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医療

ハーバード大、樹状細胞を大量に活性化させる技術開発。「樹状細胞療法」の研究前進へ 14

ストーリー by reo
Search and Destroy 部門より

capra 曰く、

自身の免疫システムを使い癌と戦う「樹状細胞療法」の研究が前進しそうだ (本家 /. 記事より) 。

樹状細胞」とは免疫活性化プロセスにおいて、自身が取り込んだ抗原を T 細胞など免疫系の細胞に伝えるという役割を担っている。癌の新たな治療法として研究されている「樹状細胞療法」は樹状細胞に癌抗原を提示し、癌を攻撃する T 細胞を作り出すという治療法である。

New Scientist の記事は、ハーバード大学の David J. Mooney 教授の研究がこの樹状細胞療法にブレイクスルーをもたらしたと報じている。Mooney 教授率いる研究チームが開発した治療法では、米食品医薬品局が認可している生分解性ポリマーのシリンダーを体内にインプラントする。このシリンダーはサイトカインと呼ばれるシグナリング分子を放出して樹状細胞を惹きつけ、その樹状細胞に癌抗原を提示する。癌抗原を取り込んだ樹状細胞はリンパ節に移動し、T 細胞に抗原の情報を伝え、T 細胞は癌を攻撃するという仕組みだ。

実験で直径 8.5 mm のシリンダーをマウスに埋め込み、その 2 週間後に非常に侵攻性の高いメラノーマ細胞を注入したところ、空のシリンダーを埋め込んだマウスは 18 日以内に大きな腫瘍ができたが、治療目的のシリンダーを埋め込んだマウスの 90 % は治癒した。従来の樹状細胞療法ではこれほど高い生存率はみられないが、埋め込んだシリンダーによって大量の樹状細胞の活性化を実現したことがブレイクスルーとなったとのこと。

この治療法は様々な癌やその他伝染病の治療への応用や、免疫システムを再プログラミングすることで 1 型糖尿病などの自己免疫性疾患などの治療にも役立つかもしれないと期待されている。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by hiwork (35961) on 2009年01月16日 13時44分 (#1492290)
    この実験はメラノーマを認識する樹状細胞(DC)が作成できることが大前提です。生体内にインプラントすることもそう新しいものではなく、日本でもカーボンナノチューブを使用した動物実験の結果が学会で報告されています。腫瘍細胞に特異的な細胞表面抗原や、特異的に取り込まれる物質があり、それを樹状細胞が認識できるだけの量が発現していないと癌細胞に特異的な樹状細胞を作ることはできません。また、特異的な抗原を認識させようとしても、すべての人の樹状細胞が自分の体内の癌細胞を認識できる確率はそれほど高くありません。健常人ならば常に癌化した細胞を異物として除去できるために癌にならないので、癌におかされた人の癌細胞を認識する能力は低いと考えられます。また、癌細胞にはエスケープ能力が備わっていることがあり、特異的抗原の発現が少なくなっている場合も多々あります。これらの理由で現段階では臨床応用される可能性は低いと考えられます。また、メラノーマ細胞に対する特異的T細胞を繰り返し輸注することで完治した報告もあります。白血病やリンパ腫に対しては、ヒト型のハイブリット抗体が治療用に開発されており、抗がん剤の治療に加えて標的細胞に反応する免疫療法が一部の疾患にはすでに始まっています。もちろん厚生労働省の審査をパスして対象疾患と薬価が設定されています。将来この分野が、カーボンナノチューブなどのデバイスを使って行われる可能性はありますが、どんな癌でも認識できる樹状細胞の作製法がみつかれば、そちらの方がブレークスルーになると思います。
    • 研究状況の現状としては反論はありませんが,今回の研究の本質的な点は癌ワクチンを
      つくらせたことでもインプラントを行ったことでもなく,GM-CSFを用いることで効率を
      上げたことにあるので,例えばカーボンナノチューブを用いた実験をするにしても
      応用可能な内容だと思われます.
      (カーボンナノチューブを使うのは単に担体としての性質に優れているからで,
      既存の試薬で生体内に運び込めるのであればこの論文のようなポリマーを使うことと
      技術的に優劣はありません)

      サイトカイン(ホルモン)の一種であるGM-CSFによって樹状細胞が集合したりすることは
      これまでにも知られていましたが、今回GM-CSFがどの程度の濃度でどのように樹状細胞に
      影響を及ぼすかを定量的に調べたことにより,癌ワクチンとしての利用に最適な濃度が分かり、
      抗原にプラスして適切な濃度のGM-CSFを投与することで効率的に癌細胞の排除が
      できたということです.

