スーパーつるつるな表面加工、ハーバード大が開発 68
ストーリー by reo
よし、次はぺたぺただ… 部門より
よし、次はぺたぺただ… 部門より
capra 曰く、
ハーバード大学の物質科学者らが世界で最も滑る表面加工を開発したそうだ (The Telegraph の記事、本家 /. 記事、doi:10.1038/nature10447 より) 。
この表面加工は食虫植物であるウツボカズラにインスピレーションを受けて開発されたとのこと。ウツボカズラの壷型の葉の内側は水で満たされたスポンジのようになっており、これが壷に落ちた虫の足の油分をはじくため虫は中から上ってくることができないという。SLIPS (Slippery Liquid Infused Porous Surface) と名付けられたこの表面加工はテフロン (フッ素樹脂) の細孔に潤滑性の膜を固定することで極めて摩擦係数の低い表面を作ることに成功したとのこと。また、水と油両方をはじくことのできるオムニフォビシティ (omniphobicity) という珍しい性質も備えている。
この技術を使えば、例えば原油などをパイプを通してより効率的に送ることが可能になると考えられるという。また、この表面加工を施した容器であれば、ジャムやケチャップなどの調味料も最後の一滴まで使いきることが出来るとのこと。ただしあまりに簡単に容器から出てしまうため、出過ぎてしまう危険性もあるとのことだ。
概要 (スコア:5, 参考になる)
論文はまず,よく知られたロータス効果(表面に微細な突起を多数作り空気を抱え込むことで,液体をはじく)による表面加工にはいくつか弱点がある,という指摘から始まります.
挙げられているのは例えば
と言った点です.そしてこれらを解決する構造として提出しているのが今回の手法になります.
考え方はある意味非常に単純で,例えば油をはじきたいと考えたとき,水の上に1滴落とした油滴を考えると,こいつは水面の上をほとんど抵抗なくスルスルと移動できます.だからこれと同じ事を物体表面で行ってやればいい,と言うことになるわけです.
実際の構造としては,何でも良いから微細な孔のたくさんあるポーラスな構造を持ってきます.スポンジみたいなものでも良いですし,蜂の巣のように穴がいくつも空いた構造でもかまいません(ただし当たり前ですが,これらの穴のサイズは非常に小さい必要がある).
で,ここに,はじきたい液体と混ざらない溶液を染みこませておく,と.例えば油をはじくために,スポンジ状のコーティング剤に水を染みこませた状況を考えましょう.当然ながら,スポンジ状の物質の表面は,化学的に水と親和性の良い置換基で修飾しておく必要があります(そうしないと,穴の中に水が入らない).
この構造は,微視的に見れば,穴がいっぱい空いてぼこぼこした構造の上に,水の膜が厚く張った状態となります.そのため,下のスポンジ状の構造が多少でこぼこしてようがなんだろうが,表面には影響がありません.従って,コーティング剤部分の作り方は多少ラフでもかまわないわけです.
さて,このコーティング剤+水の上に,油滴を垂らします.微視的に見れば,水の膜の上に油がのっているわけですから,当然上の油ははじかれます.そのため油滴は物体の表面にくっつかず,流れ落ちることになります.
極端な言い方をすれば,「池の上から油を垂らしても,水槽の底には油がくっつかず,水面の上を漂って流れてくだけだよね」と言うようなものです.
水をはじきたければ,表面のスポンジ状の構造の最表面を親油性に加工して,そこに油を染みこませておけばいいわけです.水を垂らしても,油が間に入っているんで表面にはくっつかず,油膜の上を水が滑って転がっていく,と.
水も油もはじきたい場合は,論文で行われているように,水とも通常の炭化水素類とも混じらないフロリナートのような液体を用いればOK.
パイプラインの内張に使うのなら,輸送したい液体と混ざらないものを選ぶ必要があります.だからまあ同じ表面加工が全ての液体に対し使えるわけではありませんが,はじきたい対象さえ決まっていれば,それに応じた表面を作ることができるよ,と.
この手法の優れている点は,
などです.
一番最後の,蟻とジャムがずり落ちてく実験って必要なのかなあ……
いや,面白いから良いんですけど.
Re:概要 (スコア:1)
で,ここに,はじきたい液体と混ざらない溶液を染みこませておく,と.
って事は逆に水滴を回避する構造も出来るんですかね。
親水性のスポンジ構造を窓ガラス表面に構築しておけば、水滴にならずに広がって視界を確保しやすくなるとかそういう奴が。
The Telegraphの動画の一番最後に乾燥した面が出てたけど、一旦馴染んだら滴を作らずに上手く受け流してるっぽいし…
ああでも、揮発性の液体だとダメな気がする。
親水性の不揮発溶液…も馴染んだ後に置換されて揮発するからダメだろうし、はじく種類の加工じゃないと制限が激しそうだ。
Re:概要 (スコア:2)
>親水性のスポンジ構造を窓ガラス表面に構築しておけば、水滴にならずに広がって視界を確保しやすくなるとかそういう奴が。
そういう構造は超親水性コーティングの一種として知られておりまして,例えば水酸基(-OH)を結構持つような分子やナノ粒子からなるコーティング剤などがあります.
