放射性トリチウムは薄めて海に流すべき? 199
ストーリー by hylom
どこまで薄めればよいのだろう 部門より
どこまで薄めればよいのだろう 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、
福島第一原発の事故により大量の汚染水が発生しており、その処理についてどうすべきかの議論が進められている。汚染水に含まれているセシウムやストロンチウムについては除去装置による集積が可能だが、トリチウム(三重水素)については、酸素と結合したトリチウム水は一般のH2Oとほぼ同じ性質を示すことから、分離が難しい。そのため、日本原子力学会の東京電力福島第一原子力発電所事故に関する調査委員会はトリチウムについては安全基準値よりも大幅に薄めて海に放出すべき、という結論をまとめた(読売新聞、朝日新聞)。
トリチウム水は水とほぼ同じ振る舞いをすることから、生物内での濃縮はないとしている。元々トリチウム水は自然界に一定数存在しているものの、環境に与える影響は本当にないのだろうか?
大丈夫なら (スコア:2)
そもそも貯めとかなくてもいいんじゃないかと思ったりもするが
実際のところこんなに大量の放出は前例がないだろうから影響があるかどかは誰にもわからないんじゃないだろうかとも思う。
# トリチウム水以外も間違って放出しちゃいましたとか起こらないことを祈るばかり・・・
Re:大丈夫なら (スコア:2)
記事が短すぎて不明瞭ですけど、少量・低濃度だから放出する、じゃなくて積極的に海中に拡散させるようにして放出するという考え方はあるそうです。現在流出してしまっているものはある程度の濃度のものが塊となって漂流し、環境へと悪影響を与える。それを人力で希釈を行おう、という話。ただ近海で行ってもあまり意味は無いので外洋で、ということになりますが理解は得られないでしょう。
Re:大丈夫なら (スコア:1)
煽りコメにマジレスするのもどうかと思うけど、例えば風洞実験で細く煙を流すと、何かにぶつかってひどい渦を巻かない限り、ほぼ同じ太さでずっと流れ続けてるでしょ
そんなイメージ、意外と流体は拡散せず、塊のまま流れに乗り続ける
もちろん、ものすごく長い時を経れば、広く薄く拡散する
Re:大丈夫なら (スコア:1)
工場の煙突から出た煙も、すぐ拡散するわけじゃないもんな
Re:大丈夫なら (スコア:1)
当事国の規制機関が認可しさえすればいい。
Re:大丈夫なら (スコア:1)
何を言うておるのやら。
トリチウムは宇宙線の照射により大気圏で生成されて毎年2kgばかり世界中に降り注ぐ「自然のサイクル(笑」にあるものなんだけれど?
Re:大丈夫なら (スコア:1)
トリチウムの年間の自然生成量は 200g (7.2×10^16Bq) ほどのはずです。
一桁間違ってませんか?
Re:大丈夫なら (スコア:1)
今Wikipedia見たら9.6×1017Bqって書いてあったし。
Re:大丈夫なら (スコア:1)
トリチウム(三重水素)については、酸素と結合したトリチウム水は一般のH2Oとほぼ同じ性質を示すことから、分離が難しい
トリチウム水は水とほぼ同じ振る舞いをすることから、生物内での濃縮はないとしている。
人為的に濃縮しようとしてもほとんどできないんだよ。ましてや自然界で勝手に濃縮される可能性なんてまったくありえない。
人為的に薄めたとして、結局どこかで濃縮されて出てくることはないし、薄まったままならば地球のスケール的には結構どーでもいいって専門家がちゃんと科学的な説明を含めて言ってるのに、
それをなぜまったく科学的根拠も示さないで素人考えで否定しようとするのかな。
専門家じゃないとわからない難しい概念なんてべつに出てきてないよ?
