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サイエンス

インドの「科学と神話の混合」に対し科学者らが反発 157

ストーリー by hylom
それはそれ、これはこれ 部門より
taraiok 曰く、

インドのパイロットトレーニング施設の元校長であるAnand J. Bodas氏が科学議会の席上で、「世界最初の飛行機の発明者はライト兄弟ではない、古代ヒンドゥー教の賢人Maharishi Bharadwajによって作られた」と主張したことが物議を醸しているそうだ(The Washington PostBusiness StandardSlashdot)。

また、別の科学会議に出席したHarsh Vardhan科学技術大臣は「ピタゴラスの定理を発見したのは、ギリシャ人ではなくインド人である」と発言したという。このようなインドの驚くべき主張は、科学会議の席上だけで行われているわけではないそうで、たとえばナレンドラ・モディ首相は10月ごろ、ヒンズー教の象の鼻を持ったガネーシャ神が整形手術の始祖的な存在であるとする発言を行っている。

このような、科学会議の場での科学と神話を混合するインド関係者の発言に対し、米国などの科学者からは反発が強まっているそうで、「疑似科学に科学的なプラットホームを与えてはならない」として、約200人以上の科学者が先の古代インド航空機などの話題を含む講演に反対するオンライン署名も行われているそうだ(MumbaiMirror)。

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  • by racco (37699) on 2015年01月08日 9時55分 (#2740019)

    「ピタゴラスの定理を発見したのは、ギリシャ人ではなくインド人である」というのは枝葉を端折った言い回しかもしれないけれど、「科学と神話の混合」とまで言うのはむしろ科学に対して無頓着な主張だと思う。欧米人の進化論否認のような科学に宗教を正面衝突させる無謀な試みとはまったく違って、お偉いさんの与太話として聞き流すべき程度の問題だと思う。

    三平方の定理が最古の定理だといわれているように、実学的なピタゴラスの定理の発見という意味ではギリシャよりずっと遡れることはよく知られている。ギリシャ人の成果が、それを算術で書き下して非整数領域まで拡張できる可能性を示唆したことだというならピタゴラスの定理を発見したのはギリシャのエウクレイデスということになるのだろうけれど、少なくとも、a2 = b2 + c2なる整数a,b,cの組み合わせ(ピタゴラス数)が見出されたのは、新石器時代までさかのぼると考えられているし、インドでも実際に数表が見つかっている。インダス文明の建造物には(3,4,5)、(5,12,13)、(8,15,17)、(12,35,57)といったピタゴラス数が使われている。

    測量が必要になるほどの大型建造物や灌漑設備を作ることになった文明のほとんどで古くにピタゴラス数が見出されていたのは事実(当然といえば当然だし)なので、インドをすごく持ち上げる必要は無いが、ピタゴラスの定理をギリシャ人より先にインド人で知っていたというのは、まったくのでたらめではない。

    「世界最初の飛行機の発明者」というとやはりライト兄弟だけれども、それは動力つき凧によって人を乗せた飛行実験に成功した最初の実験家であるというだけで、欧米だけでも、風がなくても揚力を得られることを示したリリエンタールによる滑空、人を乗せて運べるほど安定的で十分な揚力を得られることを実証したサミュエル・フランクリン・コーディ [sfcody.org.uk]や安定させるための要素を明確にしたバブルス・ハーグレイブによるボックスカイトの研究は、原理的には飛行機をすでに実証している [keepitsoaring.com]し、アイディアを書き下したという意味ではレオナル・ド・ダヴィンチは相当に具体的に示している。そもそも流れの中に形状と姿勢を決めて安定させることができれば揚力を積極的に利用できるということを示していた「凧」自体は、ヘレニズムの時代より前に東方から、普通は中国から入ってきたと考える。現代の商業風に、先に出願をしたら発明者っていう評価をすれば、ライト兄弟の成果はごく一部に限定されてしまう。

