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Newsweekの「よくわからないけど頑張って書いてみました」的な記事もあれだが,このタレコミはあまりにも酷い.
そもそものこの論文(JACS, in press, DOI:10.1021/ja3012897)の研究は,「なぜ地球上の生物は片方の鏡像異性体からなっているのか?」という長年の疑問に何とか答えを見つけようというあまたの研究の一つ.
著者が注目したのは(というか,多くの研究者が注目はしてるのだけど),ちょこちょこ見つかっている「光学活性な単純なアミノ酸を含む隕石がある」という事実.これらの光学活性な分子は,例えば宇宙空間で超新星爆発や中性子星などからの強烈
まあタレコミは責めないであげましょうよ。引責すべきはそれを通してしまった編集者ってことで。
いや、科学者がマスコミや一般人を騙したに等しいと思う。分子進化はいいけど、なにが恐竜だよ。そんな言葉を持ち出した時点で、一般人は、分子進化の難しい内容はそっちのけで恐竜に飛びつくに決まってるじゃん。故意犯にちがいない。そんな論文を通した査読者や編集者も同罪。
こうやって、分子進化分野にちょっとでも一般人の注目が集まれば、この分野への予算が増えるかもしれないという下心があるんだろうと思う。
背景としては、一般人の注目を浴びないと科学は予算を集められないという最近の風潮があるのだとは思うけど。
それはあまりにも言いがかりな気も…….
論文の流れとしては,
イントロダクション: 生物は光学異性体の一方だけで出来ているが(Lアミノ酸,D糖などを使う.Dアミノ酸やL糖は使わない),なぜそうなったのかの起源はよくわかっていない.ただ,隕石中などからは一方の光学異性体が数パーセントほど多くなっているものが発見されている.
*注記追加:なお,L体とD体が同数混ざっているものをラセミ体,片方が多いもの(極限としては,L体だけとかも含む)を光学活性体と呼ぶ(円偏光の偏光面を回転させるためこう呼ばれる).
これらはその隕石が宇宙空間にいる間にたまたま強い円偏光を
>本研究は,過去に地球にもたらされた光学活性な原料から,>その光学異性体比が増幅されながら糖やアミノ酸,核酸を作り得る>と言うことを示した.
面白いですね。
一つは生命誕生以前のある種の化学的進化がありうる、ということ。というか、光学異性体比のかたよりは必然という主張なんでしょう。
もうひとつ、生命誕生に光学異性体の極端な偏りが必要なんだろうか。ArgはDでAspはLであるような生命はありえないのかな、ペプチド結合のところで、問題がおこるのでしょうか?
poly-Argがあったとして、DDLLLLDLDDDDDとなったり、LLLLLDDDDLLLLとなったりすると、立体構造が違ってきて、前者は活性があるけど、後者はない、というようなことになるのかも。
やっぱり、偏りは必要なのかも。しかし、特定のアミノ酸のDかLかが決まっていれば、それでよいような気もする。
>もうひとつ、生命誕生に光学異性体の極端な偏りが必要なんだろうか。
疑問の歴史的な経緯としては,逆だと思います.「光学異性体の方を使ったって良いはずなのに,なぜ今いる生物はみんな同じ特殊な組み合わせになっているのだろうか?」というあたりから疑問がスタートしていますので.
それこそ,全分子を反転すれば(鏡映以外は)同じ生命が出来るはずですし,ほとんどは今の生命と同じだけどいくつかのアミノ酸だけ光学異性体,というものがあっても良いのじゃないか?というのは今でも解けていない疑問です.
だからまあいろいろな説が出てきていて,・アミノ酸のいくつかの光学異性体を決めると,残りの各種分子も反応経路的に作りやすい方が決まるのではないか?(本当に?)・そもそも生命は偶然生まれた一つの原始細胞が進化・発展・増殖を繰り返して広がったもので,だから現存する全ての生命は最初の細胞が使っていた光学異性体と同じ組み合わせを引きずっている.(何億年もあるのに,同時にいくつもの原始細胞がいろいろな場所で生まれたりはしなかったの?)・そもそも地球に当時あった原料が,何らかの理由により光学活性なもので,それを組み上げて生命が出来たからではないか?(そもそも最初の光学活性な環境はどうやって生まれたの?)
とか,なんやかんやでいろいろあります.当然決着は付いていません.
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ナニゲにアレゲなのは、ナニゲなアレゲ -- アレゲ研究家
いろいろ酷い (スコア:5, 参考になる)
Newsweekの「よくわからないけど頑張って書いてみました」的な記事もあれだが,このタレコミはあまりにも酷い.
