)相対論と量子論がきちんと統合されるものなら,初期宇宙の「時空そのもの」にも微小な量子ゆらぎが存在するはずであり,これもインフレーションに伴い引き伸ばされた巨大な時空の歪みへと変換される.これを(まだ未完成だが)量子重力なども含めて考えると,初期宇宙にあった時空の揺らぎは引き伸ばされた結果重力波となる事が予想されている(原始重力波).
#だったと思うんですが,この辺の理屈はうろ覚え.
・これとは別に,宇宙にはビッグバンの超高温の名残である背景放射(現在ではマイクロ波領域)が充満している.
重力波がもし存在すると,光は重力波(=時空の歪み)によって散乱され,特徴的な偏光面が現れる(水面で光が反射すると,特定の偏光面だけ残るようなもの).
通常の物資の粗密によっても光は散乱されるのだが,重力波による散乱だと偏光面がらせん状に巻いたような特徴的な散乱光(Bモード)も出てくる事が判明している.
・ということは,背景放射(非常に弱い)の偏光面を観測してBモードが見つかれば,それは重力波によって散乱されたものだと考えられる(*).
*実際には,単なる重力レンズ効果によってもBモード変更は現れる.ただし,そのスケールがかなり違ってくる.重力レンズによるBモードは角度スケールが小さく,原始重力波によるものはより大きなスケールを持つ(と予測されている).
従って,大きなスケールを持つBモードが見つかれば,恐らく原始重力波由来だと考えられる.
・このため背景放射が原始重力波によって散乱された結果できるBモードを観測しようといくつかの施設で観測が行われていたが,今回ついに「それっぽいものが見えた(ように思える)」という報告が成された.
という感じの流れです.
まとめると,
・大きな角度スケールを持つ背景放射のBモード偏光(らせん状の偏光面)が見つかった.
・と言うことは多分巨大な重力波由来(波長が数十億光年以上になるような超巨大重力波)
・そういう超巨大な重力波は,初期宇宙のインフレーションでのみ生じると予想されている(通常の天文現象でそこまで大きなスケールが生じるのは非現実的).
・とするとインフレーション理論の初めての観測的な証拠に!
Re: (スコア:0)
毎度お疲れ様です、わかりやすくてとっても参考になります。
>宇宙の誕生→インフレーション→ビッグバン
一時期、この手の解説本を読みまくったけど、イメージが違うなぁ・・・
また最新のを読み直してみるか
わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:2)
「インフレーション理論」がわからなかったのでウィキペディア [wikipedia.org]を見てみたら、本題でないところで吹き出した。
うぃきぺでぃあはべんきょうになるなあ
ちなみに inflation はもともと膨張という意味で、当然というか何というか、経済学での意味の方が後。
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:3, 参考になる)
それはWikipediaの方が正しい。
もともとのネーミングはA. Guthによるものだけど、そこでは"inflation"ではなく"inflationary"が使われている(Inflationary Universe)。
inflateとかinflationとかだと確かにもともとの膨張という意味から取った、ってのもあり得るんだけど、inflationaryという語になってくるとこれはもう経済用語。
というかまあ、Peeblesの本とかにも書かれているように、言い出したGuthを含めた天文学者がそういう意味でつかってるんで。
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:2)
そういう説明なら、 Guth が経済学での意味を意識していたことについては納得するけど、
が正しいことにはならないよ。
なら正しいかもしれないけど、それすら「なぞらえた」と言うよりも、単に inflation (膨張) と 、当時米国で問題になっていた経済のインフレとを掛けた駄洒落だと受け取る方が自然じゃないのかな。
Re: (スコア:0)
なんか見苦しいな。
なぞらえたっていうのは普通記事にあるくらいの意味でつかわないかな?
比喩の一種なんだから、
厳密にいうと違うに決まっているというか、
まあ無粋。
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:2)
言葉をいい加減に使っているときにはそういう変な使い方もするけど、ちゃんとした言葉を使う場面では使わないよ。
それと、僕は #2566982 で (1) そもそも「Inflationary Universe という命名は宇宙の急膨張を物価の急上昇になぞらえたものである」でなく「インフレーションという命名は宇宙の急膨張を物価の急上昇になぞらえたものである」と書いている時点で全然駄目、 (2) 仮に「Inflationary Universe という命名は……」だったとしても「なぞらえた」の使い方が変、と二つの指摘をしたのだけど、より重要な指摘である (1) の方は反論できないからか何なのか知らないけど無視しておいて、「仮に (1) の点を除いたとしても (2) がある」という方にだけ反論して「見苦しい」とか「無粋」とか罵倒してくる人って、何がしたいのかわからない。
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:1)
いや、あのですね……。
そもそも「単に inflation (膨張) と 、当時米国で問題になっていた経済のインフレとを掛けた駄洒落」と、「インフレーションという命名は、宇宙の急膨張を物価の急上昇になぞらえたものである」は、別段矛盾せずに両立することは理解されていますよね?
