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サイエンス

「S極だけ」「N極だけ」の磁石を作る方法が発見される。 49

ストーリー by hylom
砂鉄を撒くとどうなるんだろう 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、

これまで存在が発見されたことがなく、作ることもできなかった、磁気単極子(N極またはS極だけの磁石)。その作り方が首都大学東京の研究者によって発見された(ITmedia)。

発見したのは、首都大学東京・大学院理工学研究科の多々良源准教授と、日本学術振興会の竹内祥人研究員。同大学のプレスリリース(PDF)によれば、

最近竹内らは、白金のような相対論的効果であるスピン軌道相互作用が強い物質と、磁石とを接合させた試料を用いる事で、磁気モノポールが現れる新しい機構を発見した。ここの本質的な役割を担っているスピン軌道相互作用は、磁石を構成する最小単位の磁石である電子スピンの運動と、電子自身の運動とを互いに結び付ける働きをする。竹内らは、それにより磁石中の磁化がコマのように歳差運動すると電子の流れが誘起され、この過程で磁気モノポールが生成される事を理論的に明らかにした。

とのこと。

この技術により半導体デバイスのさらなる高密度集積化や省エネルギー化などが期待されるという。

今回の研究内容は、「Journal of the Physical Society of Japan」の3月号に掲載されるとのこと。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 多少読んだ (スコア:5, 参考になる)

    by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2012年02月28日 18時37分 (#2107794) 日記

    各地で誤解を巻き起こしているこのネタです.
    あの誤解を招く気満々のプレスリリース,凄いですよね.

    そんなわけで,今日,論文の方をちょっとだけまじめに読んでみました.

    まず注意していただきたいのは,いわゆる素核などで言う「モノポール」とは全く別なモノです.ですので,「あの未発見だったモノポールがついに!」とか早合点してはいけません.
    ……まあ,あのプレスリリースが全て(略)

    まず,論文では電流(電子の運動)と,その電子がもつスピンを考えています.
    この電子には,磁場によるスピンのエネルギーの変化も受けますし,通常の運動エネルギーの項もあります.スピン軌道相互作用を示す不純物も入れます.また,スピン軌道相互作用によるラシュバ効果(詳細は省略)が効きまして,電流中の電子にスピン分極が生じます(upスピンが片側に集まり,反対側にdownスピンの電子が集まる).
    このラシュバ効果によって電流中の電子はupスピンとdownスピンが空間的に不均一に並びますので,全体に磁化Mが発生します.

    でもって,こういう効果を全部含めた運動方程式を建てます.そうするとなにやらごちゃごちゃとした式が得られます.
    さて,通常,磁場は磁化に平行に発生します.が,ここで新たに磁場’という変な物理量を定義します.この磁場’は,前述のラシュバ効果によって生じた磁化と,その磁化の時間微分(単位時間での磁化の変化)との外積で定義される量です.
    さらに,電場に対し,電場’という変な物理量を定義します.こちらは,磁化と磁化の時間微分の外積に,さらにラシュバ効果による場との外積をとったものです.

    そうやって,この謎の電場’と磁場’とを元の方程式に入れ,ごちゃごちゃした係数を全部まとめて簡単な係数にして式を整理するとあら不思議!
    式の形がモノポールを表す式と同じになったね!

    というお話.
    (元のモノポールの従うべき式では電場と磁場のところが,電場’と磁場’という電場や磁場ではない変な物理量にはなっているけど)

    まあ確かに,座標やら変数やらの置き換えで同じ形の方程式になるものってのは,その現象を理解する上でのモデル系として大変便利ではありますが,これをそのままモノポールと呼んでしまうのはどうなんだろう……

    • by shoji12 (14093) on 2012年02月28日 19時06分 (#2107808)

      div B は 0 のまま、ということでしょうか?
      ということであれば、モノポール成分だけを利用しようとしても、その変な物理量が邪魔してうまくいかない可能性大ですよね。

      親コメント
      • Re:多少読んだ (スコア:5, 参考になる)

        by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2012年02月28日 19時26分 (#2107823) 日記

        >div B は 0 のまま、ということでしょうか?