Re:大丈夫なら (スコア:2)
>専門家がちゃんと科学的な説明を含めて言ってるのに、
専門家の言うことより反原発な人の方がその手の人に信頼されてますからねぇ。
どうしてこうなった。
Re:大丈夫なら (スコア:1)
諸外国にしてみりゃ「コストなんか知ったことか、自分で蒔いた種は責任持って自分で刈り取れ」だよ。
そこをなんとかって頼むなら外交的なコストかけなきゃならん。
Re:大丈夫なら (スコア:1)
でもね、リスクをかぶる人と、利益を得る人が違うという問題点があるわけで。
どんだけ小さなリスクだろうが、利益を得ないのであれば賛成する理由はこれっぽっちもないわけで。
参考資料 (スコア:2, 参考になる)
東電によれば、現在福島で保管している汚染水の想定濃度,総トリチウム想定量は以下の通り。
・汚染水のトリチウム濃度:1×10^6 Bq/㍑ ~ 5×10^6Bq/㍑
・汚染水総量(H25.4.16現在) :約28万m^3
・トリチウム総量(想定) :2.8×10^14 ~ 1.4×10^15Bq
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/c130426_06-j.pdf [tepco.co.jp]
稼働時の原発で垂れ流しているトリチウム量(液体)
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/tritium_3.html [inaco.co.jp]
現実的なトリチウムの除去技術がないため、排出に関する管理基準は緩い。
(厳しくすると原発を稼働できない。)
Re:参考資料 (スコア:1)
前にも書いた気がするけど日本は石油石炭利用で年間20トンの水銀を回収できずに環境に放出してる訳で、それに比べたら鼻クソみたいな量ですな。
Re:参考資料 (スコア:1)
・トリチウム総質量(想定) :0.79 ~ 3.93g
が、正解。
3ペタトンてどんだけやねんw。て言うか誰ぞツッコめよ…。(´・ω・`)
Re:参考資料 (スコア:1)
トリチウムは半減期が12年と少ないからジャンジャンバリバリ崩壊して放射能も高くなる訳で、今そこに存在している量に換算すると質量数とも併せてえらく少ない数字になるのですよ。
Re:参考資料 (スコア:1)
>(厳しくすると原発を稼働できない。)
稼働優先結論ありきでの管理基準策定って素晴らしい。
#そういう社会
やれやれ。。。 (スコア:2)
ここまで、トリチウムが崩壊して放射されるのはヘロヘロなβ線であるという事実への言及なし。たしかにγ線だったら大騒ぎなんだがね。
--- Toshiboumi bugbird Ohta
Re:やれやれ。。。 (スコア:2)
逆だって。トリチウム以外は抽出がそれなりに可能だし、それで対策している。で、トリチウムが抽出出来ないのが(主にマスメディアの報道で)問題になっている。でも、実態としてトリチウムは他の放射性物質よりヤバい放射線は出さない ということなのだよ?<イマココ
--- Toshiboumi bugbird Ohta
Re:やれやれ。。。 (スコア:2)
中止してい(る|なければならなくなった)のは「一切合切排出ならぬ!」という集団ヒステリーの結果だよね。β線とγ線の違いすらもわからぬままに徒に煽り騒ぎ立てたマスメディアの不勉強さを糺すべきだと思うが
--- Toshiboumi bugbird Ohta
Re:やれやれ。。。 (スコア:2)
ええと。除去作業と漏水の関係を知りたいなぁ。除去作業をやって濃縮された汚染水が漏れていたということなら、お説の通りヤバいわけなんだけど。
--- Toshiboumi bugbird Ohta
Re:やれやれ。。。 (スコア:2)
除去/分離に関わる装置が所期の通り動いているかどうかなんてのは、私の議論の対象じゃないです。トリチウムという放射性物質とその放射線に関わる基本的認識評価がおかしいんでないかい? というのが大元の話し。そこからここまであらぬ方向へ脱線しちゃうのがそもそも(放射脳的脊髄反射で)終わってるよな… と、いうことで FA。皆様どうもお疲れさまでした。
--- Toshiboumi bugbird Ohta
