
超光速通信の話題の顛末 80
門外漢プギャー 部門より
MITsu_at_mit-net、iwakuralain、yyok がタレコんでくれて曰く、
technobahn japan の記事によると、ロスアラモス国立研究所が光の速さを超えて電波を送信する装置の開発に成功したそうです。
この装置はパルサーで生じているシンクロトロン偏光 (Polarization Synchrotron) の原理を応用したものとの事で、装置の全長は 2 メートル程。安定して光速の壁を超えて電波の送受信を行うことは困難なものの、装置間の同期を調節することによって光速の壁を超えて電波を送ることが可能だとしている。これを応用する事で衛星経由でも遅延が生じなくなる事から、次世代型携帯電話等に応用することを考慮しているそうだ。
この話題の元ネタは恐らく Current の記事か、Universe Today の記事である (日付からすると Universe Today の記事は Cureent の記事を元に加筆したものだろう) 。記事の題名も ``Scientists Make Radio Waves Travel Faster Than Light'' に ``Device Makes Radio Waves Travel Faster Than Light'' と、なるほど大変それっぽい。しかし Universe Today の記事の末尾に記された参考文献は 2004 年のものであり、どういう関連があるのかの説明もない。
以下は Cureent の記事の簡単な要約である。
ロスアラモス国立研究所に所属する John Singleton と Mario Perez は、polarization synchrotron と呼ばれる装置を発案した。この装置は高速で回転する磁場により波を重ね合わせるものなのだが、この装置の動作原理で、光速で回転する中性子星であるパルサーが発するパルス状の電波が高い強度で長距離を伝搬する理由を説明できると考えた。
となると、この polarization sychrotoron という装置の仕組みが非常に気になるところであるが、Current では「電波を激しく abuse して光より速く進む装置」とだけ説明しており、あとは医療や通信の分野でどのような応用が可能であるかなど夢のある話が続く。
実は Cureent の記事は、昨年 1 月のSantaFeNewMexican.com の記事の不完全な丸写しである。このことについては Uncertain Principles の記事が詳しい。SantaFeNewMexican.com の記事から削られた部分で Singleton は以下のように述べている。
レーザーを月に照射して、ゆっくり振ってみるとします。すると月の表面にレーザーが当たった点は光の速さより速く移動します。この時、ソニックブームに相当する事が光でも生じるのではないかしらんと不思議に思うかもしれません。この光のソニックブームが、光の速度より速い電波で生じる現象なのです。
Uncertain Principles の Chad Orzel は「Singleton の挙げた例の中には何一つとして物理学的に光の速度を越える事柄は含まれていない。彼らが論文で述べていることは恐らく、電荷を持った粒子が光速より速い分布で配置された時の結果である。そこには真空中の光速を越える物体は含まれておらず、光速を越えて情報が伝達されるような事もないだろう。」と説明している。
ということで、超光速通信が実現できましたとかいうお話ではございませんという結末でよろしいかと。あとは詳しい方からのコメントをお待ちしております。
ぷぎゃられた(笑) (スコア:4, おもしろおかしい)
昔読んだ相対論の本に、「質量を伴う物質が超高速で移動することはできない」てあったから、
よく分からんながら「じゃあ、質量を伴わない情報だけなら移動できるんじゃん」とずっと実現を
待ってた訳で。
あぶねー、オレが超金持ちだったら今頃騙されてすげー融資してるとこだったぜw
Re:ぷぎゃられた(笑) (スコア:3, 興味深い)
物理的には,情報は必ず何らかの物理的実体を伴いますので,情報を超光速で送れる=超光速で物を送れる,と思っておいた方が良いかと.
これをさらに推し進めて,情報物理の極端な人の中には「宇宙においては情報こそが最も根源的な存在であり,その表現形の一つとして空間の曲率や物質等がある」という見方をする方もいらっしゃいます.
まあ,同じ物をどちらを主として見るかの違い,観点の違いだけだと言えばそうなんですが,見方を変えると問題が解きやすくなってみたりすることもあるのでなかなか侮れなかったり.
Re:ぷぎゃられた(笑) (スコア:1)
情報=「分布のずれ」
the.ACount