        磁場という意味ではそうです.
        著者がモノポールと言っているのは,E,Bに変わってeffectiveなfieldとしてE’,B’という別な物理量(本来の意味でのEやBとは全く別)を導入すると,そのE’とB’の間にマクスウェル方程式(ただし磁気単極子有りバージョン)として書ける関係が成り立つよ,と.

        >モノポール成分だけを利用しようとしても

        そもそも(いわゆる磁気単極子という意味での)モノポール成分は出てきません.
        様々な物理量を押し込んだ新しい量を定義すると,その新しい量(の間の関係)がモノポールを含む式(と同じ形)で表現できる,という感じです.

        親コメント
    • by yohata (11299) on 2012年02月28日 21時54分 (#2107919)

      正直、全く理解できないお馬鹿さんなのですがw

      結論としては
      「仮定の存在である電場'と磁場'を定義できればモノポールっぽいモノができるかもしれないね。現実には無理だけどな!」

      ……って事でよろしいのですか?

      親コメント
      • Re:多少読んだ (スコア:3, 参考になる)

        by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2012年02月28日 22時20分 (#2107935) 日記

        >モノポールっぽいモノ

        ここがくせ者で,「モノポールっぽい挙動」≠「磁気単極子っぽい性質」というか.

        あまり良い比喩ではないのですが,正に帯電した球と,別な正に帯電した球の間の力(静電的な反発力)は,式の上では反重力として書きあらわすことも出来ます(古典力学の範囲で).
        重力もクーロン力も両方とも逆二乗に従いますから,質量と電荷の比やらクーロン定数と万有引力定数の比やらを比例定数の中に押し込んでしまえば,二体間の反重力として運動方程式を書いても,とりあえず(この2体だけを考えている範囲では)正確に記述できるわけです.
        しかし,反重力として記述できたからと言って,そこに反重力が実現しているわけではありません.「反重力だとした場合の方程式」でも記述できる,と.

        >電場'と磁場'を定義できれば

        定義できれば,というか,そういうふうに定義して変数変換すると,「式の形」が「モノポールを含む場合のマクスウェル方程式」と同じ形になりますよ,というお話のようです.

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    • by joey_tribbiani (43367) on 2012年02月29日 12時59分 (#2108260)
      イメージ的に、電気系と機械系のアナロジーみたいなものでしょうか? 位置⇔電荷量、速度⇔電流 みたいにすると、同じ二階微分方程式に従うみたいな? (・∀・)
      親コメント
    • by Anonymous Coward

      プレスリリース読むと、あなたのコメントと全く違うように読めるけど、
      あなたのコメントの方が論理的でしっかりしているので、コメントの方が正しいのだと思う。

      ホントに磁気モノポールなら、JPSJは無いよな。って、禁句かな。分野外なので。

    • by Anonymous Coward

      なんかわかった気になった。こんな発表都立大学だから許されるのかな?一流大学なら怒られるレベルなのか

      • by Anonymous Coward

        1.大学の中の人が出す論文だから大学が怒るわけがない
          まぁ破廉恥な実験とかなければな
        2.それほど嘘は言っていない。でもダマ(誇張)してるかも
        3.なんか実用化でもすればすごいことになるかも<むりむり

        部分的NとSが…にってつけるだけでだいぶ違いそうなものだ。

      • by Anonymous Coward

        首都大学東京ってドブスを守る会のイメージだしなあ

    • 「のようなもの」の作り方がわかりました。新しい素粒子だとはひとことも言っていません。

      # 一行でまとめるとこんな感じ?

  • by tamanegi (38323) on 2012年02月28日 22時45分 (#2107948) 日記

    あのプレスリリースがどんなふうにできたのかが気になる。

    さすがにその教授や研究員の方があのプレスリリースの 1 ページ目を書いたとは思えない。普通に考えると、1 ページ目相当のところを書くのはそれ専門/担当の人(広報?)だろうし。

    別紙(2ページ目)の方は phason さんとか TarZ さんの日記に貼られたものから類推するに、まぁ結構盛ってるし、誤解を招くような表現も結構入ってはいる気はするけど、1 ページ目とタイトルの盛り具合(という表現すらなまぬるい)と比べると地味すぎて比べ物にならない、それなりにまっとうなものに感じるんだよなぁ。