Re:やれやれ。。。 (スコア:2)
理論的には可能なんだが、もともとの質量が小さくて質量差も小さいから蒸留で有意に分離・濃縮するのは結構しんどいのよ
--- Toshiboumi bugbird Ohta
Re:やれやれ。。。 (スコア:1)
ちなみに文字盤には「H3」の文字と放射能マーク入り。
Re:やれやれ。。。 (スコア:2)
ここでいっている「ヘロヘロ」は透過力だけじゃないよ。あなたのようにウラン族のような重核種の放射性物質が出す放射線と一緒くたにしてる輩ばかりなので「やれやれ」なの。
--- Toshiboumi bugbird Ohta
Re:やれやれ。。。 (スコア:2)
トリチウムによる内部被曝の問題についてきちんとした科学的指摘ができている情報はあるのかな? そこら辺の情報が明確にあるのならぜひ教えて欲しい。実はわたしも充分な情報は持っていないので(多分評価する以前の問題という認識で今までまともに評価されていなかったはず)。とりあえず、トリチウムによるβ線で惹起されるような外部被曝についてのヤバい話しは(放射脳が喚き散らしてはいるけど)ないという認識だけど?
--- Toshiboumi bugbird Ohta
Re:やれやれ。。。 (スコア:2)
あ、内部被曝についても同様。ソースがあればぜひ教えてください。
--- Toshiboumi bugbird Ohta
Re:やれやれ。。。 (スコア:2)
ヨウ素の放射性同位体についての話しは何度も盛り上がっては(ツッコミを喰らって維持が出来なくなって)萎んでますね。福島原発事故でヨウ素の放射性同位体が「ベント」などによって放出されてしまったのは紛う事の無い事実なのですが、それ以降なんだかんだ(再臨界だ、メルトダウンだ)と再三騒ぎとなる根拠とされたヨウ素放射性同位体の検出騒ぎの正体は、甲状腺疾患治療のために投与されたヨウ素放射性同位体だったわけで。
甲状腺疾患治療のためにはかなり大量のヨウ素の放射性同位体が投与されます。患者から排泄されたヨウ素同位体が上水浄化場や下水処理場の検査で検出されちゃうくらいのしろものです。まぁ、それぐらいの解析度で日頃から測定していると云う事でもありますけどね。
--- Toshiboumi bugbird Ohta
Re:やれやれ。。。 (スコア:2)
2011年 8月〜9月にかけて奥州市で下水処理場からヨウ素 131 が有意に検出されたために「福島第一原発事故で再臨界が発生した!」と、嬉々として煽っている放射脳厨が居ましたね。
で、実際には(核分裂反応によって生成する)セシウムなどの同位体が同時に検出されなかったことから、甲状腺疾患の治療のために投与されたヨウ素 131 以外に原因が考えられないわけで(5億ベクレルまでの投与であれば、患者は入院せずに帰宅ができます)、そこら辺を指摘されると「原発再臨界」の風説は急速に萎んで行きました。まぁ、後はその焼き直しが何回か繰り返されてますけどね<いまここ
ソースについては、このコメントに書き込んだキーワードでぐぐってね。あなたが放射脳だときめつけるつもりはこれっぽっちも無いけど、放射脳の人って「ぐうの音も出せない」ソースを示すと「御用学者ガー」と壊れたラジオモードになって正常な議論が継続出来なくなることが多々あるので(つか、煽り厨のソースを晒そうとしたら、全滅状態だったw というオチなんだが)。
--- Toshiboumi bugbird Ohta
危険度の順で。 (スコア:1)
桁違いに放射性レベルの高い汚染水が垂れ流しになっていた記憶もありますし、
現場の状況(何から対策できるか)や、貯められる汚染水の量の制限もあると思います。
全体を見ながら、危険度の高いところから順に対策を進めて欲しいなぁ... と。
国も、お金を出す以外に、できることがあるでしょうに。
よし日本トリチウム学会でもつくるかな (スコア:1)
・実はトリチウムはこんなに体にいいとみのもんたに言ってもらう
・水とリチウムは日本の産業に欠かせない<電池とか
・トリチウム入り蒟蒻の開発
やることが多すぎるな
Re:よし日本トリチウム学会でもつくるかな (スコア:1)
よし、キーホルダーに詰めて売ろう!
