遺伝子組換えトウモロコシが癌を引き起こすという研究論文、学術専門誌より掲載を撤回される 25
ストーリー by hylom
ネタがネタだけに 部門より
ネタがネタだけに 部門より
eggy 曰く、
2012年に、遺伝子組み換えトウモロコシがラットに癌を引き起こすとする研究論文が学術専門誌「Food and Chemical Toxicology」に掲載されたものの、先月末に掲載が撤回されるという事態が発生していたそうだ(本家/.、Nature記事、WIREDの記事)。
実験に使われたSD系ラットはそもそも癌発生率が高いとされており、実験に使われたラットの死亡死亡率といった実験データについて、結論を裏付ける物ではないという判断のようだ。同専門誌を出版するElsevier社は、仏カーン大学の分子生物学者Gilles-Eric Seralini氏の率いる研究グループが「データの捏造や意図的な改竄を行った証拠はない」としながらも、研究に使われたラットの数が少ないことや、使われたラットが元々発がん率の高い種だったことなどから判断して「決定的な結果であるとはいえない」と結論付けたとのこと。
同研究結果では、2年間に渡ってモンサント社の除草剤グリホサート耐性トウモロコシNK603を与え続けられたラット群はそうでないラット群と比べて癌発生率がより高く、またより早く死亡してしまう、といった旨が示されているとのこと。また、除草剤グリホサートを飲み水に加えられたラット群は癌を発生することが分かったとしている。同研究グループは、7年間モンサント社に勤務していた生物学者Richard Goodman氏が同論文の掲載撤回に絡んでいるための撤回だと主張しているが、Goodman氏は関与を否定している。
これってアリ? (スコア:5, 興味深い)
論文の原文。ラットの総数は200匹。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278691512005637 [sciencedirect.com]
撤回に至った出版社の言い分。
http://www.elsevier.com/about/press-releases/research-and-journals/els... [elsevier.com]
私は個人的には、遺伝子組み替え食品に、日常生活で気にするレベルの発癌リスクが存在するとは考えていませんし、元論文が主張するような数倍の死亡率という話であれば尚更です。
が、それでも、一度レビューされて掲載された論文を、生データも提出させた上で「データの改竄などがなかった」と確認したにも関わらず、作者の承認もなしに強制的に撤回させるというのは尋常な事態ではないですね。明らかに頓珍漢だったり激烈に質が悪かったりする論文でも、段取りさえ満たして掲載されたなら、普通は後だしで出版社が撤回することはありません。質の悪い論文を掲載したことで出版社の評価が落ち、論文自体は黙殺されたり反論されたりしますが、それでも元論文自体は残ります。
「元々発癌率が高いラット」であること自体は手法として無効という程ではないように思います。なんにせよ同じ動物を群にわけて遺伝子組み換え食品の投与の有無で比較検討はしているので。「サンプルが少なくて決定的なコトは言えない」レベルの論文は星の数ほどあります。原文をちゃんと読めば、この分野の専門家にとってはあまりにトンデモに見える論文なのでしょうか。出版社の言い分からそういう雰囲気は感じられませんが。
Re: (スコア:0)
ラットの総数は200匹ですが、10匹ずつのグループに分けてそれぞれ別の条件で実験しているので個々の実験については確かに少ないかなと思います。
またグラフをいくつか示していますが、統計的な評価を行ったように見えないので、時間とコストを掛けた割には実験と解析のデザインが雑な印象は受けます。
それでも、正規の手続きを踏んで掲載された論文が雑誌側から撤回されるというのは普通ではありませんね。
著者側の主張をもう少し読んで考えてみたいです。
Re: (スコア:0)
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20131129#p9 [hatena.ne.jp]
ElsevierはFood and Chemical Toxicologyの論文取り下げを発表
概略ですが、日本語のほうが楽な人のために。
文中には
> ピアレビュープロセスでは問題点が指摘されていたがそれでも発表する価値があると判断されていた。
とあります。私にはレビューよりセンセーショナルな結果を優先させた Elsevier 側に問題があるように思いました。
Re:これってアリ? (スコア:5, 参考になる)
いえ、これは論文のレビューとして当然です。
ピアレビューのある雑誌では投稿してそのまま掲載されるということはまずなくて、
実験のデザインや記述内容についてレビュアーが問題点や疑問点を指摘して、著者が
それに答えたり追加実験したりして論文の内容をよりよくしてから掲載されます。
この場合はレビュアーからラットの数が少ないことを指摘されたが、著者らがそれに
対して回答して、リジェクトするほどの問題ではないとレビュアーかエディターが
最終的に判断したということだと思います。
