「宇宙の概念を根本から覆す」暗黒流動は存在しない? 21
ストーリー by hylom
暗黒じゃない流動だった? 部門より
暗黒じゃない流動だった? 部門より
insiderman 曰く、
「我々の宇宙の外側には、観測不能な未知の何かがある」という説がある。2008年に数百個もの銀河団が同じ方向に高速で引っ張られているという「暗黒流動(ダークフロー)」という現象が発見され、これは宇宙の外側にある物質の重力に引き寄せられているという理論である(2010年のナショナルジオグラフィックニュース記事)。
この理論がもし正しければ、我々の宇宙の外側に、別の宇宙が存在するということになるのだが、超新星を観測・分析した新たな研究では、この理論を否定する結果が得られたという(ナショナルジオグラフィックニュースの記事)。新たに得られた結果では、暗黒流動の発生要因は宇宙の外からの力ではなく、我々の宇宙内にある超銀河団やまだ観測されていない何かの引力によるものだという。
果たして我々の住む宇宙以外の宇宙が存在するのか、SFファン的には非常に興味深い問題であろう。
同じ方向に高速で引っ張られている (スコア:2)
”同じ方向に高速で移動している”の方がしっくりとくる。
しかし、”移動”に変えたとしても、固定された3次元空間中を運動している、という印象を受ける。
3次元空間そのものが膨張していて、そのように見える、ということはないのだろうか?
Re:同じ方向に高速で引っ張られている (スコア:5, 興味深い)
ここの話はいろいろ面倒くさいのですが,以下のような流れを辿っています.
1. 宇宙マイクロ波背景放射(CMB)が観測される.これは宇宙の晴れ上がり時(*)に,熱かった周囲全部からまんべんなく放射された光が残ったものなので,その周辺全部から来るCMBを重ね合わせると,(局所的な)静止系のように扱える.
*宇宙の晴れ上がり:それまでエネルギーが高すぎてプラズマ化&光を強く吸収していたしていた物質が,冷えて中性原子へと結合,光が宇宙空間を素通りできるようになった.
2. SZ効果というものがある.これは銀河のようにエネルギーの高い遊離電子を持つ媒体中をCMBのマイクロ波が透過すると,電子と光子との相互作用(逆コンプトン散乱)によって光子のエネルギーが変化する現象.
熱的効果と運動的効果の二つがあり,後者はいわばドップラー効果と似たようなもので,CMBのスペクトルのピークを低波長側にずらしたり高波長側にずらしたりする.
CMB静止系に対しランダムに動いているなら,この運動的な効果はランダムに分布する.一方,CMB静止系に対し多数の銀河が同じ方向に動いているなら一軸性の歪みが出る.例えば今,銀河全てが「右」から「左」に動いているとしよう.我々に向かって右から飛んでくるCMB(のうち,銀河を通過してきた部分)はエネルギーをもらって波長が短くなり,左から来るCMB(の以下略)は逆に波長が長くなる.ここから,多くの銀河が(CMB静止系に対し)右から左へと動いていることが分かる(ただし,観測する我々から見た視線方向の運動しか分からない).
3. 元々の研究は,CMBに含まれるSZ効果の影響を抜き出すことで,ハッブル定数を(既存の方法とは少し違う方法で)決めてやろう,という研究だった.しかし彼らが調べたら,そもそも全体がCMBに対しある方向に動いている,と思える結果が得られた.
4. そこで彼らは「CMBの発生後に,(我々の観測可能な領域の)外側から別な何かによって銀河が引っ張られており,それがCMB静止系との速度差(流れ)として検出されているのではないか?」という仮説(ダークフロー)を提唱.
引っ張る「何か」の候補としては,
・宇宙の観測可能領域の外側に,謎の超重量級の集団がある(ただし,何で我々の周辺と違ってそんな巨大集団が出来るのか?という問題が生じる)
・ブレーン宇宙論で言うところの「お隣の宇宙」が重なっており(我々の宇宙を1枚の紙とすると,上に別な宇宙の紙が何枚も重なっている,という説がある),そっちに銀河の大集団か何かがいる(ただし,そもそも隣接宇宙自体が今のところ実験的事実のない仮想的存在)
などが考えられる,としている.