    インダス文明はアーリア人に滅ぼされたから今のインド人と違うとかいい始めるともうすこしややこしくなるけれど、中国かインドかはともかくとして、後進国だった欧州が先ということはありえない。

    • by racco (37699) on 2015年01月08日 10時06分 (#2740029)

      レオナル→見ないで

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    • by Anonymous Coward

      動力つき凧によって人を乗せた飛行実験に成功した最初の実験家であるというだけ

      それはその通りです。ただ、元記事 [business-standard.com]を読むと分かるのですが、今回問題になっている主張は
      「リグヴェーダによると7000年前に40基のエンジンを搭載し大陸間も飛行可能な60m級の飛行機が存在した」
      みたいな荒唐無稽な話でして。

      # そういや日本にも「古事記には宇宙船が登場する」みたいな主張がありませんでしたっけ?

  • by iwakuralain (33086) on 2015年01月08日 9時27分 (#2740000)

    証明しようよ

    # でもまぁ言うだけならタダだし

  • 自国が上向き調子の時とか、「次の時代の世界の中心は俺の国じゃね?」的な状態になると、「我が国は太古より世界の中心だったのだ」なんて馬鹿な事を言う奴が出る訳で……。
    まぁ、麻疹みたいなモノじゃないの?

  • by Anonymous Coward on 2015年01月08日 8時16分 (#2739948)

    しかも大統領がそんな事言っちゃうような国がなに言ってるんだか

    • 国際社会での熾烈な競争の中で自国のアイデンティを保つために神話に頼らざるを得なくて、イニシエにまでさかのぼって神話と歴史がごっちゃに・・・
      そういうのは割と多いかも。
      自論を余所(の国)にまで強制しない限りは勝手にやらせといていいんじゃないすかね。
      日本でも神代の頃にさかのぼれば色々ごっちゃになってそうだし

      #あらゆるものの起源を主張するのはかの国が起源

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      • by Anonymous Coward

        基本的にはだめでしょ。

        嘘や物語でまやかしのアイデンティティをとりつくろわないとやっていけないような国なら、
        そもそもその国がひとつの国としてまとまっていることに、どういう意味があるのか。

        世界にはそういう国があるかも知れないけど、インドはそんな弱小国ではないだろうし、
        日本もそんなふうになってほしくないですね。日本人は史実と神話は今のところ区別できてる
        とは思いますが。アメリカはこの点に関しては病んでいるとしか言いようがありません。

        • by Anonymous Coward

          バチカンとかイスラエル/パレスチナとか。

        • by Anonymous Coward

          >>嘘や物語でまやかしのアイデンティティをとりつくろわないとやっていけないような国なら、
          >>そもそもその国がひとつの国としてまとまっていることに、どういう意味があるのか。

          その国を纏めようと必死な人たちには意味があるんじゃないですか?
          アメリカも世界の警察神話で必死に纏めようとしてますね。

        • by Anonymous Coward

          科学の起源を神話に求めたり進化論を否定してみたり、そういった屁理屈でイデオロギー的妥協してもらうしかない…という面もあるかも。
          インドもアメリカもモザイク国家だから。

    • 米国でも進化論を否定しているのは科学者じゃないですからね。(そういう人がいない、とは言わないけど)
      別に科学者じゃなくても、進化論を否定している人(というか、創造論を史実として捉えている人)に冷ややかな目を向ける人は相当の割合でいます。

      個人的にも進化論を否定している人を知っていますが、創造論を信じている人は非常に深く入れ込んでますので、大統領の信条がどうであれ、ある程度それに同調するような立場を取らないと選挙的に難しい、という背景もあります。

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  • by Anonymous Coward on 2015年01月08日 8時52分 (#2739979)

    これ、フィクションなら何の問題もない話だよね。

    ラピュタの光はソドムとゴモラを破壊した。インドではラーマヤナの火と呼ばれている。

    ただ問題は、現代だろうが古代だろうが、そういうフィクションに基づいた迷信を作り出そうとしている人たちが常に一定数存在していることで、それはキリスト教だろうが道教だろうが変わらない。そういう神秘主義には、常に理性的な視点で対処していかなければいけない。