ただ、内容のインパクトを重視して不十分な論文を載せてしまった可能性はあると
思います。インパクトというよりは多大な努力を無にするのは可哀想という同情かも
しれませんが。
そう思うのも元の論文に対するコメントを読んでいるのところですが、確かに実験
及び論述に問題があるからです。
ストーリーでも指摘している通り、元々ガンを発症しやすいラットを使っているのですが、
対照実験においてラットの自然死としている中にガンが原因だったものが除かれている
可能性が強いこと、餌の組成が書かれておらず、GMO側がマイコトキシンなど発癌性の
ある汚染を受けていないという証明がない、また、GMOあるいはラウンドアップの
毒性に濃度依存性が見られない、過去の研究と矛盾する結果になったことに対して
十分な説明がないという指摘は全てごもっとも、と思います。
ただ、ちょっと予断が入りますが、この雑誌のインパクトファクターを考えると、
この程度雑誌にこの程度の突っ込みどころのある論文はよくあるけどな、とは思います。
kaho
Re:これってアリ? (スコア:1)
日本語訳しか読んでないのでアレですが、書きかたからするとレビューアーが指摘したが、エディターが掲載を決定したというところでしょうか。最終的な判断はエディタにあるので、これは当然といえば当然なのですが。
なんといいますか、この結果は今迄の知見とかなり異なるもので、
> Séraliniの研究が世界中の食品安全機関から厳しくしかられたのはこれで3度目である。彼らのグループの全ての論文が「不適切なデザイン、解析、報告」である。
という背景を抜きしましても、「途方もない主張には途方もない証拠が必要である」という原則を守っていただきたかったところです。
論理があいまいであるとか、サンプル数の少ない論文なんてのは確かに良くみますが、大抵その手のものは引用されることもなく忘られてていくだけで済んでしまうんですけどね。
先日natureに載った"NIH mulls rules for validating key results"という記事や、疑似科学な人々がサンプル数の少ない論文を後生大事に抱えている様子を見ると、もう少しなんとかならんもんかな、と思います。
発癌率が高いから (スコア:0)
実験として有効なんじゃないかなと思うんですけどね。
これが発癌率の低いラットだと有意な差が出るまで数十年かかるかもしれません。
さらに、論文の検証に再実験はつきものだと思うのですが、それにも同じ期間かかります。
同じ種類で比較実験ができていれば充分じゃないでしょうか。
もちろん実際のリスク(有意な差が出る年月と寿命の比較)を調べるために発癌率の低いラットでも実験する必要はありますが。
Re: (スコア:0)
発がん率が高い=結果がバラツキやすい
その場合サンプル数が必要なのに、それが明らかに足りてません。
結果を出すために使いましたという印象を強く受けますね。
この論文が出た時に斜め読みしましたけど、図表や統計解析も雑な感じで、
まあありがちなアンチGMの論文だなあという印象でした。
発がん率の検証には発がん率の低い系統を使うべき。
そして、有意差が出ないなら、そもそも差がないんですよ。
Re: (スコア:0)
発がん率の低い系統だけを使ったら、「この物質は、発がん率の少ない対象に対しては発がん性をもたない」ことは検証できても、「その物質が発がん率の高い対象に対してどのような性質を持つのか」は検証できないということになりませんか?
人間の中でだって、がんになりやすい/なりにくい(例えば男性と女性では男性のほうが多いんでしたっけ?)という差はあると言われているわけですから、「現象の出にくい対象で実験をしても差が出なかったんだから、全ての対象に対して差が無いと考えるべきだ」というのは些か乱暴ではないかと。
元コメさんも指摘されていますけど、能う限り多方面から検証をする、ということが求められているのでしょう。
Re: (スコア:0)
>「元々発癌率が高いラット」であること自体は手法として無効という程ではないように思います。
ここについて完全に同意。
「発がん率の高い種」と「発がん率の低い種」のラットを比べたわけじゃないんだから。
「発がん率の高い同じ種」同紙に別々のえさを与えて結果が明らかに変わるなら、
それはやはり餌に何らかの発ガンを助長させる因子があるとみるべきだろう。
「発がん率の高い」って事は「発ガンに傾きやすい因子を最初から多く持っている」
というだけだ。
その因子に働きかけたのが「遺伝子組み換えトウモロコシである」というだけではないのかな。
Re:これってアリ? (スコア:2)
こちらに [srad.jp]紹介しましたが、ガンになりやすいラットを使ったこと自体が問題視
されているのではありません。
このラットを使うのであれば気をつけるべき点を欠いているのではないかという指摘です。
年をとるとガンになりやすいラットを使っているので、普通の餌を与えてもガンになるのに、
GMO/ラウンドアップを与えていないラットの死亡は自然死と分類してガンではないかの
ように見せていること、与えた餌が発ガン物質に汚染されていたら、その影響が支配的に
なってしまう可能性のあることが指摘されています。
また、このような実験では低濃度と高濃度での被曝実験を行うのですが、その結果期待される、