まあ要するに,
・CMB静止系という,「凄く昔の時点」での「ここら一帯の重心」のような座標系がある.
・外から力が加わらなければ,「ここら一帯の運動の平均値」は今でもその重心に対して静止しているはず.これは宇宙が(等方的に)膨張していても変わらない.
・それに対する銀河の速度を調べたら,なんか今の重心運動は,昔の重心と一致せず一方向に動いていた.
・何かに引っ張られているに違いない!(ダークフロー)
という仮説.
ただし,元々非常に微小で揺らぎも含むCMBから,さらに銀河を通ることで起こる微妙な変調成分を抜き出して議論しているので,統計的な取り扱いを含めダークフローには懐疑的な人も多い.
それに対し今回,Ia型超新星のデータで検証したら,そんな統一的な運動は無さそうだよ,と.
Re: (スコア:0)
とても細かい部分ですが指摘させてください。
この話の場合、スニヤエフゼルドビッチ効果(SZ効果)で見ているのは銀河じゃなくて銀河団の中の高温プラズマですので、
文中の「銀河」は「銀河団」とするべきだと思います。
例えば暗黒流動屋さんたちの最新論文のarXiv
http://jp.arxiv.org/abs/1012.3214 [arxiv.org]
の要約冒頭にも
We present new results on the "dark flow" from a measurement of the dipole in the distribution of peculiar velocities of galaxy clusters, ...
とあります。
Re:同じ方向に高速で引っ張られている (スコア:1)
>”同じ方向に高速で移動している”の方がしっくりとくる。
同じ方向の移動というのが観測から出た結果で、その解釈としてカシュリンスキらは、
「同じ方向に高速で引っ張られている」という仮説を出してます。
確かに「「暗黒流動(ダークフロー)」という現象」としては移動の方が適切だと思います。
「説」や【理論」だったら「引っ張られてる」でいいと思いますが。
>しかし、”移動”に変えたとしても、固定された3次元空間中を運動している、という印象を受ける。
その通りで、マイクロ波背景放射が止まってる系での話です。
昔、我々の近くの構造はある方向に落ちてるんじゃないかという
グレートアトラクタという説がありました。
実はその遥かに広範囲に渡って同じ方向に向かって
動いてたというのがダークフローです。
>3次元空間そのものが膨張していて、そのように見える、ということはないのだろうか?
(2010年のナショナルジオグラフィックニュース記事)のリンク先に大体書いてありますが、
右側みると遠ざかり左側見ると近づいてる、
そんな感じの「全体が同じ方向に動いて見える」という話なので
膨張じゃ説明されないと思います。
いろいろな説出ますね (スコア:2)
宇宙の広がりが「加速」している事実があって、それはつまり、この宇宙以外の何かから、何らかの力がかかってるって事だから、
個人的には宇宙の外に何かがある方が不思議ではないと思う。
#きっとおっきな神様が宇宙っていう粘土を捏ねてるんでしょう
Re: (スコア:0)
>宇宙の広がりが「加速」している事実があって
これは良いんだけど、だからといって
>それはつまり、この宇宙以外の何かから、何らかの力がかかってるって事だから
は成り立たない。
内的な力だけで加速膨張できるし、現在の宇宙論はほぼ間違いなくその立場(主に、空間が斥力を持つという立場)を取っている。
門外漢がこの辺で暗黒エネルギーを質問してみる (スコア:0)
> 現在の宇宙論はほぼ間違いなくその立場(主に、空間が斥力を持つという立場)
それが、↓とかで言われている暗黒エネルギーの事なのかな?
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp317.html [nhk.or.jp] 「サイエンスゼロ 宇宙の未来を決める 暗黒エネルギー」
ココで話題の暗黒流動は別物なの?
Re:門外漢がこの辺で暗黒エネルギーを質問してみる (スコア:1)
ナショナルジオグラフィックニュースで2008年の発表当時に報じられた記事 [nationalgeographic.co.jp]では
としています。
その後、研究チームの考えが変わっているかもしれませんが…
なにそれ (スコア:1)
暗黒流動という言葉を知ったのが暗黒流動を否定するニュースとは、これいかに。
the.ACount
いや覆らないよ (スコア:0)
ダークとついてる奴で覆るわけがない。
だいたい別案があるんだから。
Re: (スコア:0)
ダークなんとか理論は覆るじゃん。科学全体と個別の理論をごっちゃにしてね?