    そういう意味での反宗教だった仏教(バラモン教、バラモン階級の優越、ヴェーダ的輪廻転生の意義を否定)が、竜樹の大乗仏教(バラモン教的な神々の存在を認める。帝釈天や梵天はOK)で骨抜きにされた後、ヒンドゥー教はインド亜大陸における仏教の完全排除に成功しているわけだから、ヴェーダ系宗教はこの方面で抜群の実績を持っている。

    まあ、それもこれも、宗教書としてのヴェーダが優秀すぎるんだろうけれど。つまり、中二病を煮詰めたみたいな内容をでっちあげているから、基本的にヴェーダやその二次創作の内容で世の中のほぼ全ての事象が説明できるし、「だから言ったとおりだろ、ほら、ここに書いてある」ってすぐ言えてしまう。しかも、ヴェーダ自体の古さは確かだ。だから、ヴェーダ的な解釈を似非科学っていうのは簡単だけど、この戦いで完勝するのは無理なんじゃないかな。

    個人的にはナザレのヨシュアがヴィシュヌのアヴァタールっていう展開になってくれれば面白いと思うんだけど。

    • by kouno (5101) on 2015年01月08日 10時22分 (#2740044)

      この全文を読んでゲームとアニメの映像しか思い浮かばなかった。
      単語自体は普通に知ってるはずなのに…

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    • by gen_no_suke (45550) on 2015年01月08日 10時37分 (#2740056) 日記
      ムスカ「ラーマーヤナではインドラの矢とも言われているがね」
       だったと記憶している。
      親コメント
    • by Anonymous Coward

      フィクションの力こそ人類の夢だから。

  • 飛行する機械が作られてたとか数学上の発見がなされたなんてのは、そういう事実があったかどうか検証すればいいだけなんだから
    根拠は?と問うてそれを検証すればいいだけだと思うけど。
    活版印刷はどこで発明されたかの話を思い起こすと、ライト兄弟しか発明できないはず、
    ピタゴラスしか発見できないはずという考えが元になってはいないかと

    • 何をもって「発見」とするのかにぶれがあるから。

      例えば、古代インドの天才建築家が、ピタゴラスの定理と同様の法則を独自に見つけて自分の設計に生かしたけど、
      その技術を後に伝えることはしなかった、みたいな「発見事例」をどう捉えるべきか。
      実際に地動説なんかだと、コペルニクスよりも遙かな昔の文明でも、そのアイデア自体は散見されてる。

      なので、今の人類社会に対する貢献が大きく、強い影響を残していると言う意味で、「発見」というのは、
      単にそれを見つけたというだけではなく、そこから発展させてより深く掘り下げて成果に繋がった、ぐらいに定義する場合が多い。

      一方で、誰かが発見したけど発展させられず後失われた何かも、
      それはそれで考古学的的な意味で面白いので、「発見」と呼んで遊ぶ文化もある。

      問題は、そういう種類の違う事柄を混同させることで、
      「単なるおもしろ小話」を、「現代社会に対する貢献」と混同させよう! とかやっちゃう辺りと、それに騙されちゃう民衆。

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    • by Anonymous Coward

      反証可能性が低い命題は反証するのに時間がかかるのに対し
      ひとたび主張してしまえば「学術的な場で言及された命題」として独り歩きしてしまうのが問題ってことでしょうね。

      権力者の与太話を反証するのにリソースを割くほどの余力が科学界にない一方で
      そういう発言って思いの外影響力があるのが困りものですよね。

    • by Anonymous Coward

      蒸気機関ですら紀元前に存在してたんだし、現代人は古代をなめすぎてるんだよね。

  • by Anonymous Coward on 2015年01月08日 9時24分 (#2739999)

