遺伝子スクリーニングで「優れた子供を選ぶ」ことの道徳的意義 111
ストーリー by hylom
遺伝子はあくまで一要素では 部門より
遺伝子はあくまで一要素では 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、
遺伝子スクリーニングを行うことで、優れた子供を生み出すことは「倫理的な義務」と言えるだろうか?The Telegraphに掲載された記事が本家/.にて活発な議論を呼んでいる。
実践倫理学を専門とするオックスフォード大学のJulian Savulescu教授は「道徳的により良い子供」に育ち得るよう遺伝子を選択することは「倫理的義務」であるとして、積極的に親に選択権を与えるべきだとの論を展開する。
たとえばアルコール依存症や精神病質、暴力的性質といった性格上の欠陥を排除することに関して言えば、スクリーニングすることによってその子供が自分自身や周りに危害を与える可能性が低くなると同教授は言う。既に嚢胞性線維症やダウン症のスクリーニングは行われており、また大腸がんや乳がんに関する遺伝子も検査可能となっている。性格形成に関わる遺伝子を合理的にデザインすることは現在行われているスクリーニングの延長であり、ひいてはより知的で暴力の少ない社会へと繋がると考えているとのこと。
子供に最善の、もしくはより良い人生が送れる機会を与えることは責任ある親業の一環と言えると同教授は主張する。人類の未来をより良いものにするためにも、遺伝子操作を恐れるよりは受け入れるべきであると。
誰でも平等にうけられるなら (スコア:5, 参考になる)
やってもいい気がする。
つまりお金がかからないってこと。
暴力等は遺伝もあるかもしれないけど社会的な側面も大きいと思う。
あとどんなに素晴らしい遺伝子を持った子でも親の育て方も問題(何世代か繰り返せば改善される?)
#DQNのほうが子沢山
Re:誰でも平等にうけられるなら (スコア:1)
基本的人権たる教育だって、お金次第で平等じゃないのに、
先端技術をロハで配れというのは無理があります。
で、コーディもとい遺伝子スクリーニング世代と、反遺伝子スクリーニング世代が戦争を始めます。
Re:誰でも平等にうけられるなら (スコア:3, すばらしい洞察)
遺伝子スクリーニング世代の方が、非暴力的なので負けるでしょう。
Re:誰でも平等にうけられるなら (スコア:1)
もし特定の病気を無くすことができるなら、その疾患に対する医療費がまるまる浮くわけです。
そのぶんが遺伝子スクリーニングのコストを上回るなら、経済的にも実現可能だと思います。
医療費なら費用対効果の算出もしやすく、予算の説明もずっとつけやすいはず。
教育が無償でないのは残念だとは自分も思いますが、予算には限りがあるのでやはり理想論で予算をつけるのは難しい。
限りがあるその予算にスクリーニングで都合がつけられるのなら、実行する理由は十分にある。
極端なことを言えば、スクリーニングで浮いた予算を教育に回せるかもしれない。
# スクリーニングとはちょっと違うが、コーディネイターとナチュラルの戦争 [wikipedia.org]を思い出した
Re:誰でも平等にうけられるなら (スコア:1)
子供のためと言いつつ、結局は親が自分好みの子供を産みたいというだけの話でしかない。
そんな親の元で育てられる子供が可哀想。
親が抱いてる理想から少しでも外れるととたんに冷たくされたりね。
さすがに、心臓に欠陥があるとか、生まれた後も機械の補助なしにはまともに生活できないとか
そういうレベルの障害はないにこしたことはないと思うが。
Re:誰でも平等にうけられるなら (スコア:1)
子に自分好みの子であれと望む親は多く、そしてその期待に応えない子が殆どだけど、
それでも子を愛せるのが「普通の」親だよ。
お前の親だってそうだったろう?
Re: (スコア:0)
>誰でも平等にうけられるなら
>つまりお金がかからないってこと。
つまり、先進国でも最貧国でも、ってことだな?
そんな医療が達成されたことが人類史上あるか?