別の宇宙? (スコア:0)
これは既知の宇宙(=宇宙創生してからの時間で、光が地球まで届いた範囲)
より外側(まだ光が地球まで届かない距離or空間膨張速度が光速越えているため永遠に届かない距離)
にも巨大な物質があるはずだ!とかなくても説明できる!っていう話じゃなくて?
我々の宇宙とは別の宇宙という話ではないような気が
Re:別の宇宙? (スコア:2)
それは別の宇宙の定義の問題ですかね?
我々と何らかの因果関係を持ち得る領域を我々の宇宙ということにすると、
我々の宇宙はインフレーションのおかげで結構でっかいようですが、
宇宙の地平線…これは背景放射が発せられるとこ、ビッグバン後の
宇宙の晴れ上がりの光球の表面みたいなもんですか…より内側じゃろう
ということになります。
で、今回の話は、その背景放射に対してどうらやら一方向に動いているぞ、
ということなので、我々の宇宙の外、つまり別の宇宙が原因だろう、
という話なんだと思いますが…。
Re: (スコア:0)
今われわれの宇宙である銀河が、膨張によって「別の宇宙」になるという定義には違和感があるんですが。
Re:別の宇宙? (スコア:2)
一切の因果関係を持たないのなら、それを知るすべがないので
別の宇宙ですね。ただ、今回の場合は影響を与えているので
地平の外に我々と因果関係を持つ何かあるという期待をもたせる
話だったんじゃないかと思います(で、それを否定する結果も出たと)。
インフレーションのマルチバースだとかひも理論のランドスケープであるとかで
我々の宇宙の外にも別の宇宙がありそうだという説が語られるけど、その宇宙について
知るすべがないというのなら、ただの絵空事ですから、何か観測事実が欲しいってのは
あるんじゃないですかねー。
物理とか宇宙論は理論のほうが先行してしまっているように見えるので、
いまは新たな観測や実験事実が欲しいフェーズに入ってるのかもしんないですね。
で、天文の観測技術が向上して加速膨張のような新しい事実も出てきているし、
LHCでも新しい発見がありそうだし、ヒッグスなんてわからないことの方が多いそうなので、
これからは理論よりも、そんな新しい発見が話題になってくると面白いと思いますケド。
Re: (スコア:0)
我々の宇宙の中でそんなものを作ろうとすると初期にものすごく非一様であることを仮定しなければならないので、
その説を選ぶよりは見えない別の宇宙を選んだ方がましという考えじゃないのかなと想像します。
Re: (スコア:0)
「外側」の意味が分からないんだけど。我々の宇宙に相互作用を及ぼせるような何かが「外側」にあるとか、それもう「外側」じゃなくね?
# 今月のNewtonに「宇宙に果てがあると既存の物理法則では扱えなくなるので宇宙に果てはない。証明終」みたいなことが書かれてて顎が落ちたのでAC
Re:別の宇宙? (スコア:2)
> # 今月のNewtonに「宇宙に果てがあると既存の物理法則では扱えなくなるので宇宙に果てはない。証明終」みたいなことが書かれてて顎が落ちたのでAC
でもまぁ、エーテルが存在しないもの扱いなのと同じで、「それ」がもし存在したとしても我々の世界に決して干渉しないと証明されたのなら、科学的には存在しない(宇宙の果てはない)って言うんだろうなぁ・・・と思ってる。
Re: (スコア:0)
光が届かないんぢゃ重力も届かないだろうから、
近いけど別の宇宙みたいな変なのを仮定したほうが、
破綻が少なくてよろしいという話かなと思いました。
Re:別の宇宙? (スコア:1)
>光が届かないんぢゃ重力も届かない
そんなことはない。
ブラックホールの中から外へ、光(電磁波)は届かないが重力は届く。
ついでに言うと、ブラックホールの中から外へ電場や磁場は届く。
逆に、重力は届くが重力波は届かない。
まあ、解釈の問題ではあるが。
the.ACount
Re: (スコア:0)
電場や磁場が「届く」のは電磁波として以外ないと思うのだが・・・