      論文の最後に述べられているように,この方法は従来の抗原のみの投与に比べて効率的で
      あるため,他の癌細胞を標的とした抗原の試験がしやすいことが期待でき,そのため
      特定の癌ではなく様々な癌の治療に応用できるかもしれないということは押さえて
      おくべきかと思われます.

      --
      kaho
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      • by hiwork (35961) on 2009年01月16日 17時11分 (#1492415)
        確かに現在アメリカで承認されているポリマーで樹状細胞を効率よく活性化できる可能性を示したことは新しい知見だとは思います。これまでもインターロイキン-2やインターロイキン-12を使用して抗悪性腫瘍効果が高くなることも知られていますが、この方法を人間に応用するには超えなければならないハードルがいくつもあるでしょう。日本国内でも行われているヒトに対する樹状細胞治療の効果をあげられる可能性はあると思います。体外ではなく、体内で大量に活性化DCを作ることが可能であることを示したことは重要なことであると私も思います・・が、すぐに臨床応用可能なものではないということを伝えたかったので以前から行われていることを引き合いに出したのです。細胞治療の最大のネックは薬事法で、バリデーションをどうするのかなどかなりもめる部分があるでしょう。
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  • 働け (スコア:2, おもしろおかしい)

    by YOUsuke (6796) on 2009年01月16日 11時55分 (#1492236) ホームページ 日記

    動くのがだるい樹上細胞を餌で釣る感じ?

    --
    妖精哲学の三信
    「だらしねぇ」という戒めの心、「歪みねぇ」という賛美の心、「仕方ない」という許容の心
    • by Anonymous Coward
      むしろ、楽しげな教材を餌にした詰め込み教育ではないだろうか。
      • by tarosuke (2403) <webmaster@tarosuke.net> on 2009年01月16日 14時09分 (#1492305) 日記

        そうかなー。むしろ「こいつは敵だ!」と警報鳴らすようなもんじゃないかなー。
        # ただの異物だと例えば「免疫グロブリン生産&結合組織で覆う」みたいな封じ込め反応が主だし、異物がなくても組織の破壊があると炎症起きるし。

        親コメント
  • by snowmark (36692) on 2009年01月16日 12時44分 (#1492256)

    先にシリンダーを入れて抗体作らせておいてからメラノーマ注入
    ということはガンの予防接種みたいなものなのですかね?
    とりあえず目的にあわせて作る抗体を人為的に操作できる、
    というのは確かに色々使いでがありそうです。

    なので一刻も早くお腹の周りの余分な脂肪を攻撃してくれる
    抗体を作る方法思いついてください orz
    ※異物じゃないから無理?w;

    --
    ~パタポン教徒~
    • Re:予防接種? (スコア:2, すばらしい洞察)

      by Dobon (7495) on 2009年01月16日 13時15分 (#1492273) 日記
      この方法だと攻撃の指示はできても攻撃の停止はできないと思います。

      自分自身を攻撃する命令は発行できるけど、その命令が不都合な場合、停めるのは大変ですよ?(自己免疫疾患を作成する訳だから)
      うまくいっても、10年単位で免疫抑制剤&ステロイド(消炎剤)&抗生物質を服み続ける事になります。

      癌や寄生虫など完全排除したいものなら問題無いけど、
      皮下脂肪を標的とした場合、全身で炎症起こすから全身痛くて痒くて、ど~しよ~もなくなると予想されます。
      (下手すると炎症で皮膚がゴソッと剥がれたりして……)
      --
      notice : I ignore an anonymous contribution.
      親コメント
      • by isi (4853) on 2009年01月16日 15時50分 (#1492359) 日記
        1年ほど前ですか、イギリスで抗体薬治験で事故が発生したことがありまして、
        サイトカイン・ストームというんですか、全身炎症状態で参加者全員ICUに収容される騒ぎになりました。
        幸い死者は出なかったと聞いています。
        今回の技術も程度の違いこそあれど免疫系に手を加えるわけで、見た目以上のリスクがありそうです。
        親コメント
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アレゲはアレゲを呼ぶ -- ある傍観者

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