Re: (スコア:0)
勝手に生殖細胞の遺伝子をスクリーニングするレトロウイルス、もとい自己増殖ナノマシンを散布すればいいネ。
参考図書 (スコア:4, 参考になる)
そのあたりの考え方は、ひととおり桜井 徹『リベラル優生主義と正義』に書いてあったな〜
病気の治療と人間の能力向上の間に境目はあるの?とか、
外科手術や薬品による人間への操作と遺伝子操作は、同じ目的に対する手段の違いでしかないんじゃないの? とか。
なかなか面白かった。
で、「境目はない」「手段の違いでしかない」という認識の人は、きっと自然に優生的な思想を受け入れるよね〜
# mishimaは本田透先生を熱烈に応援しています
Re: (スコア:0)
「優生的な生命の操作」を、生命の発生のどの段階まで認めるか、でまた議論になりそうな。
・受精前の精子・卵子の選別まで
・着床前診断まで
・妊娠x週まで
・堕胎によって母体を危険にさらす期間まで
・生まれてすぐ
・七五三まで
・
・
・
Re:参考図書 (スコア:2, すばらしい洞察)
昔は生まれてからでもやってましたよね
Re:参考図書 (スコア:2)
Re:参考図書 (スコア:1)
それは結局、今回の優生学的手法がスクリーニングという手段であることを問題にしてるんだよね。
本質的には堕胎をどこまで認めるか、という議論の延長線上にある
(胎児ならOKか、受精卵ならOKか、母親に落ち度がなければOKなのか、宗教的文化を脅かさなければOKなのか、…)。
もし、仮にウィルス等による遺伝子書き換えを受精卵の時に実施できる技術が開発されたら
あなたの挙げた問題は消えるんだけど、でもそれでも問題が残るよ。
生殖細胞以外への遺伝子操作はいいのかどうか。
障害を持って生まれてくることに対する社会的コストと子供の権利をどう考えるか。…
で、スクリーニングという手段に気を取られて、そうした問題におざなりになるのはマズいと思うんだ。
# mishimaは本田透先生を熱烈に応援しています
Re:なおざりでは? (スコア:1)
参考になった!
それはともかく、着手って遺伝子書き換えの話?
受精卵は知らないけど、各部位に対する遺伝子書き換えの臨床研究自体はもうやってる(よね?)。
投与部位がキンタマっていうのはまだ誰もやってないと思うんだけど、技術的なハードルは高くなさそうな気がする。
# mishimaは本田透先生を熱烈に応援しています
Re: (スコア:0)
要するに、
「どの段階までは『命の尊厳が認められる人間』じゃないから気に入らなければぶっ殺して捨てていいか」
ってな話ですな。
日本の法律では22週未満なら殺してもいいそうで。
もっとも仕方なく生んじゃっても「赤ちゃんゴミ箱」に捨てれば誰かが育ててくれるようですが。
ディスティニープラン (スコア:0)
それで平和な世界が訪れるならそれもありなんじゃないかと思う
そんなに都合良くいくもんなん? (スコア:2, すばらしい洞察)
どっかで手痛いしっぺ返しがきそうな
Re:そんなに都合良くいくもんなん? (スコア:3, 興味深い)
Re:そんなに都合良くいくもんなん? (スコア:5, 参考になる)
鎌状赤血球遺伝子 [wikipedia.org]なんかが有名ですね.
Re:そんなに都合良くいくもんなん? (スコア:3, すばらしい洞察)
それによって人類が滅亡するならそれでいいと思うし、むしろ、貧富の差によって、遺伝子スクリーニングを行えなかった人々のみが生き残るのであれば、それはそれでいいんじゃないかと思う。
貧富の差も十分に意味のある遺伝子多様性でしたみたいな感じで。
Re:そんなに都合良くいくもんなん? (スコア:4, すばらしい洞察)
>進化なんて、結局は、環境に対しての適応でしかないのだから、それを知恵を持って行ったとしても別にかまわないと思う。
問題なのは、人類はまだ遺伝子の特性を100%理解したわけではないということ。
レガシーコードの内容を理解せずに適当に弄くったところで、
当初期待していたような結果が得られることは滅多にない。
「こんなはずじゃなかった」という結果になるのがオチ。
「『頭が良くなる遺伝子』を選ぶよう頼んだのに、
生まれてきたのは単なる『口やかましい理屈屋』じゃない!
親に口答えばかりして全然可愛くない!こんなの詐欺だ!」
みたいなのとかは、いくらでもありそう。
その際に、その「要らない子供」の廃棄処分はどうするつもり?
