
「全ての素数の積は偶数」は正しいか 278
ストーリー by hylom
無限の議論へ 部門より
無限の議論へ 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、
一部で「すべての素数の積は偶数」という命題が正しいか否かが議論になっているようです(Togetterまとめ)。
元々はスマートフォン向けゲーム「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」で出題された、「すべての素数をかけた時にできる数は、偶数、奇数のうちどちら?」という問題。「すべての素数」には2が含まれることからゲーム内での正解は「偶数」だったようですが、これに疑問を呈する声が出ています。
「素数」になんらかの条件を加えない限り、すべての素数の積はいわゆる「無限大」になり、これが偶数なのかどうかを判別できるのか、というのが議論の1つのようです。また、「すべての自然数の和は-1/12」という例のように、発散する数に対する演算を有限の数どうしの演算と同様に扱ってはいけないという話も出ています。
ちょっと補足として (スコア:5, 参考になる)
> また、「すべての自然数の和は-1/12」という例のように、発散する数に対する演算を有限の数どうしの演算と同様に扱ってはいけないという話も出ています。
これまた、誤解を与える文章ですね。
1) 「すべての自然数の和は-1/12」は、「すべての自然数の和は-1/12とみなすこともできる。」とでもすべきでしょう。
2) 発散する数に対する演算を有限の数どうしの演算と同様に扱ってはいけないという話も出ています。
これ自体は数学的に正しいのですが、前段の 「すべての自然数の和は-1/12」とは異なる話なので、
元の記事のように、1つの文章で書くのは、誤解を与えます。
さて、1) について、
まず、前提として、どうひっくり返っても「すべての自然数の和」は正の無限大に発散します(単純にいえば、無限大になる)。
ただ、以下の理由によって、-1/12 とみなすことが可能となります。(詳細は、複素解析の本をお読み下さい)
-1/12 になるのは、ゼータ関数ζ(s) [wikipedia.org]の定義から(発散とか無視して、形式的な表現として)
1 + 2 + 3 + ‥ = ζ(-1)
と表すことができます。
このままでは、左辺は発散したままですが、ゼータ関数を解析接続 [wikipedia.org]をしますと、
s = 1 以外の点で有限の値を持つことが証明されます。
その結果として、ζ(-1) = -1/12 とみなすことができ(あくまでも、解析接続した関数は、
元のゼータ関数とは違うので、あくまでも「みなせる」ということに注意)、
1 + 2 + 3 + ‥ = - 1/12
とみなすことができるのです。
Re:ちょっと補足として (スコア:3, 興味深い)
別ACです。
ポイントは「解析接続」です。これは複素平面の一部の領域で定義されている関数を、その境界から拡張して複素平面全体に拡張するという操作です。面白いのは、拡張部分は好き勝手な値を取れるわけではなく、自動的に決まるただ一つの関数になるということです。例えば、実軸上のみで定義されている sin(x) という関数を複素平面全体に解析接続すると、ただ1つの「解析関数」が得られます。なぜ一つしか得られないかというと、「解析関数」の持つ「複素数として微分できなければならない」という制限が厳しいため、好き勝手な値が取れないためです。なお、解析接続は実軸上のすべての値が分かっていなくても実行でき、無限の点における値が分かっていれば実行できることが分かっています。