低濃度では反応が弱い・無い、高濃度では反応が出る、という結果が得られていないので
GMO/ラウンドアップの問題ではなく、共通の環境因子(例えば上述した餌の汚染)が
原因なのではないかという疑いには一定の合理性があります。
kaho
Re:これってアリ? (スコア:2)
Re: (スコア:0)
>発がん性の低い物質にでも敏感に反応してガンを発症してしまう、ってことは考えられないでしょうか。
今回に置いてはそうだとして何?って話。
同じ種類のラットで遺伝子組み換えでない作物与える実験も同時におこなってるんだから。
差が「発がん性の低い物質由来」だとしても結果に差がある以上、
遺伝子組み換えでない方には含まれていないか、
「結果として差が出るぐらいには発ガン性物質の含有量に差がある」
わけですが。
Re:これってアリ? (スコア:2)
大したリスクじゃないんだろうけど (スコア:1)
大したリスクじゃないんだろうけど、なんかモヤモヤしますね。
これ以外にも、アメリカ製のカラメル色素と日本製のカラメル色素の毒性が微妙に違うとか。
大豆の絞り粕の発がん性が日本で絞ったものはわずかに高いとか。
カラメル色素は製法の違いらしいし、大豆は日本では徹底的に絞るために有機溶剤を使ってるのが原因らしいし。
いずれもいろんな食品の原料になっているけど、製造国の表示義務はない。
神経質な奥方が大豆油のメーカーにわざわざ問い合わせたなんて話も見聞きする。
その時聞いた話では、一部の中小メーカーは有機溶剤を使ってないらしいのだが、そのことを製品に明記するのは”業界の空気”で難しいらしい。
「有機溶剤無使用」を謳う製品が一つでもでてしまうと、毒性があるというイメージはまずいので大手を含めて業界全体が有機溶剤を使えなくなってしまうのを恐れているらしい。
大豆の絞り粕は、カスと言っても、家畜の飼料や醤油の原料になるのでまわりまわって人の口に入るものだし、残留はないと言っても現代人はスナックからファストフードまであらゆる所で油食ってるし、リスクがいくら小さいと言っても、業界の都合というのはちょっとどうにかならないものだろうか。
遺伝子組み換え無使用という表記も実態は酷いものらしいし、困ったものだね。
原因 (スコア:1)
今回の実験って除草剤を直接飲ませた対照実験から想像するに、
除草剤耐性があるからって除草剤突っ込みまくって、とうもろこしに除草剤が残留することで発がん性アップ、ってことじゃないの?
遺伝子組み換えの問題ではなく、遺伝子組み換えだからって適当に生産した結果であって、品質管理の問題ではないの。
変なのが混じってるぞ (スコア:0)
>除草剤グリホサートを飲み水に加えられたラット群は癌を発生する
そりゃもはや遺伝子関係ないよね。
除草剤で枯れないトウモロコシだからこそ使える除草剤があって、それがラットなり人間なりに入ってきたときに毒性があるのはアタリマエだけど、それは除草剤が発癌性を持つのであってトウモロコシの遺伝子じゃない。
Re: (スコア:0)
私もちょっとびっくりしたけど、グリホサートを直で飲ませたって言う実験もあるよ、って言うだけかと。
Re: (スコア:0)
都合良く両方共に見つかるもんなのかな? という疑問はあるけど。
>毒性があるのはアタリマエだけど
そうでもない。タマネギの毒性ぐらいでも人間とネコで大きな差があるように、生き物によって違う。
生きとし生けるもの全てに効く万能毒のような物質もあるけど、
どういう原理で生き物を害するのかによって効果がまちまちな物質も多い。
その手の除草剤の場合は、植物の生長に欠かせない物質の生成を邪魔する化合物だったりする。
遺伝子改造植物は、普通とは違う方法でその物質を
Re:変なのが混じってるぞ (スコア:1)
で、毒性を調べる研究はずいぶん前にされているわけですが、それを農薬学会がまとめた資料 [pssj2.jp]には発がん性を示すものはないようです(6ページあたり)。慢性毒性の無影響量も8000ppmとか相当高いようです(低いほど毒性がきつい)。
撤回された元論文までは読んでませんが、今回の件にそれを覆すだけのデータがあったのかな、とは思います。
Jubilee
Re: (スコア:0)
除草剤耐性とうもろこしを与えた実験と、
除草剤を飲ませた実験は別だよ。
後者は前者(今回の実験)の原因として考えられるということ。
除草剤がとうもろこし内に残留してる可能性を考えたんじゃないか。
どこの原発村だよ。 (スコア:0)
アメリカはモンサント保護法ってあったよな。
つまり、この手の有害性を指摘する研究さえ潰せば遺伝子組み換えゼロ規制なのよな、あの国は。
ほんで既に加工食品の九割が遺伝子組み換えだとか何とか。
そういう文脈で見ないとわからんだろな。この話は。
間違った証明や仮説を提唱する学者なんて歴史上では掃いて捨てるほどいたわけだしな。
仮にこの論文が間違っているっていうなら掲載を取り消すのではなく、有害性が低いことを示した実験データを掲載すべきでないの?
現政権の言動から (スコア:0)
この話題は機密保護法により秘密指定されている可能性があるな
Re: (スコア:0)
死もまた死せるものなれば
Re: (スコア:0)
怪異なる永劫のうちには、死すら終焉をむかえん。
#おっと、翻訳者(出版社かな)が違うけど、気にしないでね
#こっちの訳でしか覚えていないので