    最初の飛行機の話はアウトなんだろうと思うが、「ピタゴラスの定理を発見したのは、
    ギリシャ人ではなくインド人である」はそうであっても不思議はない話。

    科学史的な検証がされていないならトンデモ呼ばわりはまぁ仕方ないが、
    非科学的かどうかって判断の対象じゃないだろう。

    「ヒンズー教の象の鼻を持ったガネーシャ神が整形手術の始祖的な存在である」
    なんてのはアスクレピオスの杖を後生大事にシンボルにしている西洋医学界と
    何が違うのか分からん。

    • 欧米の論理≠科学的 (スコア:4, すばらしい洞察)

      by Anonymous Coward on 2015年01月08日 11時01分 (#2740076)

      飛行機の定義次第だけど、エンジンで自力で離陸できた飛行機はライト兄弟でもいいと思う。
      でも、それよりも以前に、ハンググライダーに近い、高いところから滑空するだけの飛行機なら、ライト兄弟以前に実現者がいたとしても、トンデモ科学とまでは言えないと思う。
      人間が登場しての実際の飛行はライト兄弟が先だけど、飛行器の発明ならば、日本の二宮忠八が数年早いよね。

      整形手術というか、外科手術は古代から行われていたことは欧州で発見された5000年くらい前の古代人の遺骨によって判明しているし。
      神話とは言うけれど、文明以前の古代だと、シャーマンみたいな存在が外科手術をやっていて、それが口頭伝承で少しずつ誇張されて神話になったとも思える。
      日本の神話だって、神話は歴史とは認定されていないけど、神武天皇に相当する人物は実在したんじゃないかとも言われてるし、神話が必ずしもでっち上げされた嘘ばっかりってわけじゃない。

      そもそも、コロンブスがアメリカ大陸を発見したという歴史イベントなんて、明らかに大ウソだよね。
      その数千年以上前から黄色人種系の人々が発見して住んでいたし、欧州人で言っても、コロンブスより以前にバイキングはアメリカ大陸に渡航していたよね。

      欧州人の作った歴史や科学が正しいという思い込みは、必ずしも正しいものばかりじゃないのよ。

      親コメント
    • by Anonymous Coward

      ガネーシャの首は人間の頭が変形したものじゃなくて、そこらへんにいた象の首とすげかえたものなので、神話視点で見てもそれを整形って呼ぶのはおかしい。

      錬金術は「物質を構成する要素を抽出することができる賢者の石を作ること」が目的で、そのプロセスでは魔術的・神話的なアプローチは一切していない。目的は非科学的に見えても当時は大真面目だったし、実際に西洋医学がその錬金術を礎にして発展したのも事実なのでおかしくない。

  • by Anonymous Coward on 2015年01月08日 9時39分 (#2740010)

    ゼラズニイはインド人だった!

    #いや、違うか
    ##アンバーシリーズ全然見つからねぇ…

  • 元素集合の術でロボットを作ろう。

    --
    らじゃったのだ
    • ダイバダッタはとても偉いお坊さんかと思ったら、お釈迦様に象をけしかけたたオッサンだった。

      #なんの魂を宿したんだろうか…

      親コメント
      • by Takahiro_Chou (21972) on 2015年01月08日 22時57分 (#2740640) 日記

        ダイバダッタはとても偉いお坊さんかと思ったら、お釈迦様に象をけしかけたたオッサンだった。
        #なんの魂を宿したんだろうか…

        法華経の中に「ダイバダッタは釈迦の前世の師であり、釈迦が悟りを開けたのはダイバダッタのおかげ。現世では釈迦の敵となったダイバダッタだが、前世で釈迦を悟りに導いた功徳によって、遥か未来には自分も悟りを開いて仏となり、無数の衆生を救うだろう」と云うエピソードが有って、それから取ってるんじゃないかと。
        (レインボーマンの原作者の川内康範の実家は日蓮宗=法華経を重視してる宗派のお寺)

        親コメント
  • by Anonymous Coward on 2015年01月08日 10時20分 (#2740042)

    って「○○の起源は××ニダ」という話を無条件スルーしてる日本人が。

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計算機科学者とは、壊れていないものを修理する人々のことである

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