遺伝子を選択してでも自分好みの子供を得ようとする身勝手な親が、
「思い通りに行かなかった失敗作」に対して、変わらぬ愛情を注いでくれるだろうか。
結局は不幸の大量生産に繋がるだけではないのか。
Re:そんなに都合良くいくもんなん? (スコア:1)
1,子供に最善の、もしくはより良い人生が送れる機会を与えることは責任ある親業の一環と言えると同教授は主張する。
2,遺伝子操作は結果が予測不可能であり、子供により良い人生を送らせる手段にはならない。
に対して、「今までだって不幸な人間はいた。」は反論になってない。
この場合の反論は「遺伝子操作によって、不幸な人間は今までよりずっと減る」とかでないとね。
しかもむしろ増えるだろうと予測される。
天の采配なら諦めも付くが、自分が選んだ結果の失敗作なのだから、より達が悪い。
多様性なんかより育てやすさ! (スコア:2, 興味深い)
「多様性」で誰しも納得すると思ったら、大間違いだ。
自分の子供が障害者や、先天的疾患の保有者だった場合を想像してみてくれ。
身体的、精神的に関わらず、単身では生活不可能な場合、
親はその子が幾つになろうとも一生かけて、健常者よりも遥かに気を使って育てなくちゃならない。
(公的なサポートはあるものの)
自分この先親が死んだ後に、愛しくも面倒な妹の面倒を見ていかなくちゃならないかと思うと、
人生が既に詰んでるんじゃないかと思えてくるよ…
Re:多様性なんかより育てやすさ! (スコア:1)
「多様性」で誰しも納得すると思ったら、大間違いだ。
自分の子供が/.Jにアクセスするような異端者だった場合を想像してみてくれ。
とか言ってみる。
「正常」「非正常」という区分けは許容しがたい。
誰しも、自分を倫理的に肯定できる「正常」の側において、
それ以外を「非正常」に置きたいがための自己肯定・他者否定のレーゾンデートルだから。
単に「自分が親としたら、親の論理として子殺しを肯定できる」と、言い換えたほうがわかりやすいのでは。
#高齢出産な親の子なので、殺されていたかもしれないのでAC
(親米)Re:多様性なんかより育てやすさ! (スコア:1)
Re:多様性なんかより育てやすさ! (スコア:1)
人が人である本質は生まれてのち構成されるソフトウェアにあり
ハードウェアで多少調整入れても高が知れてると考えます。
〜後悔先に立たず・後悔役に立たず・後悔後を絶たず〜
優生学は劣等人種を抹殺する理論。よくないことだと思う。 (スコア:2)
自分と異なる人々を劣等人種と規定して、抹殺することは、してはならないことだと考えるのがふつうの時代にやっとなったと思っていたけれど、あたしの認識がずれていたのか。
民族浄化という名の虐殺、優秀民族による強姦、劣等民族の強制不妊化を許容するべきではないと考えます。
「ガタカ」を見よう (スコア:1)
ざっくりと言えば既知の優良遺伝子だけを選んで作られた人間に、社会的に虐げられた自然受精の人間(未知の遺伝子?)が勝つ話。
Re:あれは勝ったんですかね? (スコア:1)
ただし、あれをサスペンスとして見せようとしてた予告編は正直どうかと思う。
しかし出てくる医者の態度がとにかく迷いなくていいかと。
「個性は必要だが、ハンデはいらない」とか、「言っただろ、俺の息子は君のファンだと」とか。
あそこも直して、ここも直して (スコア:1)
なんてやってると、そのうち「福山雅治の遺伝子でお願いします」なんていう母親がでてくるのでは…
技術的にも数十年以内くらいには可能?
Re:あそこも直して、ここも直して (スコア:1)
夫に秘密で、違う男の遺伝子を持たせた子供を持つ妻というのは、大昔からいたと思います。
子宝 (スコア:1)
スクリーニング=選別というのは?精子や卵子を選別するってことですか? (スコア:0)
基本的な質問ですが、遺伝子スクリーニングって、精子や卵子を調べるってことですか?
なんか、ひよこの雄雌を仕分けるような感じで、顕微鏡で精子を選別する職人の姿を想像したんですが・・・・違うよね、きっと
Re:スクリーニング=選別というのは?精子や卵子を選別するってことですか? (スコア:3, 参考になる)
関連リンクに入ってる「英夫婦、生まれてくる子供の乳がんリスクを着床前診断でスクリーニング」
の場合なんかは近いですね。卵子や精子ではなく、体外受精した着床前の受精卵を選別しています。
そして問題となる遺伝子を受け継いでいないと確かめた受精卵を子宮に戻すことになります。
将来は色々な方法が出てくるでしょうけど。
Re:スクリーニング=選別というのは?精子や卵子を選別するってことですか? (スコア:2)
Re: (スコア:0)
精子を選別するのか精子の遺伝子をカスタマイズするのかどっちなんだろう。
遺伝する病気を持ってる両親とかが子供に病気を遺伝させないためにとかはありだと思うんだけど。
着床前診断のことか? (スコア:0)
人口受精に関してのみ行われているようですね。
染色体異常により流産すると母体も危険になる場合があるからとか。
中絶が宗教的に禁忌だから問題になってるんですかね?
