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ワーム

ハチノスツヅリガの幼虫の唾液にポリエチレンを分解する酵素 26

ストーリー by headless
酵素 部門より
ポリエチレン (PE) の酸化と解重合を可能にする酵素がハチノスツヅリガの幼虫の唾液から発見された (論文マルガリータサラス生物学研究センターのプレスリリースThe Register の記事)。

研究を率いた Federica Bertocchini 氏は趣味の養蜂家でもあり、蜜蝋を食べる養蜂の害虫であるハチノスツヅリガの幼虫 (以降、幼虫) を捕まえてPE製の袋に入れておいたところ、袋に穴をあけて逃げ出してしまったことが研究のきっかけとなった。

Bertocchini 氏の研究グループは幼虫が PE を食べて生分解できるという研究成果を 2017 年に発表しており、2020 年には別の研究グループが幼虫の腸内細菌叢とのかかわりを示唆する研究成果を発表している。

微生物による PE の生分解は非常に長い時間を要するだけでなく、紫外線照射や加熱といった非生物的な事前の酸化処理が必要となる。一方、幼虫による PE 分解は短時間で事前処理を必要としないため、腸内細菌のみでは実現できないと考えられていたが、酵素のかかわりについては明らかになっていなかった。

研究グループでは幼虫の唾液を電子顕微鏡で調査し、2 種類のフェノール酸化酵素「Demetra」と「Ceres」を特定。いずれの酵素も PE を酸化する働きを示すが、Demetra の働きは特に強く、PE 表面に肉眼で見える痕跡(小さなクレーター)を作る。

事前の非生物的処理を要せず、常温かつ中性の水溶液内で数時間以内に PE を分解できる酵素の存在は、研究者が知る範囲で初めて報告されるものだという。ただし、これらの酵素が PE を分解する仕組みを徹底的に理解するには、さらなる構造的・生化学的・機能的な研究が必要とのことだ。
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  • by Anonymous Coward on 2022年10月10日 15時29分 (#4341689)

    なんでPEを分解できるように進化したんだろう?
    なにか自然界に類似の物質が存在するんだろうか?

    • Re: そもそも (スコア:4, 参考になる)

      by Anonymous Coward on 2022年10月10日 18時45分 (#4341759)

      元論文をざっと読みましたが, 1) 蜜蝋もPEも、化学的には分子の鎖。PEを分解するというのは、PEの鎖の一部を切ることである 2) 先行研究(文献40から50あたり)で、鎖を切るメカニズムの仮説、昆虫の唾液には鎖を切る酵素が含まれている、といったことが報告されている 3) 別の仮説としては、製品としてのPE袋にはPEだけでなく別の添加物も入っている。つまりPEじゃなくて添加物の鎖を切ることでPE袋が分解されたように見える可能性もある みたいなことが書いてありました

      親コメント
    • Re:そもそも (スコア:2, 興味深い)

      by Anonymous Coward on 2022年10月10日 17時00分 (#4341724)

      こういうのは偶然ってケースもありますね。

      有名なのが、シドニージョウゴグモという毒蜘蛛。
      人間には少量でも致死の猛毒だけど、他の動物にはそれほどではない。
      偶然人間を含む霊長類にのみ猛毒になる毒だった、というだけらしい。
      ※人間による選択圧が働くほど人と接してたわけでも無い。オーストラリアだからね。

      進化ってのは偶然が偶然上手く作用した場合には生存に有利になるけど、どうでも良い場合は偶然のまま残ってたりもする。
      今回のポリエチレンもそういうケースかもしれない。
      たまたま役に立つ状況が生じたときに、生存に有利になって活用されるって感じだ…。今回で言うなら袋から脱出できた。

      親コメント
    • Re: そもそも (スコア:2, すばらしい洞察)

      by Anonymous Coward on 2022年10月10日 18時07分 (#4341741)

      ハチノスツヅリガという名前からも判るように、蜂の巣の蝋を食していたか突破できていたのだろう。 蝋の分子量が増えればポリエチレンになる(蜂の巣は焼いた事は無いが、蝋燭の蝋が気化した匂いとPEが気化した匂いは極めて似ている)。

