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サイエンス

光でメタマテリアル素材を「数珠つなぎ」にする技術 14

ストーリー by hylom
ちんぷんかんぷん 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、

ケンブリッジ大学研究チームは「透明マント」の実現に一歩近づいた。ほとんどの物質は、ただ光を吸収するか反射するだけだが、光を自然の状態とは異なる方向に反射する「メタマテリアル」は、材料を見えなくする効果を持つ。そして現在、研究チームは直径1mの数十億分の1のメタマテリアル素材を光で「数珠つなぎ」にする技術を研究している。という(WIRED)。

これはレーザー光を数十億本の「針」として使用し、それで金のナノ粒子を縫い合わせて長い紐状にするというものだという。「針」というと、ナノ粒子に穴を空けてつなげるようなイメージを持ってしまうが、研究されている技術はナノ粒子を並べてそこにレーザーを照射することでその表面に電子の波を発生させ、これとレーザー光の相互作用によって原子間にブリッジを形成するという。

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  • 飛躍しすぎ (スコア:4, 参考になる)

    by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2014年09月03日 10時17分 (#2669269) 日記

    メタマテリアル云々は飛躍しすぎかと.元論文での報告は「金ナノ粒子をいい感じに繋ぐ手法が出来た」ぐらいの感じで.

    様々なナノマテリアルが開発されていますが,これらの材料にありがちな難点はサイズや形状の制御が難しい,と言う点です.
    #ただしDNAなどのきっちり構造が決まった分子などを除く.

    もちろん一個だけ出来れば良いならSTMでも何でも使って作りようはあるのですが,「きっちり構造が決まった複雑な構造を,多量に作る」という量産は至難の業です.単なるナノ粒子だとかなら単分散のものは作りやすいんですが,それを一定の間隔に並べるだとか,全体として三角錐にするだとか,そういうのが難しいわけですね.
    で,今回報告されたのは,「金ナノ粒子を溶接出来て,しかも溶接箇所のサイズが精密にコントロールできる」というものです.
    溶接箇所のサイズって何だというと,例えば球二つを溶接する事を考えてください.球を押しつけながら接点を長時間高温にすると,じわじわ溶けていって広い面積でくっついたひょうたん型のものが生成します.溶接時間が短ければ,球の末端のほんの狭い領域だけが溶接された構造が出来ます.この違いが溶接サイズの差です.

    今回使われた手法では,サイズをきっちり揃えた金ナノ粒子を作っておいて,こいつをCucurbit[7]urilという分子で繋ぎます.この分子はリング状の分子で,上下の部分で金ナノ粒子にくっつく性質があります.この時うまいこと条件を揃えると金ナノ粒子が1次元状に連なった構造をとることが以前に報告されており,これにより「金ナノ粒子が連なったチェーン」を作る事が出来ます.

    で,ここにレーザーの単パルスを照射します.すると金ナノ粒子はこのパルスを非常に強く吸収するわけです.これはナノサイズの金・銀・銅が非常に強い表面プラズモン(電子の集団励起による電荷の振動のようなもの)による吸収を示すためです.この表面プラズモンの効果,二つの接近したナノ粒子に挟まれた領域で極端に強くなることが知られており,ここでの電場強度はそれ以外の点より何桁も強くなります.

    今の系では,金ナノ粒子が「分子一個」という非常に狭い間隔で隣接しているため,この部位での電場強度が尋常じゃなく強くなります.この結果,接点付近の原子が電場で大きく振り回され,隣の金粒子とついには融合してしまいます.これがナノサイズでの「溶接」となるわけです.この過程を溶液中で,多量に分散している金ナノ粒子(が集まった1次元構造)に対して行うと,ナノ粒子を溶接してチェーン状にしたものが多量に生産可能となります.

    この表面プラズモンの励起波長は,チェーンの幅(=ナノ粒子の直径)や長さの影響を非常に強く受けます.また今回の場合,ナノ粒子同士の融合が進んでいく(=溶接部分の幅が広がる)事でも共鳴波長がずれます.今回の論文ではこれを利用して,溶接部分の幅を14 nmから24 nm程度まで,1 nm刻みで作り分けることに成功しています(もちろん多少のばらつきはある).これだけ高精度に粒子の融合度合いを制御しながら量産できる,というのはなかなか無い方法です.
    #この精密な作り分けは,チェーンではなく金ナノ粒子の二量体で行われています.
    #チェーンですと後述のように長さの効果も入ってきてしまうので,そう簡単ではなくなる.