Re:着床前診断のことか? (スコア:2, 参考になる)
「より良い人生が送れる機会を与える」と言っているけれど、実際は与えているんじゃなく排除なんですよね。
ただ、個体前だというだけで。
しかし中絶と同じで、連続的変化である分化から誕生までの過程で、人為的にここから先はOKでここから先はNG、と区切っているに過ぎないわけです。
それはそれで文化であり宗教であるわけですが、倫理的に良いのと悪いのと幅が広すぎてちょっと場当たりっぽい気もぬぐえない。
進化に人為が加わる事になるね。 (スコア:0)
長いスパンで考えると、人類の進化に悪い影響が出そうな気がしないでもない。
多様性が失われていく未来。
多様性は種の強さ(ウイルス、環境、etc..への耐性とか)。
Re:進化に人為が加わる事になるね。 (スコア:1)
多様性のみが論点であるなら、
人為進化した社会と(遺伝子プールとして)多様性を保った社会の二つの社会があればいいこと(物理的や階層的やイデオロギー的に分かれている)。
SFではよくある設定
Re:進化に人為が加わる事になるね。 (スコア:2, 興味深い)
をを、はだかの太陽…。
結局スペーサー(遺伝子改良人)は滅亡してたね。
人為的な遺伝子改良は、種を安定する方向に向けがち。つまり性能は良いが平均・均質的な人類になる。
すると突発的な事態に対応できずに、滅亡。
というのがSFに良くある話…。
まぁ、逆に環境適応のためにむちゃくちゃな改良した結果生き延びる、という、マンアフターマンみたいな想像もあるけどね。
個人的にはじゃんじゃんやって欲しい。だって面白いじゃない!
ただし、倫理的に優れたなんていうキモい理由ではなくて、スーパー人類を作り出す、人類の次のモノに進化するためにならばだね。
Re:進化に人為が加わる事になるね。 (スコア:2)
>結局スペーサー(遺伝子改良人)は滅亡してたね。
ちなみにアシモフのロボット物(及びファウンデーションシリーズ)でスペーサーが滅亡した理由は
>人為的な遺伝子改良は、種を安定する方向に向けがち。つまり性能は良いが平均・均質的な人類になる。
>すると突発的な事態に対応できずに、滅亡。
ではない。
性能は優れているし、高い科学力を有し、高度にロボット化された社会は安定していて快適なものだった。
むしろ快適すぎた。
そしてより野蛮で短命な旧人類の活力に駆逐された。
Re:進化に人為が加わる事になるね。 (スコア:1)
困ったことに、ソラリア人だけは生き残っていたりして……
Re:進化に人為が加わる事になるね。 (スコア:1)
いや、たぶん1万~2万人くらいじゃないかと。
#ソラリア全土でたっぷり2万人
そこで言ってる「一人」は、おそらく本来なら処分される予定だった、未成熟な個体のことですね。
Re:進化に人為が加わる事になるね。 (スコア:1)
多様性が制限されたときに
社会はどう変質していくのだろう?
Re:進化に人為が加わる事になるね。 (スコア:1)
多様性は何のために必要なんだろう。
多様性を受け入れなければ、滅ぶ。それはわかる。
でも多様性を受け入れたら滅ばなくて済むの? 無作為に受け入れたらやっぱり滅ぶんじゃないの?
あたりまえのことだけど、多様性は絶対の指針じゃないと思うんだよね。それ以外の指針も必要だと思う。
で、それ以外の指針として、たとえば「持続可能性」なんかを提案する論者もいるよ。
持続可能な範囲での多様性のみ受け入れ可能である、と。
そしたら、スクリーニングについては「持続不可能な多様性」であれば切り捨てることを許す、とか、そういう限度を決めることができる。
それで十分だったりしない?
# mishimaは本田透先生を熱烈に応援しています
Re:進化に人為が加わる事になるね。 (スコア:1)
Re:遺伝子組み換え人間 (スコア:1)
Re:そうやって種は絶滅していく (スコア:1)
遺伝的多様性やウイルス耐性を失わせるのは、「集中」であって「選択」ではないと思う。
そもそもこの視点で語るなら、先天異常の回避より精子の売買とかの方がヤバイと思う。
Re:そうやって種は絶滅していく (スコア:1)
好ましいとされる特性を「選択」していった結果、特定の遺伝子を持つ個体に「集中」して、
多様性が失われるんでしょう。これは農作物や家畜や競走馬なんかに露骨に見られること。
たとえば「頭の良くなる遺伝子」というのがもし見つかれば、本来ならその遺伝子のある子供の
方が圧倒的に少なかった場合でも、大多数の親はそれを「選択」し、生まれてきたのは頭の良くなる
遺伝子のある子供ばかりになるような。
そして頭が良いことには別の副作用もあるかもしれない。たとえば圧倒的に絶望的な状況
(たとえば大赤字のデスマーチ!)で生き残るのは、楽観的予測と火事場の馬鹿力で行動
できる、おつむ空っぽの馬鹿の方が有利になるとか。