さて、ここからは想像を含めた私の解釈です。ゼータ関数は Wikipedia の定義を見ればわかるように、2,3,4... での値は簡単に求められます。ですので、これらの点の値を元に解析接続が出来るはずです。それにより複素平面全体の値が得られると、-1での値も求まり、それが -1/12 になるということです。ところが、元々のゼータ関数の定義では、-1の値は 1+2+3... となります。この値は解析接続では使っていないのですが、解析接続の一意性からするとそれらは一致しているべきです。あれ?となるわけです。
ただ、この不思議な結果は何も意味がないかというと、そうでもないようで、「物理的」にも意味があるのではと、最近は言われています。カシミール効果とかくりこみ理論とか、詳しいことは知りませんが。
https://www.google.co.jp/search?client=ubuntu&channel=fs&q=1+%... [google.co.jp]
物事の見方が硬直しているのはよくない。見方を変えてみよう(幾何の写像による解決編) (スコア:5, 興味深い)
∞ 「見方を90度変えてみろ」
∞ 「…そっちじゃない。ヨーじゃなくてロールのほうだ」
8 「ほうら、偶数に見えてきただろう」
Re:物事の見方が硬直しているのはよくない。見方を変えてみよう(幾何の写像による解決編) (スコア:2, 興味深い)
いずれかの軸を90度回転で "∞" が "∞" になる立体構造だったことを知って驚愕している
Re:物事の見方が硬直しているのはよくない。見方を変えてみよう(幾何の写像による解決編) (スコア:2)
きっと縄跳びのロープのように、上下では視線に対してゆっくりなのでぼうっと見えてくるが 中間では高速なので目にとまらず透明に見えているんだ
Re:物事の見方が硬直しているのはよくない。見方を変えてみよう(幾何の写像による解決編) (スコア:1)
ピッチのほうを90度変えた結果
| になったので奇数
Re:物事の見方が硬直しているのはよくない。見方を変えてみよう(幾何の写像による解決編) (スコア:1)
Re:物事の見方が硬直しているのはよくない。見方を変えてみよう(幾何の写像による解決編) (スコア:2)
馴れ合いもなにも、書いた本人も理解していない事態でガクガクブルブルですよ。>興味深いモデ
全ての素数っていってるんだから (スコア:3)
出題側は素数が有限であると仮定しているわけで答えは偶数以外ありえない。
無限大持ちだすとか訳のわからんこと言う前に出題側の意図に気づかないと。
# 就職面接本だとこれぐらいはいいそう
私立中学の入試問題にあったような (スコア:2)
①ゼロと無限大は(2を掛けても)偶数にはなりません。
②素数は無限に存在することが紀元前に証明されています。
Re:私立中学の入試問題にあったような (スコア:1, 興味深い)
2を掛けても偶数にならないのが「無限大」なら、無限にある素数の積はその「無限大」とは違う何かである可能性はないのでしょうか?
# 高度な数学はよく分かりませんが
Re:私立中学の入試問題にあったような (スコア:2)
素数以外の数はすべて素数に分解できるので、
いわゆる「無限大」と「素数の積の無限大」は同一…だと思います。
たぶん。おそらく。probably
偶数で良いんじゃないの? (スコア:2)
2以外の素数の積は無限大かもしれないけど、2を掛けていることは明らかなんだから偶数であることには違いない。
さらに言うと3の倍数である事にも違いないし、ある任意の素数で割り切れる事にも違いない。
「xを含む無限個の自然数の掛け算はxで割り切れる」という事が言えればいいんだろうね。
なにもかも定義しだい (スコア:1)
結局、「無限大の定義」、「偶数の定義」など、またその「定義が矛盾した時の扱い方の定義」しだいな気がします。
Yasuda
うーん、難しい (スコア:1)
国語が。
「『すべての素数』の積」 = 2*3*5*7* ......
「すべての『素数の積』」 ∋ (2*3, 2*5, 3*5, 2*7,3*7,,,,,)
下のことを最初に考えて「何言ってんだ」と思ってしまった。
Re:うーん、難しい (スコア:1)
いや、そんなこと言ったら、任意の自然数は素数の積になるやん?