    # 内容を完全に忘れたような逸脱はない、という意味で。

    想像でしかないんだけど、教授 or/and 研究員の方が簡単な解説(別紙の方)を作って広報あたりの人に渡した後で摩訶不思議な 1 ページ目(とタイトル)が発生した気がしなくもない。冷静に考えてみると。

    なんか広報の人あたりが(それなりに誤解を招きやすい表現もあることもあって?)別紙の内容をステキに誤解して 1 ページ目を生んでしまった、みたいな。その 1 ページ目とタイトルは研究者 2 人のチェックは受けてないんじゃないかな? 単なる想像だけど。

    # 結構広まっちゃったからには経緯を明かして、責任の所在を明らかにすべきだと思う。
    # 下手するとあまり非が無い人が強い非難をうけることになりかねないと思う。

    • by Anonymous Coward

      >さすがにその教授や研究員の方があのプレスリリースの 1 ページ目を書いたとは思えない。

      この手のプレスリリース、本人達が草案を作ることがほとんどですよ。
      (広報の人はそこまでわからない事が多いから)
      確認・校正も本人のところに戻ってきますしね。

      また、論文自体のイントロ部分も結構飛ばしてるので、プレスリリースも結構本人達が書いたんじゃないかなあ……

      多々良さんって元々素核もやってた(学生時代)ような覚えがあるし(うろ覚えなんで勘違いかも)、結構趣味入りまくりで論文のイントロとか書いてる気がする。また、スピントロニクスの、しかもデバイス応用を目指した研究を積極的に展開してる人だから、「いずれコレを進めてデバイスに」って夢(というか希望というか)自体は持ってると思う。

      • by tamanegi (38323) on 2012年02月29日 0時40分 (#2108002) 日記

        それはその通りだと思います。ですが、それにしてもかっとびすぎてると感じるんですよ。プレスリリースとは言え、この分野の専門家が「磁気モノポール」を発見した、というタイトルをつけるとかそのタイトルを了承するとかはちょっと…ほんとに? って思うんです。だから研究者側が作ったのは 2 ページ目だけで、1 ページ目は違うんじゃないかと邪推しちゃうんです。なんか。

        # 右から左へ流してチェックしなかったのか? とか

        おっしゃる通り、草案は研究者側が用意すると思いますが、プレス用の文章は結構外からも手が入るはずなんで、そっちが原因だと思いたい自分が居る、っていう気持ちかも。勘違いで関係無い人に疑惑を押し付けていたら本当にごめんなさい。

        >結構趣味入りまくりで論文のイントロとか書いてる

        別紙(2ページ目)はそんな感じなんですよね。まぁいわゆる「モノポール」はもちろん作れないとは書いてあったりする…直後に磁石中で相対論的効果を用いることで実験室で磁気モノポール作ることが可能、とも書いてあったりもしますが、1 ページ目の誤解するしかない表現とは一線を画しているように見えるんです。なので正直ちょっと疑問なんですよね。誰が書いたのか? って。まぁ的外れな疑問かもしれませんが。

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  • by nakanot (102) on 2012年02月29日 17時19分 (#2108446)
    http://link.aip.org/link/doi/10.1063/1.3673818 [aip.org]
    スピン流と違って「モノポール」流は (仮定した摂動の範囲では) 保存量になるので扱いやすいですよ、ということのようです。 分野外なのであまりピンときませんが、はたしてメジャーな考え方になるのかな?
  • 「ちゃんと読んでない」という断りつきですがphasonさんの比喩的な解説と、Web掲示板からの詳しそうな人の解説がこちら [slashdot.jp]に。(論文へのリンクもあります)

    • モノポールっぽい集団励起があるのかと思ったが,そんなことは無かったぜ!
      もっとつまらない(とか言うと怒られるのかなあ……)とは思わなかった……

      電流とスピンの絡む式を整理していろいろと置き換えを行うと,モノポールと同じ形で書ける成分が出てくる,という感じのようです.