#もう5年も前か~
Re:よし日本トリチウム学会でもつくるかな (スコア:1)
・実はトリチウムはこんなに体にいいとみのもんたに言ってもらう
立川志の輔にも言ってもらわないと。
教訓 (スコア:1)
結局のところ、手に負えないものは扱うな、っていう有難い教訓を世界に広めたっていう事で、
さっぱり水に流そうや、って感じでは駄目なんでしょうか?
駄目なんだろうなぁ。
なんにせよ、東電も国も見識があると(思われる)方々の発言って、
だんだん小学生レベルな発言になってきている気がするこの頃。
しばらくは、東北地方の漁業の行く末を見守る感じでしょうかねぇ。
Re:トリチウムがというより。 (スコア:2)
想像なんだけど
物理的に、ただし核物理とは違う方向で意味がありそうな気がします。
重水(D2O)って軽水とはだいぶ物理的な性質が違います。重水中では高等生物は生きられません。
これは三重水素水(HTO)でも一緒じゃないのかな。分子量同じだし。
で、比重は軽水の1.1倍。この程度比重が違うと、海水で希釈されることを期待して流しても
海底に沈んで溜まり、付近の生物に(放射線とは関係なく)悪影響を与えることがあるのではないでしょうか?
Re:トリチウムがというより。 (スコア:1)
想像に突っ込んじゃ駄目なのかもしれませんが、
重水や三重水素水中では高等生物は、(放射線とは関係なく)悪影響を
受けというソースプリーズ。
> 分子量同じだし。
軽水も分子量同じで、高等生物生きられます。違いは何なのでしょうね。
tea_cupは、重水中でも軽水中でも、アクアラング無しで、
4分は生きられないと思うけど、そういうことですか。
Re:トリチウムがというより。 (スコア:2)
ノート内のリンク先を辿っていけば、一次情報が得られるかと。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88:%E9%87%8D%E6%B0%B4 [wikipedia.org]
Re:トリチウムがというより。 (スコア:2)
重水や三重水素水中では高等生物は、(放射線とは関係なく)悪影響を
受けというソースプリーズ。
重水(非放射性)のMSDSでも読めとしか。三重水素水は知らん。
軽水も分子量同じで、高等生物生きられます。違いは何なのでしょうね。
酸素の同位体(17O(0.04%)や18O(0.2%))を無視すると、
軽水(1H2 16O)は18、重水(D2 16O)は20。
三重水素水((1HT16O)も20。
T2 16Oなら22だけど、これは無視してよさそう。
#もっとも、かなりの濃度(10%とかそんなレベル)じゃないと影響なさそう、という気もしています。
Re:トリチウムがというより。 (スコア:1)
三重水素の総量なんて100グラムに満たない量ですよ。
まずその辺を検討し理解してから悪影響云々とか言いましょうや。
Re:トリチウムがというより。 (スコア:1)
三重水素水と軽水は、分子量が違うでしょ。
化学的性質は同じだけれど。
Re:トリチウムがというより。 (スコア:1)
有害物質を水滴あるいは砂粒、薄める媒体を空気だと思ってください。
多量の水あるいは砂がいっぺんに降ってきたら命があぶない。
総量がある程度少なくても、ひとかたまりになってぶつかってきたら怪我をするかもしれない。
でも充分”薄めて”弱い雨や砂混じりの風くらいだったら、総量が多くても生き物はなんとか対応できたりする。いのちはだいじょぶ。
一粒の有害物質が長期に影響を……という話もあるかと思いますが、トリチウムはそもそも環境にある程度存在するものですので(もちろんものすごく少ないですが)、充分薄めたら問題ないと言っても良いかと思います。
問題はその「充分」がどのくらいになるかなんですけどね。そこは結局理論より現実用意できるものから割り出されることになるんでしょうが…
Re:トリチウムがというより。 (スコア:1)
皿洗いの油汚れは洗剤で分解できます
ゼロにできると思っていいでしょう
が、その洗剤は「影響がなくなった」と思うまですすぐことしかできません
ご家庭の食器はちょろっとすすいだとこでやめてしまいますけど、実験器具では20回もすすいだりします
多少洗剤を食べたくらいで死ぬことはないので人間の食器は数回すすげばよくて、(洗剤の存在が影響を与える実験の)実験器具はもっと厳しく洗う必要がある
最終的に下水行きになる洗剤は変わらないとしても、どちらの基準にも意味はあります
Re:将来の核融合炉の燃料として保管できないかなーーー (スコア:1)
>核融合炉の燃料として二重水素と三重水素が必要なので、抽出して保管しておけないかな?
