オーストラリア税関、検疫で貴重な植物標本を焼却処分 72
貴重 部門より
フランス・パリの国立自然史博物館から貴重な植物標本がオーストラリア・ブリスベンのクイーンズランド植物標本館に送られたのだが、書類の不備により検疫で焼却処分されていたことが判明した(ABC Newsの記事、 Scienceの記事)。
焼却処分が問題になっているのは、18世紀にフランスの探検隊がオーストラリアで採取したものを含むデイジーのタイプ標本6種類。検疫官は1月初めに到着した標本について、不足している情報を提出するよう標本館に要求した。しかし、標本館側がメールアドレスを間違えたことで返信は3月初めまで遅れ、さらに不足していた情報の提出を求めている最中に処分が行われたという。この問題を受けてニュージーランドの植物標本館が調査したところ、2016年に同館が送付したタイプ標本1種を含む地衣類のサンプルも同じように処分されていたことが明らかになった。
本件についてオーストラリア農業・水資源省は、規定よりも46日遅れていたとはいえ、問題の解決を進めている最中に標本を処分すべきではなかったとコメントしたとのこと。一方各国の植物学者からは「ルーヴル美術館から絵を借りて燃やすようなものだ」といった批判が上がっており、オーストラリアへの標本貸出を停止するなどの動きが広がっている。
税関では低価格な物品について30日以上経過したものを定期的に処分しており、申告書類では標本に2ドルという価格が記載されていたことから処分の対象になったようだ。一方、自然史博物館では最小の価格を記載する規定になっていたという。
なお、農業・水資源省は処分が尚早だったことを認めたうえで、輸入の際はオーストラリアの検疫システムに従う必要があるとも述べているとのことだ。オーストラリアでは固有種の保護などのため、厳しい検疫措置を行っている。