      何というか,

      『EとSとxとyとPとVとNという物理量が複雑に絡まってる現象だけど,X=E^2-S+xy/(P*SQRT(V))+N,Y=E/S+y/x*P+V/Nという置き換えをしたら,X^2+Y^2=Aで円運動が出てきた.すごいや,円運動は本当にあったんだ!』

      みたいな(上の式とかは適当です).
      この適当な例の場合はまだ謎の物理量XとYを座標に取れば円運動になる,ということで現象の見通しが良くなるんですが,今回の例の場合,モノポール描像を取り入れるとどう言う時に見通しが良くなるのかさっぱりわからんのですよね.
      #いや,今後出てくるのかもしれませんが.

      現状だと本当に,「○○という置き換えをすると,モノポールと同じ形に式変形できます」というだけ(に思える)ので,その引用されている

      >モノポール流がスピン流よりも遙かに便利な概念であることをハッキリと示すまで,
      >おそらくこの考え (というか結果の整理に過ぎないのだが) は広まらない.

      というコメントはよくわかります.

      親コメント
  • 未知の素粒子が出てくるのか、既知の物質をモノポール化できるのか、何か一時的に単一の磁極だけを与えられるのか、半導体中の正孔みたいな感じで単一磁極と見なせる現象が観測できそうなのか。
    • マクスウェル方程式の綻びから光速を超えて情報を伝達する方法の発見、さらには因果律が破られるのでタイムマシンの発明に至り、これをきっかけとして第三次世界大戦が引き起こされ数十億人が死亡する可能性もゼロではありません。

      # それはたいへんだ。

      回避する条件は、竹内論文を葬り去ること、ええと…あとなんだ。

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      • by Anonymous Coward

        まずはメタルウーパを引き当てるとこから始めようか…

    • 仮面ライダーフォーゼで早速そんな武器が登場してた。
      テレビ見ながら相方さんと「ありえねー」とか笑ってたのに、先を読んでいたとは。
      #おのれディケイド!

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  • また首都が何かやらかしたのか、って思ったら案の定で吹いた。
    今回は中の人じゃなくその周囲がアレだったんだろうな。

    // トンデモまではいかないと思うけどそもそも理解が追い付かないや(:>^

    • by Anonymous Coward

      「       大学         学部」って書類にはどうやって大学名かくんだろ?
      「首都大学東京 大学 ・・・学部」とかやってるんだろうか
      「首都 大学 東京    ・・・学部」とか無理矢理押し込んでみたりする人もいそう

      東京なんとか学部が大発生

  • by Anonymous Coward on 2012年02月28日 19時15分 (#2107817)

    モノポールでできそうなこと/なんか関係ありそうなこと:

    磁場の操作
    縮退炉
    常温核融合
    陽子崩壊 (陽子崩壊炉)
    GNドライヴ (太陽炉)
    重力制御
    波動エンジン

  • by Anonymous Coward on 2012年02月29日 0時25分 (#2107998)

    これぐらい吹かさないと研究費をもらえないんだから

  • by Anonymous Coward on 2012年02月29日 0時28分 (#2107999)

    Sの反対はMだ、と反射的に思うほどに汚れちまったのは。

    • Sはひっくり返してもSですよ。
      # 筋肉バスターやぶれたり!

      そういえばマグネットパワーは+と-でしたっけ?

      親コメント
    • by Anonymous Coward

      スレーブとマスターだからHDD用語だよね。すらどっぽくていいんじゃね。
      # SMは愛だそうですよ。

      • by Anonymous Coward

        スレーブとマスターだからHDD用語だよね。すらどっぽくていいんじゃね。
        # SMは愛だそうですよ。

        SATA時代になって、マスターとかスレーブという用語が通じない世代のアレゲが増えていそうな予感。

    • by Anonymous Coward

      Sの反対はLでもありますよね。

      つまり、Sの反対は「LからN」にかけて、どれも確率的に真でありうる…
      これって不確定性原理でしょうか?σ(´・ω・`)

typodupeerror

皆さんもソースを読むときに、行と行の間を読むような気持ちで見てほしい -- あるハッカー

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