#多分スポンジ状にはしなくても良い……と思います.
こういう構造ですと,表面に突き出た多数の水酸基が水分子と非常に親和性が高いため,空気中の水分子を取り込み表面に薄い膜となっていて防汚効果があるとか,水がかかった際に薄い膜として広がるため視界を遮らない,といった特徴があり,窓材だとかそういうものに使われています.
光が当たった際のTiO2なんかもそうですね.紫外線が当たると光励起で表面に水酸基か何かが一時的にできて,しばらくは超親水性を示すとかそんなメカニズムで.
で、耐久性はいかほど (スコア:3)
使い方が悪いんだろうけど、テフロン製のフライパンって買ってすぐは良くても
あっという間にこびり付くようになっちゃう印象なので
どこまでこれの耐久性があるのか疑問視してしまいます。
まあ熱を受けたりゴシゴシ洗ったりされなければそこそこ持つのだろうけど、
石油輸送とかのインフラに使うなら数十年単位の耐久性は必要ですよね。
ヤモリに登らせたい (スコア:3, 興味深い)
この表面加工とヤモリのファンデルワールス力、どちらが勝るのか?
何処だったか、ヤモリの足の構造をまねた粘着力の強いテープを開発してましたよね。
地味だけどもの凄い発明 (スコア:2, 興味深い)
その表面加工の物理耐性・熱耐性・ケミカル耐性・経年劣化次第ではありますが。
0.1〜数%程度は食品や薬品の使用効率が改善されると思いますし、特に洗浄するときの水の使用量が大幅に変わるでしょう。
クリーンルームの機材や消耗品の表面加工としても使われそうな気がします。
また、キャップの周辺が汚れにくくなるので衛生的だと思います。
このテンガ重要 (スコア:1)
締め付けだけで摩擦を感じないアレならホンモノを超えることができるだろうか
Re:このテンガ重要 (スコア:5, 参考になる)
重要なのは適度な『ザラザラ感』だよ。
# 参考にしなくてよろしい
Re:このテンガ重要 (スコア:1)
マンリキもそうだけど、摩擦がなければ締め付けられないのでは?
#外装ならばありかもしれない
Re: (スコア:0)
法線方向に圧力を掛けるのに何で摩擦が関係すると思った?
Re: (スコア:0)
いやいや適度な摩擦こそが大切でしょうが
Re:このテンガ重要 (スコア:1)
つるぺた (スコア:0)
Re:つるぺた (スコア:2)
Hiroki (REO) Kashiwazaki
Re:つるぺた (スコア:1)
Re:つるぺた (スコア:2)
スーパーつるピカに見えた自分は年ばれそうで怖い。
Re: (スコア:0)
鏡がサブリミナルになっているのです
Re:つるぺた (スコア:1)
頭の中に、つるには○○ムシの絵が浮かびました。これが視覚辞書ってやつか。(多分違います)
#存在自体がホラー
Re: (スコア:0)
オレは、毛のない頭の上で蝿が滑っている図を思い浮かべたよ。
PTTP (スコア:1)
Re: (スコア:0)
真っ先に、なんかエロいことに使えないかな~
と考えてしまった俺は逆に元気すぎるってことだろうか・・・
YESロリータNOタッチ (スコア:0)
触りたくてもスベって触れない。
変態さんの油ギッシュな手も完璧防御。最強。
利用法は? (スコア:0)
便器に使うとうんにょがくっつかなくなっていいかも?
他にどんな利用法があるかなあ。
Re:利用法は? (スコア:3)
お笑いウルトラクイズの仕掛けに。
Re:利用法は? (スコア:3)
ドリフの坂
ウォータースライダー
Re:利用法は? (スコア:2)
無水トイレに使えそうですよね。
今の無水トイレって、ちゃっかりクサいし。
あとは、ゴミ箱の内側とか?
