猫(イエネコ)が人の発声する言葉の音素の違いにより、自分の名前を識別できることを示す東京大学や理化学研究所 脳神経科学研究センターなどの研究グループによる研究成果が発表された(
論文、
SlashGearの記事)。
犬が飼い主の声による命令を識別できることはよく知られているが、「うちの猫は言葉を認識できる」と主張する飼い主もいる。研究では馴化-脱馴化法を用い、録音された4つの一般名詞または別の猫の名前に続けて被験者(猫)の名前(呼び名)を聞かせる4つの実験により、反応(耳を動かす、頭を動かす、声を出す、尾を動かす、移動する)を調べた。各実験の被験者数は16~34匹。一般家庭で飼われている猫に加え、実験2と3では猫カフェ(1軒)の猫、実験4では大学で飼われている猫を含む。被験者と一緒に飼われている猫の数は実験1で2匹以下、実験2と3では4匹以上、実験4では0~5匹となっている。
実験1・3・4では一般名詞4つと自分の名前、実験2では他の猫の名前と被験者の名前を聞かせた。実験1~3では飼い主の声、実験4では知らない人(女性)の声を録音したものを使用している。一般名詞は日本語の単語で、猫の名前と長さやアクセントが同じものを選択したとのこと。被験者の約60%は最初の単語から4つ目の単語の間で反応が低下していき(馴化)、馴化した被験者の約66%が自分の名前を聞いたときに反応が再び大きくなって(脱馴化)いる。ただし、実験2では家庭で飼われている猫で馴化の割合が低く(25%)、猫カフェで飼われている猫で脱馴化の割合が低かった(約33%)という。
実験2の結果について、家庭で飼われている猫は同居する他の猫の名前と自分の名前の両方を飼い主から自分が呼ばれるような出来事と結び付けている可能性が指摘されている。猫カフェの猫の場合、客によって異なるイントネーションで名前を呼ばれることや、自分の名前でなくても客のところへ行けば可愛がってもらえることなどから、自分の名前を識別することがあまり重要ではない可能性が指摘されているが、対象の猫カフェが1軒のみであることから確実な結論ではないとのこと。
今回の研究を主導した2名の研究者は
猫が飼い主の声を聞き分けられるという研究成果を2013年に発表している。今回の研究では猫が単語の長さやアクセントではなく、音素の違いにより単語を識別できることが示された。猫の人とのコミュニケーション能力に関する研究が進めば、双方に生活の向上をもたらすと考えられるとのことだ。