そもそものこの論文(JACS, in press, DOI:10.1021/ja3012897)の研究は,「なぜ地球上の生物は片方の鏡像異性体からなっているのか?」という長年の疑問に何とか答えを見つけようというあまたの研究の一つ.
著者が注目したのは(というか,多くの研究者が注目はしてるのだけど),ちょこちょこ見つかっている「光学活性な単純なアミノ酸を含む隕石がある」という事実.
これらの光学活性な分子は,例えば宇宙空間で超新星爆発や中性子星などからの強烈
Re: (スコア:0)
まあタレコミは責めないであげましょうよ。
引責すべきはそれを通してしまった編集者ってことで。
Re: (スコア:-1)
いや、科学者がマスコミや一般人を騙したに等しいと思う。
分子進化はいいけど、なにが恐竜だよ。そんな言葉を持ち出した時点で、
一般人は、分子進化の難しい内容はそっちのけで恐竜に飛びつくに決まってるじゃん。
故意犯にちがいない。
そんな論文を通した査読者や編集者も同罪。
こうやって、分子進化分野にちょっとでも一般人の注目が集まれば、
この分野への予算が増えるかもしれないという下心があるんだろうと思う。
背景としては、一般人の注目を浴びないと科学は予算を集められないという
最近の風潮があるのだとは思うけど。
ネタですよ? (スコア:4, 参考になる)
それはあまりにも言いがかりな気も…….
論文の流れとしては,
イントロダクション:
生物は光学異性体の一方だけで出来ているが(Lアミノ酸,D糖などを使う.Dアミノ酸やL糖は使わない),なぜそうなったのかの起源はよくわかっていない.ただ,隕石中などからは一方の光学異性体が数パーセントほど多くなっているものが発見されている.
*注記追加:なお,L体とD体が同数混ざっているものをラセミ体,片方が多いもの(極限としては,L体だけとかも含む)を光学活性体と呼ぶ(円偏光の偏光面を回転させるためこう呼ばれる).
これらはその隕石が宇宙空間にいる間にたまたま強い円偏光を
生命誕生には光学異性体比の極端な偏りが必要なんだろうか (スコア:1)
>本研究は,過去に地球にもたらされた光学活性な原料から,
>その光学異性体比が増幅されながら糖やアミノ酸,核酸を作り得る
>と言うことを示した.
面白いですね。
一つは生命誕生以前のある種の化学的進化がありうる、ということ。
というか、光学異性体比のかたよりは必然という主張なんでしょう。
もうひとつ、生命誕生に光学異性体の極端な偏りが必要なんだろうか。
ArgはDでAspはLであるような生命はありえないのかな、ペプチド結合のところで、問題がおこるのでしょうか?
poly-Argがあったとして、
DDLLLLDLDDDDD
となったり、
LLLLLDDDDLLLL
となったりすると、立体構造が違ってきて、前者は活性があるけど、後者はない、
というようなことになるのかも。
やっぱり、偏りは必要なのかも。しかし、特定のアミノ酸のDかLかが決まっていれば、それでよいような気もする。
Re:生命誕生には光学異性体比の極端な偏りが必要なんだろうか (スコア:1)
>もうひとつ、生命誕生に光学異性体の極端な偏りが必要なんだろうか。
疑問の歴史的な経緯としては,逆だと思います.
「光学異性体の方を使ったって良いはずなのに,なぜ今いる生物はみんな同じ特殊な組み合わせになっているのだろうか?」というあたりから疑問がスタートしていますので.
それこそ,全分子を反転すれば(鏡映以外は)同じ生命が出来るはずですし,ほとんどは今の生命と同じだけどいくつかのアミノ酸だけ光学異性体,というものがあっても良いのじゃないか?というのは今でも解けていない疑問です.
だからまあいろいろな説が出てきていて,
・アミノ酸のいくつかの光学異性体を決めると,残りの各種分子も反応経路的に作りやすい方が決まるのではないか?(本当に?)
・そもそも生命は偶然生まれた一つの原始細胞が進化・発展・増殖を繰り返して広がったもので,だから現存する全ての生命は最初の細胞が使っていた光学異性体と同じ組み合わせを引きずっている.(何億年もあるのに,同時にいくつもの原始細胞がいろいろな場所で生まれたりはしなかったの?)
・そもそも地球に当時あった原料が,何らかの理由により光学活性なもので,それを組み上げて生命が出来たからではないか?(そもそも最初の光学活性な環境はどうやって生まれたの?)
とか,なんやかんやでいろいろあります.当然決着は付いていません.