Re:うーん、難しい (スコア:2, 参考になる)
一応言っとくが1は0個の素数の積(空積)、素数は一個の素数の積って数えるんだぞ。
#2717435は素数の積を二個の素数の積という意味で使ってるっぽいけどな。
帰納法はどう? (スコア:1)
2は偶数。
2×3×...×(n個目の素数)が偶数だと仮定すると、2×3×...×(n個目の素数)×(n+1個目の素数)も偶数。
よって、何個かけても偶数。
# 「すべて」を「n個かける。n→∞」に変えることはできるのかな
Re:帰納法はどう? (スコア:3, 興味深い)
Re:帰納法はどう? (スコア:3, 興味深い)
帰納法は任意の有限の値に対して命題が成り立つことを示すだけで無限を扱っているわけではない。
Re:帰納法はどう? (スコア:2)
# すべての場合にできるとは限らない
Re:帰納法はどう? (スコア:1)
勉強になりました。
回答してくれた皆様、ありがとうございます。
Re:帰納法はどう? (スコア:1)
while(n--); なるプログラムは、任意の有限の整数n>0に対して、いつかは止まる。
が、nが無限大だと止まらない。
と言うように、どれだけ大きな有限の値に対して成り立つことでも、無限の値(のような概念)に対しては成立し得ない事がある。
こういう問にすべきだった (スコア:1)
2よりも大きな任意の自然数nに対して、そのnよりも小さな素数を全てとりだし、掛けあわせたものは偶数か、奇数か。
Re:さすがtwitterというべきか (スコア:5, おもしろおかしい)
いろんなイーブンがあるからね
Re:さすがtwitterというべきか (スコア:1)
オッド、twitter の悪口はそこまでだ。
Re:さすがtwitterというべきか (スコア:2, すばらしい洞察)
あざ笑われてしかるべき人がいるとするならば、それは「頭の悪い人」ではなく「学ぼうとしない人」ではなかろうか。
Re:こういった話題に対するコメントを見ると (スコア:1)
Re:こういった話題に対するコメントを見ると (スコア:1)
クイズや入試問題見ていると,揺らいでいたり,有力説が割れている学説でもさも唯一解のように扱われていて凹む。
その手の業界の人に聞いたら,解がひとつ出ないと生徒が混乱するからだって。科学と教育の乖離は激しいのかな。
Re:こういった話題に対するコメントを見ると (スコア:1)
「正解」がもらえる選択肢をタップするのがゲームとしての正解。
Re:こういった話題に対するコメントを見ると (スコア:1)
一部のゲームでは早押しが極まると最初の3文字くらいで回答を選んで点数を稼いだりしますが、それはもう設問と正答の関係とかそっちのけです。対応を覚えているだけ。
知識や思考力を問うクイズゲームとしては破綻しているとも言えますが、ゲームとしては成立してしまいます。
クイズゲームとして出来が悪い、というのとゲームとして成立する/しないは一応別ですからね。
#それを踏まえた上で、極限や無限を含む計算問題は前提によって回答が変化しうるので、ひどい悪問だとは思います。
Re:こういった話題に対するコメントを見ると (スコア:1)
スラド的に有名な例としては「フリーソフトウェアに関する記述として、適切なものはどれか。 [srad.jp]」ですね
Re:こういった話題に対するコメントを見ると (スコア:1)
どこにつけるか迷うけど。
「黒猫」やったことあるひとはわかると思うけど、
4択のクイズを30問連続正解、とかがステージクリア条件に
なってたりするんです。
その30問目にこんな問題が出て不正解とか言われた日には
それ以上ゲームやる気が失せますよ。
芸能ジャンルで、○○(知らない人)の妻(夫)は誰? なんて問題で、
選択肢に知らない人の名前が4つ並んでるってのも萎えるけど、
それは自分がそっち方面に疎いんだからしょうがない。
Re:こういった話題に対するコメントを見ると (スコア:5, すばらしい洞察)
あなたにはゲームを止めるという選択肢が残っている。
Re:こういった話題に対するコメントを見ると (スコア:4, 参考になる)
ところがどっこい,選択肢には偶数・奇数以外に「どちらの場合もある」「どちらでもない」もあったという…….
https://twitter.com/suzakus/status/536508674437435392/photo/1 [twitter.com]
有名な例 (スコア:5, 参考になる)
昔どこかで聞いた例。
1. 有理数に有理数を足すと、必ず有理数になる。
2. 従って、有理数を無限に加えたものも有理数になる。
と書けそうな気がするけど、実はこれは成り立たない。
反例:
有理数列として、√2を各桁で分解した無限数列、1、0.4、0.01、0.004、0.0002……を考える。
各要素は明らかに有理数である。しかしこれら有理数の無限和は√2となり、無理数を与える。
従って、有理数をどれだけ(有限個)足しても有理数であるが、無限個足す場合には無理数になってしまうこともある。
とかそんなのがあった。反例としては別に√2でなくても、数列の収束の結果にπが入ってくるようなものでもOK。
Re:有名な例 (スコア:1)
ライプニッツの式
π/4 = Σ(-1)n/(2n+1)
とか、exp(x)のマクローリン展開
exp(x)=1+Σxn/n!