ビニール袋入れなくても、直接ガム捨てて大丈夫!みたいな。
Re: (スコア:0)
低摩擦の品は軸受けをはじめ、機械駆動のモノにはほとんど適用できますねえ。
レールなどに使用すれば磁気や空気による浮上をしなくても物の移動が小さい力でできるし
船の外装に使えば水との摩擦抵抗も減らせるかな。
もっとも、耐久性とコストにもよるのでしょうが…
テフロンのフライパンすぐダメになるんだよねえ。
Re:利用法は? (スコア:1)
レールに使った場合、発車時の加速と停車時の減速がえらいことになりそうです。
Re:利用法は? (スコア:1)
たぶん、列車のレールの意味じゃないと思いますよ。
ガイドレールとかで、動力は別にシリンダーとかボールねじで外部から供給されるような。
Re: (スコア:0)
摩擦の必要なところと不要なところで使い分ければいいんです。
Re:利用法は? (スコア:1)
20ノット未満で運行する、低速の貨物船では有効でしょうけど、それ以上の速度で運行する船では効果が薄いと思われます。(有効なのは潜水艦くらい?)
一番問題になるのは耐久性だと思いますが。(多少コストが高くても耐久性があれば用途はいろいろありますが、逆は……)
notice : I ignore an anonymous contribution.
Re:利用法は? (スコア:2)
船の流体抵抗に占める船体表面の摩擦ってのは実は非常に(無視してよいほど)少なく, 大小の渦が発生することによる圧力損失が主因ですからね. ですから流体抵抗の削減策となるともっぱら渦を制御する [geocities.jp]方向で進められていますね.
原油などの場合は粘性が非常に高く(アスファルトの様な半固体的な物もありますし), 流れにおける層流成分が大きいので, このような表面処理が効果を発揮するのでしょう.
Re: (スコア:0)
魚雷なら寿命が短くても使えそう
Re:利用法は? (スコア:2)
・電線の被覆に使うと氷雪が付きにくい?
・パラボラアンテナに使えばレドーム不要?
・野球グラウンドの3塁-ホーム間に使えば豪快なヘッドスライディングが
#校長の頭に使えば毎日見事なすだれ満月gesaku
Re:利用法は? (スコア:2)
さかさまに使って台車とか。
だだっ広くて段差のない倉庫とかなら使えるのでは?
既出ですが・・・
スケートリンクも思いついたけど
ツルツルすぎると止まりにくいかなぁ、と。
Re:利用法は? (スコア:1)
そのためのブレードじゃないの?
今回のつるつる具合が、
スケート用のブレードを使った場合に
左右方向と前後方向で同様に滑っていくようだと
リンクとしては使えないとは思うけど。
#でも左右に開かないようには立てるでしょ。
Re:利用法は? (スコア:1)
・壁の塗装に使うと落書きが書けない、落ちやすい
・船の塗装に使うと貝がつかない
・スケートリンクに使うと氷がなくてもスケートできる
・人に使うと年をとっても水をはじくすべすべしたお肌
以上妄想です
Re:利用法は? (スコア:1)
格闘家が使うと掴まれない
#すっごい滑るよ!!
Re:利用法は? (スコア:1)
油塗ってた奴いなかったっけ?
Re:利用法は? (スコア:1)
トルコ相撲 [kirkpinar.jp]では基本的に全身にオイルを塗り込めた状態で戦います.
Re:利用法は? (スコア:1)
和尚さんの頭に
ψアレゲな事を真面目にやることこそアレゲだと思う。
Re: (スコア:0)
・壁の塗装に使うと落書きが書けない、落ちやすい
・スケートリンクに使うと氷がなくてもスケートできる
この2つはすでに実現していたような・・・
Re: (スコア:0)
建物の外壁など
Re: (スコア:0)
広告を貼られそうな電柱やガラスに使うと簡単に剥るかもしれないな。
でも透明なガラスに使えるのか疑問だ。
Re:利用法は? (スコア:1)
リンク先の動画には透明な面に処理してるように見えますが、解像度が低いのできれいに透明化は分からないですね。
Re: (スコア:0)
新しい遊びが生まれそうな気がしますね
氷を使わないスケートとかどうでしょう?
あとは交通手段に使えないですかね?
冷蔵庫のケチャップ・マヨネーズ (スコア:0)
逆さに入れておかなくても最後まで楽に使えるようになるな。
ヨーグルトやアイスのフタを舐める必要もなくなるな。
魚肉ソーセージのビニルに付いたのを歯でこそげたり、
ケーキのフィルムについたクリームを舐めたりすることも過去のお話に。
でもコーンスープ缶の最後のコーンには勝てなそうだ。
キレてないですよ (スコア:0)
プッチンしないプリン、ダメな気がする・・・
こればっかりは孫の代までプッチンさせたい。
Gizmodeのとは別物? (スコア:0)
どこかで見たものだと思ったら,
Gizmodeで似たようなものが紹介されていた.
http://www.gizmodo.jp/2011/11/iphone_333.html [gizmodo.jp]
これもかなりすごいですけど,もっとすごいのですかね.
自動車のガラスコーティングにならないかな? (スコア:0)
やはり耐久性が興味深い。