      架橋ポリエチレン迄が容易に破壊され、その遺伝子が広まると、ガス管・水道管・電線シースなど人類文明全体に影響が出てちょっと大事になる。

      親コメント
      • by Anonymous Coward

        アンドロメダ病原体を思い出した。これにはプラスチックを分解するウイルスが出てきます。

        • by Anonymous Coward

          ゴムじゃなかったっけ?
          ガスケットを侵食してピードモント上空を哨戒中の偵察機を墜落させたり、研究所で気密漏れ起こしたり

      • by Anonymous Coward

        その遺伝子が広まると、ガス管・水道管・電線シースなど人類文明全体に影響が出てちょっと大事になる。

        その酵素入りの水をスプリンクラーで撒くテロが起こったりして

        # け、けしからんっ!

        • by Anonymous Coward

          ふもっふに出てたやつの亜種ですね(笑)

          • by Anonymous Coward

            正確には、この酵素(と同種の物質)を分泌するように遺伝子改変したバクテリアがふもっふに出てた・・・ですね

            • by Anonymous Coward

              あのエピソードは本編で校舎に仕掛けられた爆弾から生徒全員速やかな避難が完了できた重要な伏線だったんだよなあ。

  • by Anonymous Coward on 2022年10月10日 12時12分 (#4341633)

    分解してかつ栄養分として使う生物が生まれないと、
    分解だけじゃいまいち進まない気がする

    かつて木のリグニンを分解できる生物がいなかった時代から、リグニンを分解して栄養にする生物が現れたときのように、
    プラスチックを分解して栄養として利用する生物が現れたら、廃プラ問題は解決するのでは?

    逆に使用中のプラスチックが分解されてしまう問題も起こりそうだが

    • by Anonymous Coward

      遠い将来発掘されて、プラスチック紀とか言われるようになるんだろうか…w

      • by Anonymous Coward

        ホモサピエンスでない他の知的生命体によってだな。

        • by Anonymous Coward

          ホモサピエンスがホモサピエンスの捨てたゴミ山を掘り返して「貝塚」とか名付けてるじゃない。
          宇宙に人類が広まった頃の考古学だって似たような物じゃないの?

          • by Anonymous Coward
            石炭紀になぞらえてプラスチック紀といってるんだから、貝塚とかそんな短いタイムスパンちゃうぞ。
            • by Anonymous Coward

              倒木が石炭に変成する程待たない間=プラスチックが何か別の物に変成する前の話だろ。

      • by Anonymous Coward

        タバタバと交換してもらえるぞ。

    • by Anonymous Coward

      その時代のほとんどの生物に猛毒の酸素を吐き出すとか、その後の時代にも誰も分解できない物質をどんどん生産するとか、究極の環境破壊生物だな

      • by Anonymous Coward

        万人の万人に対する闘争
        止むことのない闘争の永久螺旋

        こういうことなんだろうな。
        自然の社会というのは。

  • by Anonymous Coward on 2022年10月10日 19時44分 (#4341787)

    化学溶液で溶かしたりするのとどう違うん?

    • by Anonymous Coward

      ポリエチレンはフッ素樹脂に迫る程耐薬品性が極めて高く、多くの有機溶剤にそれなりに耐える。

      • by Anonymous Coward

        有機溶剤だけじゃなく、酸・アルカリにも強いですね

    • by Anonymous Coward

      薬剤だと生産・使用した薬剤で処理できる量しか処理できない。
      生物だと、その生存環境が維持されていれば処理が続くので、
      一般的な環境で生きてる生物ならあまり手を掛けずに処理を継続させられる。
      あと、生物が持つ機能って大概DNA/RNAの情報から特別な材料を要さずに合成出来るので、
      可能である事が示されるだけですら意味がある。

      • by Anonymous Coward

        今回発見されたのは酵素だから、触媒として働き、それ自体は変化しない。
        少量でも時間をかければ多くの量を処理できる。

  • by Anonymous Coward on 2022年10月11日 9時48分 (#4341937)

    ハチノスツヅリガの幼虫は「ハニーワーム」または「代用ブドウ虫」として釣りの餌や小鳥・小動物を育てる為の餌として市販されていると思いますが、同じようにペット用の餌としてポピュラーな「ミルワーム」もプラ製容器を食い破りますね。
    以前に、徳用アイスの容器で飼育してみたらボロボロにされました。
    ただ囓ってるだけなのか、ちゃんと消化しているのかは不明ですが。

    • by Anonymous Coward

      いわゆるポッキンアイスかな
      あれはPEのチューブっぽい
      # なにか工作に使えそうな使え無さそうな

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あと、僕は馬鹿なことをするのは嫌いですよ (わざとやるとき以外は)。-- Larry Wall

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