他のコメントにもありますが、半減期が12年ちょっとなので難しいと思います。
Re:将来の核融合炉の燃料として保管できないかなーーー (スコア:1)
Re:ではトリチウムの濃縮蓄積をします!! (スコア:1)
地震でお流れになっちゃったからなぁ
# そういえばまんがサイエンス14冒頭2話が原子力ネタでなんとも
Re:風評被害だ! (スコア:1)
ここは華麗に鳥取にタゲそらしだ >鳥取チウム
Re:トリチウム*だけ*を薄めて・・・ (スコア:2)
もちろん他の放射性物質を除去したあとの水のことですよ。他の放射性物質は「水から不純物を取り除く」という方法で除去できますが、トリチウムは水素の同位体であり、水そのものとして存在しているので除去は事実上無理です。
Re:トリチウム*だけ*を薄めて・・・ (スコア:1)
> 他の放射性物質は「水から不純物を取り除く」という方法で除去できますが、
> トリチウムは水素の同位体であり、水そのものとして存在しているので除去は事実上無理です。
「事実上無理」とはどういう意味なんでしょう。コンテキストからすれば、「技術的に無理」と言っているのだろうけど。
同位体は化学的性質は似通っているものの、物理的性質は大きく異なります。三重水素の分離については、東電発表資料 [tepco.co.jp]をどうぞ。技術的には可能ですね。
ゼニカネ的な話とすれば、どれもエネルギー馬鹿食いなので、東電的には止めたいでしょうね。
Re:トリチウム*だけ*を薄めて・・・ (スコア:3)
もちろん、水から三重水素水の濃縮抽出すること自体は技術的に可能です。汎用的な同位体分離法である遠心分離法や拡散法はもちろん、ご指摘の通り三重水素は水素との物性の違いが大きい(他の元素では同位体同士の質量は数%の違いですが、HとTでは3倍違いますからね)ため、蒸留法・交換法・電解法などより効率のよい方法もあります。
ただ、効率が良いと言ってもそれは遠心分離法などと比べての話で、「水から不純物を取り除く」こととはレベルが大きく異なります。福島第一原発で必要とされているのは「日量500トン以上の規模で汚染水を処理可能な施設を運用する」ための技術で、それにはとても追いつかないというのが「事実上無理」の意味です。
Re:トリチウム*だけ*を薄めて・・・ (スコア:2)
ここに返信しましょうか。
電解法は水を電気分解した時に軽水より重水のほうが分解されにくいことを利用する方法です。分解して水素ガスと酸素ガスが発生したあと、残った電解液中の重水濃度が高くなります。これは分解されにくいというだけですから、水素ガス中に重水素や三重水素が含まれることを大きく抑制できるわけではありません。
ノルウェーの工場とはノルスク・ハイドロのリューカン工場 [wikipedia.org]のことですね。日量32トンというのは上記記事にはありませんが、重水生産量4.5kgということですからそれくらいの原料水は使ったのでしょうね。ただこれは「重水を作る」ための工場であり、「重水を除去した水を作る」ためではないので、この工場と同等のものを福島第一原発に作ったとして、どの程度トリチウム濃度を下げられるかはわかりません。ご存知でしたらお教えください。
電解法で除去する場合、どの程度の規模の施設が必要か考えてみましょう。とりあえず経済産業省でこのような資料を見つけました。