e=1+Σ1/n! (x=1の場合)
とかの方が有名かな。
Re:どういうこと? (スコア:1)
>奇数×2は必ず偶数になる
これは良いけど、2×奇数×奇数×……という操作を無限回繰り返した結果がどうなるかは何とも言えない。
収束しないものを無限回繰り返した結果とか、数値自体が無限大にすっ飛んで行っちゃうときとかは、有限の時に成り立っていたものが同じように成り立つという保証はない。
Re:無限になるひとつ手前は存在する? (スコア:1)
無限から一つとっても無限ですし、有限に一つ足しても有限です。
無限と有限の間は次元が違うようなもので同じ次元内に存在することを前提にした境界といった概念はありません。
Re:無限になるひとつ手前は存在する? (スコア:1)
例えば、全ての素数の積をXとおけば,
1 < 2 < X
2 < 2*3 < X
3 < 2*3*5 < X
4 < 2*3*5*7 < X
:
:
このような対応付けが作れないことを証明できれば有限です。
Re:無限になるひとつ手前は存在する? (スコア:1)
Re:はい分からない (スコア:1)
それは規約に過ぎないと割り切ればよいと思います。
たとえば (((非負整数の階乗)の逆数)の総和) [wikipedia.org]の計算
を示す目的であれば見た目も整っていて便宜にかなってます。
渚ちゃんに怒られるから (スコア:2, すばらしい洞察)
ピンク色のヘアピンに、顔の輪郭はシャープと言うよりは丸く、とろんとした二重まぶたに、不安げな長いまつげ。背は低く、顔立ちも体つきもまだ子どもっぽいが、あと何年かすれば間違いなく世の男どもを虜にするであろう美少女のタマゴのJC、に怒られたいというのならかまいません
Re:はい分からない (スコア:1)
Re:偶数か奇数かという設問 (スコア:3)
全ての素数の積が奇数であることの証明(?)が出現 [togetter.com]
Re:偶数か奇数かという設問 (スコア:1)
いつからクイズの問題が必ず正しいと思い込んでいた?
Re:undefined (スコア:2, 参考になる)
あなたの疑問は、「数は全て偶数か奇数である」とか「整数と実数と虚数のいずれかである」との暗黙の前提に立っております。
そうでなくて、まず「偶数でも奇数でも整数でも実数でも虚数でもない」ことを前提とした、”ある性質”を持つ数、それが無限、と定義されていると解釈すべきなのです。
「定義することはできない」ではなく、そのように定義された数、です。
定義することができない数は未定義の数であり、「無限」はそれを扱う論において何らかの定義をなされた数です。
#”ある性質”を書かなかったのは、それを扱う論ごとに定義が変化するため
Re:クイズとして捉えればいいだけの話 (スコア:1)
クイズ界隈では回答が諸説あるような設問はタブー視されていますね。
クイズはなぞなぞとは違うのです。
Re:君子危うきに (スコア:2)
そうそう。
わたしはハンドルでもかなり間違えて恥をかいていますが、慣れればそのときは顔が赤くなり翌日に頭痛がするくらいで済むようになります。
# C2H5OH服用の集いには行きません. コワイ.
Re:クイズゲームの出題は難しい (スコア:3, 興味深い)
まとめを見たのだが、数学的に無限を取り扱うには、
高校数学程度で学ぶ概念/体系とは全く別の概念/体系を知る必要があるということなのか
「まったく違う」わけじゃないんだよ。中学までは「x^2 = -1」となるような数 x を扱えないが、
高校になると複素数が導入されて、i として扱えるようになる。
同様に、高校までは「すべての素数の積」は扱うことができないが、
より高度な数学になると定義を拡張して扱うこともある、ということ。
だんだん扱える範囲が拡大しているのであって、「まったく別の体系」に変わっているというわけじゃない。
ただし、高校数学で「極限」を扱うときに、「無限大に発散」という概念がでてくるので、
方便として「∞+n=∞」というような操作を学ぶ。こういった操作は便宜的なもので、間違いであるとすら言えるが、
直感的にわかりやすくて計算に便利なので、正しい答えさえ求めることができれば、説明として正しいと簡易的に認められてる。
これが厳密な数学でないということを強調しない教員がいるのか、それとも教わった人たちが忘れているのか知らないけど、
無限大の概念を完全に誤解している人がいて、Twitterなどを見ていると「すべての素数の積は無限大だ」と間違って言い出すひとがよくいるようだ。