「『なぞらえた』の使い方が変」というご指摘は、#2566978AC氏の説明の後半にある
を無視されていますよ。
一例を引用するなら、米PBSニュース [pbs.org]で物理学者Sean Carroll [wikipedia.org]氏が
と説明されています。
「わからないなら書かなきゃいい」んですよ。
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:2)
なるほど、両方ともであるという可能性は考えていませんでした。
で、ご指摘いただいた PBS ニュースのページと動画をチェックしましたけど、べつに宇宙の急膨張を物価の急上昇になぞらえたなんて言っていませんね。
Re: (スコア:0)
ますます見苦しくなってきた。
Re: (スコア:0)
ほうっておくしかないね
fcp氏独自の「なぞらえる」の使用法に関する拘りなんて聞いてもしょうがない
一般的には
「なぞらえる」の類語 [weblio.jp]
「掛けた駄洒落」だろが「(洒落て)なぞらえた」だろがどっちでもいいわ
Re: (スコア:0)
外国語を日本語に翻訳する時点でも、方向性が変わっちゃうからね。
2語が1語に統一(されたように見える)とか。
Re: (スコア:0)
笑ってないでなおせば?
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:2)
直したい人が直せばいいと思うよ。僕は自分で直したいとは思わない。
Re: (スコア:0)
いやー負けちゃったよテヘッ☆
強制されちゃう。
Re: (スコア:0)
ここで間違いを認めれば一時の恥で済むぞ。
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:1)
やっぱモデレーションに「無粋」ってのがあった方がいい気がするなw
この手の自分の失態を認められない恥ずかしいコメとか、訃報にくだらねージョーク書くヤツとか相手に
Re: (スコア:0)
fcp氏においては今日が初めてな展開でもないし、一生の恥として貫かれるのでしょう。
Re: (スコア:0)
>反論できないからか何なのか知らないけど
いや反論するまでもないと思って書かなかっただけですが。
一部か全部かで、なぞらえたかどうかが変わることがないですから。
書かなきゃわかりませんでした?
Re: (スコア:0)
論議中、「不利な立場」の側がそれを仰っても・・・
1+1=2 は説明するまでもなく当たり前、というのとこれは、違うものなので
>書かなきゃ
には繋がりませんよ
Re: (スコア:0)
そもそも、本当に命名者がそういう比喩のつもりで命名したのかどうかが問題であって、
そこで言葉尻を捕まえてあーだこーだ言うことに何の意味が?
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:2)
そうだよ。だからインフレーション理論のインフレーションが物価の上昇になぞらえて命名されたのであればウィキペディアの記述は正しい。僕は、 inflation はもともと「膨張」という意味なのだから、「宇宙の膨張を物価の上昇になぞらえて inflation と命名する」なんてのは非現実的だと言っている。
#2567011 [srad.jp] の人が「一例を引用する」なんて言っているから、「物価の上昇になぞらえて inflation と命名された」という証拠かと思って見てみたのに、単に両方の意味の inflation が会話の中に出てくるだけで、何の証拠にもなっていないし。
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:1)
そんなにグズグズ言うのならちょっとくらい自分で調べればいいのに。
ここのインタビュー [athome-academy.jp]で提唱者の一人である佐藤勝彦 [wikipedia.org]氏が
と仰ってますよ。
これで満足されましたかね。
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:2)
ありがとうございます。僕もちょっとくらいは自分で調べたのですが、そこまで行き着けませんでした。
あなたは「提唱者の一人である佐藤氏」とおっしゃいますが、「inflationary universe」という名前を付けたのは Guth 氏の方ですね。それでも、当時の状況をよく知る人の言として尊重します。
Re: (スコア:0)
単なる「由来」と、後日使われるようになった「新しい用法」の違いを気にしたって意味がないだろ?
単純な意味で後者が前者の一部ではないのは当然だ。
で、それとソースがなければ納得しない・あっても納得しがたいと思う、に繋がるのはなぜだ?何かの意地?
Re:わからないなら書かなきゃいいのに (スコア:2)
コメント #2567837 は全体的に何言っているのかよくわからないので、反応しない方がいいのかもしれないけど。
1. 最初からずっと名前の由来の話をしているのに、由来と新しい用法の違いを気にするなとか言われても。
2. 佐藤氏の話を読んで、「インフレーション理論という名前の由来は物価の上昇だ」という話に根拠があることは納得したよ。
あなたが何の話を続けたいのかよくわからない。せっかく #2567547 のおかげで話が解決したのに、由来と新しい用法の違いだの、ソースがなければ納得しないのは何かの意地だのと、別の話題を持ち出して混乱させようとしているのなら、やめておくれ。
Re: (スコア:0)
なんだか薄桜鬼ファンの原作叩きを見てるような気持ちに…
Re: (スコア:0)
ついでに書いておくと、Guthがセミナーでインフレーションの話をした年である1980年はアメリカ(を含めた西側先進国)でインフレがかなり進んで社会的に大問題になっていた頃。アメリカだとインフレ率10%ぐらいは行ったんだっけかな?