新型転換炉原型炉「ふげん」の重水精製装置における重水精製(トリチウム分離)実績について [meti.go.jp]
ふげんは重水を減速材とする新型転換炉ですが、保守作業中に軽水が混入したり、中性子を吸ってトリチウムが発生するため、劣化した重水を再精製する装置が備えられていました。仮にこの精製装置を福島第一原発に備え付けるとします。
(もちろん、この装置は最適のものではありませんし、大規模化すれば効率やコストも大きく改善されるでしょう。あくまでたたき台としての仮の計算です)
装置の設置スペースは縦横13m*18m、高さ17mです。建屋も含め、福島第一原発の汚染水貯蔵タンク約2個分と考えるとイメージが湧くと思います。
装置費用は建屋含まずで7億円、処理能力は日量0.03トン、ランニングコストはトンあたり2000万円です。
日量500トン以上処理するためには、この装置が約17000基必要です。設置スペースはタンク34000個分、現在およそ350個あるはずなので、その100倍の敷地が必要です。
装置費用は建屋含まずで約12兆円、ランニングコストは一日100億円、今後50万トン処理するとして1000日間、10兆円かかります。
コストだけでもとんでもない規模です。東電に全額払わせて電気料金も上げてはいけないとなれば、間違いなく経営破綻ですね。電力供給のためには国有化なりで救済する必要があるでしょう。税金が投入されますね。
コスト以外にも問題は山積です。まず敷地は明らかに原発内では足りません。周辺の土地を買うか借りるかし、造成して作ることになります。しかし今の国や東電と地元との信頼関係からして、交渉が成立するとはとても思えません。
なんとか成立しても土地購入費、造成費、建屋や配管の建設費が別途かかります。建設期間も何年かかることやら。またここに建設技術者や資材が集中すれば、他地域の震災復興工事がさらに遅れることでしょう。
複雑な装置や長大な配管を考えると、汚染水や水素ガスが漏れるリスクも相当のものになるでしょう。
また、装置や配管の運用、保守点検には人が要ります。1基あたり技術者1人作業員2人では足りないと思いますが、それでも5万人以上ですね。
コストを考えて作らないのは許せないという方々は、上記の問題も全部受け入れるというご意見なのでしょう。私はそれだけの問題を抱えるくらいなら、汚染水は流してしまって、お金があるなら避難者や漁業関係者への補償、医療費支援、復興支援などに回したほうがより多くの人を救えると思いますが。
この試算は大げさすぎる、もっと効率のよい処理施設を作れるはずだというご意見の方、まったくその通りです。あくまでたたき台ですので、大規模化・大量生産すれば1基あたりのコストや処理能力も大きく変わるでしょう。
そもそも装置自体が既述のとおり汚染水には不適切です。ふげんで使用されていた装置の排水中のトリチウム濃度は4E+3(Bq/ml)で、排出する際に100倍に希釈していましたが、今回はこの装置排水程度の汚染水を処理して希釈せずに6E+1(Bq/ml)以下にしようというのですから。
おそらくこのような低濃度での処理は蒸留法の方が優れていると思いますが、蒸留法でやった場合の規模やコストについての情報を見つけられませんでした。もしご存知でしたらぜひお教えください。
ただ、効率で言うならたたき台の10倍程度ではまだまだ足りないでしょうね。100倍以上の効率があってようやく現実味が出てくる感じでしょうか。