    (今回の論文では行われていませんが)この表面プラズモン,チェーンの長さにも依存しますから,将来的には特定の長さの1次元鎖を作成する,なんてことも出来るかも知れません.

  • by Anonymous Coward on 2014年09月03日 6時14分 (#2669200)

    ということでいいのだろうか。
    だってこの技術では、光を反射しないマントが出来るだけだ。
    視覚的には、ただマントが黒く見えるだけだと思うが。

    透明マントはマントの後方のものが透過して見える仕組みで無くてはならない。
    そのためには複数の屈折角をいじったナノマテリアルを組み合わせてどうにかすればできるのかもしれないが、想像がつかない。

    • by Anonymous Coward

      メタマテリアルでした。
      アニメの見過ぎだ・・・

      • 俺は単語の切りどころすらわからず、???だった。
         目玉 照り有る???
        みたいな感じだ。
        俺よりましだ。  ・・・とりあえず私の記事をマイナス付けて埋もれさせてください。
        --
        見た目大事。
        親コメント
        • by Anonymous Coward
          マテリアル素材ってところがシティバンク銀行みたいでもんにょりするな…
    • by Anonymous Coward

      この方法で透明マントをつくると、出来上がるのは文字通り「透明なマント」。
      つまり、マント自身が透明で見えない。それで物を包んでも「マントが透明」なので中のものは丸見え。

      波長依存性がない分、普通の透明ビニールシートのほうが「もっと透明」かもしれない。

      まあ、まじめな話を言えば、メタマテリアル=光迂回、ではないので、様々な光学特性を持たせたマテリアル部品を
      シート状に成型できるというのは、透明マントは出来ないにしても、他にアプリケーションが出てくるんじゃない?

      • by Anonymous Coward

        透明だけど、すぐ裏のものが見えるわけじゃないですよね、このマント。

    • by Anonymous Coward

      >透明マントは(中略)そのためには複数の屈折角をいじったナノマテリアルを組み合わせてどうにかすればできるのかもしれないが、想像がつかない。

      透明マント自体は既に実現しているので、そういうのを見ていただくとどんな構造かはわかりやすいんじゃないかと。
      単一のメタマテリアルで出来た筒状のもの(筒の内部の物体が見えなくなる)が作りやすいんで良くやられています。
      (3次元のものは作るのが難しいし解析も面倒くさい)
      #ただし、構造が作りやすい長波長領域でしか効きませんが。

  • by Anonymous Coward on 2014年09月03日 8時52分 (#2669229)

    A result of a simulation for near-field distribution is showin in Fig.2. The material seems to interact with infrared wave and to have three peeks. Is this applicable to wide wave length human is able to sense?

  • by Anonymous Coward on 2014年09月03日 10時48分 (#2669299)

    裸の王様の見えない服は実在した!?

    # 飛ばし記事風味に脚色してみました

  • by Anonymous Coward on 2014年09月03日 11時08分 (#2669315)

    ってことは、常に電力なりで特定の光を作って供給し続けねばならんわけかな。
    バッテリー切れたら「シュポッ(イヤーン)」て感じで崩壊消滅してしまうのでしょうか。

    • by Anonymous Coward

      光を「糸」としてではなく「針」としてだから縫い合わせるのに光を使うけども縫い合わせ後には光は必要ないんじゃないの?

  • by Anonymous Coward on 2014年09月03日 12時52分 (#2669388)

    >原子間にブリッジを形成

    • by Anonymous Coward

      原論文ではcucurbit[7]urilを繋ぎにして金ナノ粒子同士をくっつけると書いてある。
      cucurbit[7]urilはこんな構造 [rsc.org]だそうなので、上下の酸素原子の負電荷と金ナノ粒子の正電荷がクーロン引力で引きつけ合ってるんじゃなかろうか。
      こういうのってイオン結合って言っていいのかな? 配位結合の方が近いような。とりあえず分子軌道のエネルギーを下げることで安定化分の結合エネルギーをひりだす共有結合とは違うかな。

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私は悩みをリストアップし始めたが、そのあまりの長さにいやけがさし、何も考えないことにした。-- Robert C. Pike

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