ハチノスツヅリガの幼虫によるポリエチレンの代謝と腸内細菌叢のかかわりを示唆する研究成果 12
プラスチックのバイオ処理システムにつながるか 部門より
headless曰く、
ハチノスツヅリガの幼虫によるポリエチレンの代謝が腸内の細菌叢と複雑にかかわっていることを示唆するカナダ・ブランドン大学の研究グループによる研究成果が発表された(論文、ブランドン大学のニュース記事、SlashGear)。
釣り餌の「ブドウムシ」としても知られるハチノスツヅリガの幼虫がポリエチレンを食べて生分解するという研究成果は2017年に発表されているが、実際に生分解されているのかどうかについては異論も出ていた。今回の研究ではハチノスツヅリガの5齢幼虫を自然の餌であるミツロウを与えるグループとポリエチレンを与えるグループ、何も与えないグループの3グループに分けて実験している。
ポリエチレンを与えたグループでは実験開始から24時間以内に排泄物が固形から液状に変化し、生化学分析の結果グリコールが検出されたという。また、ミツロウを与えたグループや何も与えないグループと比較して腸内細菌が増加しており、抗生物質を使用することでグリコールを含む排泄物が減少したそうだ。腸内細菌を分離し、ポリエチレンのみを炭素源とする培地で1年にわたって培養した結果、ポリエチレンの生分解にかかわるとみられる細菌としてアシネトバクター属の細菌を特定している。
近年の研究ではプラスチックを分解する微生物がこれまで考えられていたよりも広く存在することが明らかになっている。また、ゴミムシダマシ類の幼虫(ミールワーム)もプラスチックを食べて代謝することが可能であり、こちらも腸内細菌がかかわっているとする研究成果も発表されている。しかし、微生物単体による試験管内での生分解は生体内での生分解と比べてはるかに長い時間がかかる。そのため、生体内で何が起こっているかを研究することがプラスチックごみの問題解決に重要な役割を果たすとみられる。