(70年代にインフレ率が大きく増えて問題化し、1981か82あたりで落ち着く。大統領だったFordが"Whip Inflation Now!"とか言ったあげくインフレを悪化させて叩かれたのがこの頃)
もしかしたらその辺(インフレという語が社会的にやたら使われていた)もネーミングに繋がってるのかも?
Bモードって何 (スコア:2)
偏光のモードなんて聞いたことがないし、「特殊な渦模様」とだけ書かれていると、何で渦巻なのか、物理的な意味が分からないので、ちょっとググってみたら、熱い文章のチュートリアルがぽこぽこ出てきた。
偏光のEモード・Bモードというのは、電磁波を記述する測定可能なパラメータであるストークスパラメータのQとUなる成分を座標変換に対して不変な量である発散成分・回転成分に変換したもので、発散成分がEモード、回転成分がBモードと呼ばれる。これはテンソルの微分という操作になるので、一般向けの文章では結果の図に現れる「棒の渦巻」ぐらいしか表現できないってことで納得した。
これを重力波検知と言ってよいのだろうか (スコア:1)
100㌧ハンマーを振り回したら隣の部屋で検知機が作動するようなレベルで検知できるようになるには、
あとどれぐらいの技術革新が必要なんだろう…。
Re:これを重力波検知と言ってよいのだろうか (スコア:4, おもしろおかしい)
100㌧ハンマーを振り回したら隣の部屋で地震計が作動するんじゃないかな
Re: (スコア:0)
でも俺のもっこりセンサーは反応しないんだよな~
Re:これを重力波検知と言ってよいのだろうか (スコア:1)
シティ・ハンター、懐かしいなあ。
でも、分かる人の方が少ないだろうと思って、
少し寂しくなった。
Re: (スコア:0)
やだなぁ、続編にあたる「エンジェルハート」の2ndシーズンの8巻がこの週末に発売されたばかりじゃないですか。
ハンマーの登場頻度は激減ですが。
ところで、テレビのニュース(何chかは忘却)では「理論的には日本人科学者が30年前に指摘しており・・・」ということでその現象が実測されめでたい、という流れで報じられていた。日本の理論物理すげー! と思ったが、詳しい人が多いはずのここでその話題がいまんとこ出ていない・・・なんか騙されてる?
hylom (スコア:0, フレームのもと)
hylomって本当に頭イカレてるんだな。
「インフレーション理論」を「宇宙が膨張している説」に置き換えるとか、気持ち悪い。
Re:hylom (スコア:1)
あと、随分前から「ビッグバン」というと普通は reheating を指すので
「ビッグバンが発生した直後に重力波が発生する」は間違い。
Re: (スコア:0)
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=2014... [nationalgeographic.co.jp]
他にもこんなタイトルをつけている記事もありますし。
Re: (スコア:0)
彼はわざと突っ込みどころを用意するきらいがある気がします
「宇宙が膨張している説」とか、判りやすいどころか全く別物じゃねーかとw
//自分のタレコミ [srad.jp]が却下された妬み
宇宙背景放射に規則的なパターンがあったということらしいが (スコア:0)
重力波の痕跡というには間接的すぎないの?
Re:宇宙背景放射に規則的なパターンがあったということらしいが (スコア:2)
逆に直接的に重力波が観測できれば, 電磁的に不透明な初期宇宙の様子を観測できる [nikkei-science.com]期待がありますね.
そっちの方はLIGO [caltech.edu]やKAGRA [u-tokyo.ac.jp]待ちってとこでしょうか.
Re:宇宙背景放射に規則的なパターンがあったということらしいが (スコア:1)
水面の波を光で見るのと同じ。
the.ACount
LIGO? (スコア:0)
カルテックということは基線長4kmの装置での発見でしょうか?
TAMA300(基線長300m)では見つからなかったんだよなあ。
Re:LIGO? (スコア:2)
観測対象はあくまで背景放射なんで,重力波の直接検出はしていません.
装置は南極点の近くにあるBICEP2/Keck arrayで,要するに偏光面も決められる電波望遠鏡です.
Re:LIGO? (スコア:3, 参考になる)
ようするに初期重力波の影響を受けているであろうCMBの偏向観測ですね。
日本が参加している実験だとQUIET実験があります。
日本語で書いてある分、こちらが親切かな。
http://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Release/20110824092704/ [www.kek.jp]